333 邪神竜の最後
アンさんは天井をぶち破り、陽の光を邪神竜ザッハークの上から注ぎ込んだ。
「「グガアアアアァァァー! 余の顔が、溶ける……溶けるぅぅぅうー!!」」
邪神竜ザッハークの首が一つ、陽の光を受けてドロドロと溶けだした。
「どうじゃ、三つ首蜥蜴、いや、今は二首蜥蜴というべきじゃかな」
「「ギザマァア、ユルサン、ユルザンゾォォ!」」
邪神竜ザッハークの言葉が言葉にならないレベルになっている。
そして陽の光を受けた首は完全に溶けてしまい、地面にちぎれ落ちた。
「グハアア……ナゼ……ダ……」
そのちぎれ落ちた首はホームさんが光属性の剣で上から剣を突き立て、消滅した。
「余が……邪神たる余がなぜ……キサマらは一体何者だ!?」
あれだけ自信に満ちていた邪神竜ザッハークが完全に弱気になっている。
三つあった首は二つを失い、また全身はボクのスキルで中の骨がヒビだらけでボロボロになっている。
邪神竜の最後の時が近づいていた。
「さて、ワシも再び戦いに参加するかのう! 紫電狂飆」
「無駄だ! 余には火も氷も雷も効かぬわ!」
「さて、そうかのう……じゃがワシとおぬしの力量が違えばどうかのう!」
ドラゴンの姿のアンさんは高く咆えると、紫の空気の渦を作り出した。
邪神竜ザッハークはその空気の渦に空中に持ち上げられ、その全身を凄まじい風と雷で全ての方向から削られていた。
「グァアアー!! ナゼダ!! ナゼ余にダメージが!?」
「愚か者め、ワシの力量はおぬしを遥かに上回るのじゃ。たかだか邪神を名乗る黒い蜥蜴と古の龍神を比べるでないわ!!」
「バ……バカナ」
紫の空気が徹底的に邪神竜の全身を切り刻み、紫の雷が身体を四方八方から貫いた。
その空気がおさまった時、邪神竜は地面に叩き伏せられ、もう瀕死だった。
「ユカ坊、その黒蜥蜴は光の力に弱いのじゃ。そなたならこやつを倒せるであろう」
「え。でもどうやって??」
「ワシに何度も見せてくれた、まっぷちぇんじなるスキルを使うがよい」
温泉ではなく、光の力の床、それは……先程の魔法陣だ!
「ボクの力で……邪神竜ザッハークのいる場所を光の魔法陣に……マップチェンジ!!」
「!!!??? ナンダコノヒカリハァァァアー!! グワァアアー」
邪神竜ザッハークはボクの作った光の魔法陣の力で、その全身が溶けていった。
「何じゃあの黒い塊は?」
「グワアア……シカタナイ、コノカラダヲステルシカナイノカ……ダガ、ユルサンゾ……キサマラ、ヨハキサマラヲノロイツヅケテヤルワァー!!」
それが邪神竜ザッハークの最後の言葉だった。
邪神竜だったものは、その場にドロドロに崩れ、最後には角と骨だけが残った。
「やった……ボクは邪神竜を倒したんだ!!」
「ユカさん、よくやってくれた!!」
「ユカ様、見事でしたわ!!」
みんながボクを褒めてくれた。
ボクは本当に、このS級の冒険者達に認めてもらえるだけの強さになれたんだ。
「みんな……ありがとう!!」
「ユカ坊、見事じゃったぞ」
「「アオーン!!」」
全員が嬉しそうな顔をしていた。
「救い主、見事だった。神殿奥、時見の珠手に入れる」
サラサさんが時見の珠の話をした。
そうだ、ボク達がこの古代の神殿に来た目的は時見の珠を手に入れることだったんだ。
ボク達は邪神竜ザッハークだった骨と角、溶け残った鱗を袋に入れ、神殿の一番奥に向かった。
神殿の奥はボクが邪神竜ザッハークに吹き飛ばされて壁に空いた穴からさらに向こうの道が見えた。
そしてボク達は、古代の神殿の一番奥に辿り着いた。
「これが……時見の珠」
「これ、我がフワフワ族に伝わる至宝、救い主、その手を触れる」
サラサさんがボクに、時見の珠に触れるように言った。
ボクは恐る恐る、時見の珠に手を触れた。