347 港が使えない!
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ヒロは大灯台工事現場にタックス伯爵と足を運んでいた。
「コレで今度こそあのケモノ女もオシマイよ」
「ですが、ヒロ様……ちょっと無駄金を使い過ぎじゃないのですか?」
守銭奴のタックス伯爵がうろたえた態度でヒロに話しかけた。
それを聞いたヒロは凍り付くような視線でタックス伯爵を見下した。
「あら、アンタ……アタシに逆らう気?」
「い、いえ……滅相もございません。ですが油税でせっかく手に入れた金をこんなムダ金に使うのは勿体ないかと思いまして……」
ヒロが不快そうにタックス伯爵を指さして話した。
「アンタ……いつまでも金を儲けるための金のなる木を作る方法って知ってる?」
「いいえ、もしそんな便利なものがあるならすぐにでも欲しいです」
守銭奴のタックス伯爵らしい返答だった。
それを聞いたヒロは何もない工事現場を指さしてタックス伯爵に説明を始めた。
「本当ならこの話でも聴講料が取れるくらいなんだけどね、アンタは協力者だから教えてあげるわ。今ここに油税で作っている大灯台、どう考えても今は予算オーバーで赤字よね。でも、ここに灯台が出来て出入りする船に、灯台の使用料を取ればどうなるかしら?」
「灯台の……使用料ですか?」
「そうよ、この灯台は安全保障費になるわけ。一つの船に安全に港に入るための金をこの港の船全部から徴収すると……どうなると思う?」
これを聞いたタックス伯爵がにやけ顔になっていた。
「なるほど、この港に入ってくる船全てから安全保障費と称して関税以上のものをかすめ取るわけですね」
「そういうこと、それが完成すればもうこの自由都市リバテアはアンタの思い通りに金が自動的に入ってくるってわけ」
「流石はヒロ様です。私に考えつかないような儲け方を簡単に思いつくとは」
ヒロは大灯台の工事現場を見ながら高笑いしていた。
「でもそれだけじゃないのよ。この港の桟橋に停泊許可証をつけるのよ。そうすれば船を使いたくても許可を出さなければあのケモノ女が船を使いたくても使わせないようにできるからね」
「流石はヒロ様。ケモノふぜいが商売をするなぞ身の毛もよだつようなことです、そんな社会の摂理に反するものは徹底的に叩き潰しましょう」
タックス伯爵は典型的な公爵派特権階級思考の悪徳貴族だ。
獣人が仕事をするなどということを認めようとしないタイプの性格でヒロのシンパそのものと言えるだろう。
この二人はそういう意味で馬が合ったようだ。
そして港の入り口にはチェーンが張られ、工事関係者以外は一切入れなくされてしまい、一般人の客は一切入れないようにされてしまった。
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「まさか港そのものを封鎖して客を取れないようにするとはねぇ」
「しかも……小船すら桟橋に入らせないようにしてくるとはなー」
「いいんです……もう私達はリバテアを離れますから。マイル様。今までどうもお世話になりました」
マクフライ夫婦はもうあきらめた表情だった。
「それじゃぁあーしの気分がおさまらないんだよぉ! ヒロに負けたなんて絶対に嫌!」
「じゃあマイルよー。どうやって対決するつもりだー? 船使えないんだぜー」
「カイリ……効率は落ちるけど、ハーマン使える?」
「まあオレが言えば聞いてくれるだろうけど、どうするつもりだー?」
マイルはこの状況を打破する方法を考えていた。
「船を港に停泊させるのにヒロの手下のタックス伯爵の許可が必要で、それが無い船は停泊させないってことよね、でも……船じゃなきゃ問題ないってことよねぇ」
「なるほどなー。ハーマンにお客さんを乗せて船に乗らずに海でお客さんに乗り換えてもらうってわけか」
「そういうこと、さあ今日も商売開始だよ」
カイリとマイルは今日の商売を始めるために下準備を開始した。