331 邪神竜の弱点
空中に舞い上がったシートとシーツ。
二匹の狼は連携するようにお互いがお互いの尻尾をくわえ、高速で空中回転を始めた。
その回転はどんどん速くなり、双子は姿が見えない回転の渦になっていた。
「「「グワッハッハッハ、曲芸を余に見せようというのか」」」
邪神竜ザッハークが余裕の笑いを見せていた。
その後邪神竜ザッハークは一気に魔力を使ってしまい動けないルームさん目掛け、その首で一気に噛み砕こうとしている。
「「「美しい娘だ、余の血肉に相応しい」」」
「い……いや、こっちに来ないで……」
ズガッッ!!
邪神竜ザッハークがルームさんを三つの首で噛み砕こうとした時、銀色と白の二つが混ざった大きな回転がザッハークの首を吹き飛ばした。
「な……余の首が……」
「「バカな、余がこれほどの攻撃を受けるなぞ!?」」
吹き飛ばされた首はみんなに向かって走るボクの足元に転がってきた。
「死ねぇっ!!」
邪神竜ザッハークの切り砕かれた首は強烈な炎を吐き出そうとした。
だが、その炎は一瞬で消えた。
首から下が無かったので、上にあった部分だけで吐き出したから、炎がすぐに尽きてしまったようだ。
そしてボクは五属性無効のレジストベルトと体制強化の銀狼王のマントを身に付けているので、ザッハークの攻撃は一切効果が無かった。
「でやぁあ!!」
ボクは邪神竜ザッハークの首をエクスキサーチで斬り裂いた。
本来ボクの力では、邪神竜ザッハークにダメージを与えるほどの力は持っていない。
でも先程弾き飛ばされた先で光の魔法陣に踏み込んだことにより、ボクの剣エクスキサーチには一時的に光の属性が追加されていた。
光の力に弱かった邪神竜ザッハークの首は、ボクの一撃で真っ二つに斬り裂かれた。
「ガ……グァアア……バ……バカな!?」
いうならば、固い袋を開けようとしても、全く開けられない。
それに少しでも切れ込みを入れると袋が引っ張るだけで開けれるようになるのと同じだ。
ザッハークの守備力は相当硬かった。
しかし、双子の狼が鋭い切り傷を作り、首を切断したことで、その守備力が一気に無くなってしまったのだ。
「よ……が、……な……」
光の属性の剣に斬られた邪神竜ザッハークの首は消滅した。
「「キサマら、よくも余の首を! 殺す! 絶対に殺して喰らってやるわ!!」」
首が二つになった邪神竜ザッハークは怒り狂っている。
その身体からはどす黒い空気が漂い、その空気に触れただけで力を奪われそうだ。
二つの首を相手に双子の狼シートとシーツ、そして騎士のホームさんが戦っている。
そんな戦いの中で、決定的なことが起きた。
「「グオオオオォォー!!」」
邪神竜ザッハークが双子の狼を踏みつぶそうと右足を大きく持ち上げた。
「今だ! レジデンス流剣技、一閃撃!」
「「グギャアアー!」」
ホームさんの剣が邪神竜ザッハークの左足を横一閃した。
バランスを崩した邪神竜ザッハークが大きく転倒する。
ドボーン!
「「ギャガアアアーアアァァ!!」」
邪神竜ザッハークはボクのスキルで作った小さな温泉に右足を踏み込んだ。
すると、温泉のお湯に沈んだ邪神竜ザッハークの足はドロドロと溶けだした。
どうやらこの温泉は、聖属性と水属性を含んでいるので、邪神竜ザッハークやその手下のマスターリッチには凄まじい攻撃になったようだ。
「みんな、戻ってきたよ!」
「ユカ様。無事だったんですね」
「うん、さっきから見てたけど、ボクのスキルならアイツを倒せるかもしれない!」
ボクはスキルを使うために、右手にエネルギーを集めた。
「ボクの力で……邪神竜の周りの床を全部温泉に変えてくれ!!」
「「!!!???」」
ボクの床貼りのスキルは、邪神竜の周囲を大きな温泉に変化させた。
「「な!? バカなぁー!!」」
温泉に全身が沈んでしまった邪神竜ザッハークは大きく転倒し、その翼がドロドロに溶けた。