334 ボンバヘの事実
ボクは時見の珠に一瞬触れた。
すると、虹色の珠は激しい光を放ち、ボクは弾き飛ばされた。
「うわぁ!!」
「ユカ様!」
弾き飛ばされたボクは壁にぶつかってしまった。
「うーむ、どうやらこの宝玉は主を選ぶようじゃな」
どうやらボクには資格が無いようだ。
そして時見の珠はその持ち主を選ぶらしい。
「では、俺が触れてみよう」
フロアさんが時見の珠に触れた。
すると、今度は虹色の珠は激しい光を放ち、フロアさんの身体に激しい光が降り注いだ。
「これは……!」
「フロア、やはり巫女の血筋。時見の珠、巫女だけが触れる事できる」
サラサさんが時見の珠について語った。
時見の珠は、空中に浮かび、その珠からは光が放たれた、光は白い壁に映り、そこには二人の人物の姿が映っていた。
「これは……ボンバヘ様! 伝承に聞いたボンバヘ様だ」
「すると、隣、フンワリ様、これ、ボンバヘ様……過去」
時見の珠からは二人の人物は幼い時からその姿の移り変わりが映された。
そして、ボンバヘ様は成人の儀で白い獣オソイと三日間戦い続けた様子も映されていた。
「ボンバヘ様は、オソイと戦ったのか」
そして洞窟の奥の虹色の石を手にしたボンバヘ様は、成人の儀を終え、フンワリ様と夫婦になるはずだった。
だが、その後時見の珠に映っていたのは邪神竜ザッハークの姿だった。
邪神竜ザッハークは族長様に対し、フンワリ様を生贄にするように命じた。
フンワリ様は生贄になるため、邪神竜ザッハークのいる古代の神殿に向かった。
その護衛をしていたのが一族最強の戦士だったボンバヘ様だった。
◆◆◆
「フンワリ、お前……本当に生贄になるのか」
「ボンバヘ、仕方ありません。邪神はわたしが生贄になれば村の繁栄は約束してくれるのです。今の村は日照りや洪水でプハの実すら育ちません」
だがボンバヘは叫んだ。
「それがヤツの仕業だとしたらどうする! ヤツは邪神だ。日照りや洪水をおこし、俺達を苦しめているのだ!」
「ですが、村を犠牲にはできません」
「俺は知っている……ワッサリ族もツルリ族も邪神に滅ぼされた……」
それを聞いたフンワリは驚いていた。
「そんな、なぜ……!?」
「奴らは俺達と敵対していた、その上で邪神を使って俺達を苦しめようとしたのだ。だが、邪神は約束を守る気なぞ無かった。ワッサリ族は邪神を使うつもりで逆に滅ぼされたのだ!」
ボンバヘが弓を強く握った。
「そんな……それでは、わたしが生贄になっても……」
「邪神は俺達を滅ぼそうとするだろう。だが俺は逃げない、あの邪神を俺の弓で倒す!」
「ボンバヘ……」
そしてボンバヘとフンワリの二人は邪神の神殿に向かった。
「邪神よ! 俺はフワフワ族の戦士……ボンバヘだ! キサマを倒すためにここに来た!」
その声を聞いた邪神は笑っていた。
「「「グワッハッハッハ。勇気があるな、余にそれだけの口をきくとは。だが蛮勇は自らの身を亡ぼすだけだ!!」」」
三つ首の邪神竜はボンバヘを見て笑った。
「「「美しい娘だ、その娘を差し出せばキサマを余の眷属にしてやってもかまわんぞ」」」
「断る!! 俺は命惜しさに誰かを差し出すような愚か者にはなりたくない!」
「「「ほう、余に逆らうとは……よほど死にたいようだな!」」」
その時、ボンバヘは弓を大きく引いた。
そして笑う邪神竜目掛け、その矢を放った。
「邪神め! 俺の弓を喰らえぇー!」
「「「グガァ!?」」」
ボンバヘは歴戦の戦士だ。
彼の放った矢は、油断していた邪神竜の目を抉った。
「「「グウウウウァァアァアア!! 余の目がぁ!」」」
「やった!!」
「「「許さんぞ……余の目を潰すとは……死よりもおぞましい苦しみを与えてやる!」」」
邪神竜が怒り狂っていた。
戦士ボンバヘはそんな邪神竜を睨みつけている。