329 三つ首の邪神竜
『邪神竜ザッハーク』
三つの頭を持ち、巨大な翼を広げる漆黒の邪神竜だ。
その強さは間違いなくレベル60以上、下手すればレベル70以上かもしれない。
ボクの倒したマスターリッチは、レベル50クラスのS級モンスターだった。
だが邪神竜ザッハークはそれをはるかに上回る怪物、いや……古代の邪神だ。
「「「余の機嫌を損ねたことを地獄で後悔するがいい!!」」」
ザッハークは三つの首から同時に火炎を吐いてきた。
「バリアフィールド!」
ルームさんが火炎から身を護る光の膜を張った。
この光の膜はザッハークの火炎を防ぎ、粉々に砕け散った。
「流石ですわ、まさか一度でバリアフィールドが壊されるなんて」
「「「やるではないか、だがこの程度で余の攻撃を防いだと思わぬことだ!」」」
ザッハークは次に三つの口から同時に吹雪を放ってきた。
「バリアフィールド!」
ルームさんが再び光の幕を張った。
光の膜は凍り付く吹雪を防ぎ、再び粉々に砕け散った。
「「「グワッハッハッハ……面白い、余の姿を見てこれだけの時を生き続けたのは久々だぞ……」」」
邪神竜ザッハークが笑っている。
だがその直後、邪神竜ザッハークはその首を使い、ボクらに襲いかかってきた。
「そんな攻撃、僕には効きませんよ!」
ホームさんが邪神竜ザッハークの前に飛び出し、三つの首の猛攻を全てかわしながら剣を振るっていた。
「「「ぐあああ! その剣は……光の剣!? バカな……」」」
「どうやらヤツの弱点は光のようじゃな。ここは光の刺さぬ場所じゃ。火とヒカリゴケで明るさを作っているだけじゃからな」
アンさんは邪神竜ザッハークの弱点が光だと見抜いたようだ。
「じゃが、この場に光をもたらすのは至難の技じゃな。ワシが光を持って来てやろう!!」
そう言うとアンさんは紫のドラゴンの姿になり、天井に向かって火炎を放った。
「これで少しは天井が脆くなったじゃろう。ワシがここまで光を貫いてやろう」
アンさんが凄いスピードで空中に舞い上がり、そのまま神殿の上空に向かい飛び出していった。
「「「グワッハッハッハ、どうやらあの臆病者のドラゴンは余に勝てぬと逃げたようだな……まあよい、ここにいるキサマらは全て滅ぼして絶望を喰らってやるわ!」」」
邪神竜ザッハークは再びホームさんを攻撃した。
しかしザッハークの三つの首の猛攻は紙一重でホームさんに躱されていた。
「お師匠様、僕にも敵の動きの糸が見えます。この糸のおかげで僕はあの邪竜神の攻撃を躱せます!」
「「「おのれ、ちょこまかちょこまかと、この小蠅が!」」」
ザッハークの攻撃を避け続けたホームさんはタイミングを狙い、ザッハークに鋭い一閃を入れた。
「「グギェエエアアアー!!」」
二つの首がホームさんの剣で同時に斬られた。
その首からはおびただしい黒い血が流れだしている。
「「「余の体に傷をつけるとは……許さん、許さんぞ! キサマの愚かな行為の代償にこの首の傷一つにつき一万の人間どもを屠ってくれるわ!!」」」
邪神竜ザッハークが怒り狂っている。
ザッハークは三つの首を別々に動かし、一つの首で炎を、一つの首で吹雪を、もう一つの首で雷を放ってきた。
運の悪いことにボクは攻撃を避けきれなかった。
しかし、ボクのレジストベルトはあの邪神竜の攻撃すら無効化した。
「「「バカな! 余の息吹を受けて無傷だと……ありえぬ!」」」
「でやあああー!!」
ボクはザッハークにエクスキサーチと呼ばれた剣で斬りかかった。
ガキィィーン!
硬い! ボクの剣はザッハークの鱗に毛筋ほどのダメージすら与える事が出来なかった。
「「「何という非力……哀れな。小蠅が……吹き飛べ!」」」
「うわあああー!!」
ボクはザッハークの一撃で神殿の祭壇の先に吹き飛ばされた。
壁が壊れ、ボクはかなりのダメージを受けてしまった。