343 邪悪な二人
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ヒロは弱者、貧乏人が嫌いだった。
その中でも彼女が嫌ったのが彼女の言うわきまえない弱者だ。
ヒロは居場紘子だった時、アメリカンニューシネマが好きだった。
それは弱者が大抵バッドエンドになるからだ。
彼女の中では弱者は踏みにじられる者、努力は無にされるものだという考え方があった。
ヒロは居場紘子だった時からアメリカンドリームや革命が嫌いだった。
それは弱者がわきまえないまま、成功する事だったからだ。
ヒロは居場紘子だった時、女性総理になってカースト制度を現在の社会に作り上げようと考えていた。
だがそのままカースト制度を復活させれば世間や国外の批判が煩いのも理解していたので、狡猾な頭を使って昔からの伝統芸能の世襲を悪用したシステムを作ろうとしていた。
つまり、世襲制度を国民皆資格国家にしてしまおうと考えていたのである。
これはどういうことかというと、仕事は全部資格制にしてしまい、二十年以上の経験の前任者の紹介や推薦が無ければ資格証を発行出来ないようにしてしまい、また……無資格での仕事を厳罰にしてしまおうとしたのである。
これを制度化してしまうと、無資格では仕事が出来ない国の形で、資格を得るための試験や研修は高額化、つまりは金持ちのやる仕事は金持ちだけが身内だけの儲かる仕事をし、貧乏人は一生その仕事にありつけないシステムを作ってしまおうと考えていたのである。
ヒロはこのように狡猾な頭の良さを持ったまま、異世界転生したので制度を悪用するやり方を考えるのが得意だった。
そして今回ヒロの考えたマイルの商売を潰す方法は、法律から料理法を潰すやり方だった。
「ヒロちゃーん、お待たせ。アタシちゃんが無事リバテアの前の統治者を無実の罪で更迭させて投獄しておいたわよ。後任者は公爵派貴族にしておいたから、ヒロちゃんの思った通りに動いてくれるからねー」
アビスがいきなり現れ、ヒロに笑いながら報告をしていた。
それを聞いたヒロはニヤリと笑った。
「まさかこんな方法で商売を潰されるとは思わないわよね、ハーッハッハッハハ」
「ヒロちゃんの笑い方、邪神様に似てるわねー」
邪悪な二人は真っ赤なワインで乾杯していた。
「アタシ達の贅沢とクズ共の不幸と」
「アタシちゃんのこの国をボロボロにする作戦に……」
「「乾杯!」」
邪悪な二人は朝方までどれだけ理不尽に他人を不幸に貶めるかの不幸自慢をしていた。
次の日、自由都市リバテアの新統治者が就任した。
『タックス・オフィス伯爵』
公爵派貴族でも金儲け、特に税の徴収に特化している守銭奴だ。
タックス伯爵は街に治安を良くするための街灯を作ると宣言した。
そのために油に税金をかけると言い出したのだ。
当然これはヒロの思惑だ。
つまり……ヒロは油をたくさん使う料理、揚げ物を作るための油を奪い取ろうとしたのだ。
しかし狡猾な彼女は油を奪い取るやり方で、街に治安を良くするための街灯を作る税金と称して油に莫大な税金をかけた。
はっきり言ってマイルの新商売を潰す為の狙い撃ちである。
この街灯税のせいで、マクフライ夫婦の屋台は……莫大な街灯税を払わされることになり、税金を払えない彼らの店は差し押さえされてしまった。
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「まさか……こんなやり方をしてくるとはっ!!」
「マイル様……どうすれば良いのでしょうか」
「コレは間違いなくヒロの差し金に違いないわ……あーしに考える時間を頂戴」
マイルはヒロのせいでリバテアでの揚げ物を使った商売が出来なくなったのを、どうにか解決する方法を考えた。
「どうやってこの状況を解決しようかしら……」
「マイル、どうした……困りごとか?」
「あ、カイリ……実はちょっと困ったことになってね」
カイリはマイルの話を聞いて一緒に解決策を考えた。