337 箱の中の異世界
ボクはフワフワ族の族長ウルツヤ様に一人で呼び出された。
「救い主、儂不思議な夢見た。サラサ、時見の珠使う」
「何じゃ、ウルツヤ坊。ユカ坊にどういった用じゃ?」
ボクの知らない間にアンさんが部屋に入っていた。
「コレは、竜の神。コレは本来救い主一人の話。だが、竜の神も知りたいならいてもらって構わない。だが、このこと誰も言わないで欲しい」
「よかろう、龍神として約束は守ろうぞ」
アンさんは特別扱いになっているようだ。
やはりあのドラゴンの姿を見ると、アンさんは相当すごい神様なのだろう。
「サラサ、こちらに来い」
「はい、長」
「サラサさん……キレイだ」
サラサさんはボク達の見る戦士の姿ではなく、美しい巫女の衣装を身に付けていた。
その衣装が、スラっと伸びた彼女の身体をさらに美しく見せている。
「来たか、では地下の祭壇に」
「わかりました、長」
ボクとアンさんは族長様の家の地下にある祭壇に移動した。
「時見の珠、使う。救い主、我の手に触れる」
「は、はい。わかりました」
ボクは手を出し、サラサさんの手を握った。
そしてサラサさんはボクの握った反対の手で祭壇に置いた時見の珠に触れた。
珠からはまばゆい光があふれだした。
そして、祭壇の奥の白い壁に映されたのは……ボクの見た事も無いような光景だった。
「コレは……ミクニの国か? いや、似ておるがこんな大きな石造りの建物やぎやまんの壁は作れるわけがない。これがユカ坊のいた世界じゃというのか??」
アンさんが驚いている。
ドラゴンの神様ですら驚くってどれだけすごい世界なのだろうか。
「これが……昔のボク?」
「そう、これは救い主昔の姿……今の姿になる前のもの」
そこにいたのは、ボクとは似ても似つかないおじさんだった。
「どうやらこの時見の珠は、触れた者の印象に残っているものを映すようじゃな」
おじさんはどこかの大きな建物の中にいるようだった。
そしてその中でボクは見た事もない魔法のようなものを見た。
「何だ……アレは?」
「ほう、これは面妖な……立てた白や黒の箱か板のような物に、世界が映っておる」
ボクとアンさんが見たのは、白や黒の薄い箱や板の中に作りだされる世界だった。
その世界はいくつも存在し、ボク達の住む世界に似たものや、全く別の世界、人物やモンスターが存在した。
「コレは……マップチェンジスキル??」
おじさんは白い箱を不思議な小さな石の並んだ板や不思議な楕円のこぶしくらいの大きさの石を使って操り、何もない場所に森や砂漠を作り出していった。
そしてその森や砂漠、ダンジョンにはとても恐ろしいモンスターが現れた。
しかしおじさんはそのモンスターを小さな人形達で倒していた。
「だめじゃ、長年生きてきたワシでもお手上げじゃ。一体この者達は何をやっておるのじゃ?? ここは世界を作る創造神の住処か??」
アンさんが混乱している。
ドラゴンの神様のアンさんでも理解できないものがボクに理解できるわけがない。
でも……あのおじさんだけはボクは覚えているような気がする。
意識の無いボクの身体を使って旅をしていたのは、あのおじさんなのだろうか……。
おじさんはその後も同じように世界を作り続けた。
そんな光景が時見の珠には映されていた。
だが、その後場面は移動した。
おじさんがどこかの椅子に座っている。
他にも何名かが椅子に座っていた。
その場所にはテーブルが用意されていた。
見た感じは何かの会議か話し合いでもするのだろうか。
その前には一人用の椅子が置かれていて誰かを待っているようだ。
◆◆◆
「次の方どうぞ」
「失礼致します」
部屋に入ってきたスーツの女性は就職の最終面接を受けるためにこの部屋に入ってきた。
「居場 紘子と申します。どうぞよろしくお願い致します」
部屋に入ってきた女性は礼儀正しく挨拶をした。