326 ドラゴンゾンビ対龍神の少女
ドラゴンゾンビはドラゴンがアンデッド化したS級モンスターだ。
生前のドラゴンですらS級モンスターなのに、アンデッド化している事でさらにパワーアップしている最凶のモンスター。
「ふむ、竜族のなれの果てなのかのう。哀れな姿じゃ」
アンさんはドラゴンゾンビの前に立ち、その姿を見ていた。
「GYAAAAAAOOO!!」
地の底から響くかのようなおぞましい雄たけびが轟いた。
その咆哮でドラゴンゾンビの辺りにいたB級モンスターは消し飛んだ。
だがアンさんは身じろぎしていない。
「ほう、ワシを相手にしようというのか。面白い……」
アンさんは空中に舞い上がるとドラゴンゾンビの首に鋭い蹴りを入れた。
べギャッ!!
鈍い音を立て、ドラゴンゾンビのアゴが砕け、頭部が蹴り飛ばされた。
「何じゃ、ずいぶんとあっけないのう」
アンさんは、見た目は可愛らしい少女に見えるが、その実態は紫の不思議な姿をしたドラゴンだ。
そのアンさんの蹴りは、ドラゴンゾンビを一蹴した。
これで決着がついたと思っていたアンさんだったが、ドラゴンゾンビの首は激しく動いていた。
「なんと面妖な、ワシの蹴りを受けてまだ動けるのか」
「GUUUUAAAAOOO!!」
ドラゴンゾンビの首が空中に浮きあがり、その頭部は、もげた胴体に再びくっついた。
「何とおぞましい姿じゃ。生命を冒涜しておるわい」
頭が元の位置に戻ったドラゴンゾンビは激しい毒ガスを吐いてきた。
「むうう、臭いのう。中々耐えづらい臭いじゃわい」
アンさんは毒ガスのブレスを受け、少し怯んだようだった。
だがそれで済んでいるのが、彼女のレベルの高さを象徴しているのだろう。
普通の人間があんな毒ガスブレスを喰らったら即死だ。
「ふむ、この臭いを止めるには汚物は焼き払わねばならぬようじゃな!」
アンさんが周囲からエネルギーを集めた。
「さあ、火葬してやろう。ワシの炎を受けるがよい。轟焔壁!」
炎が地面から何本もの火柱のように吹き上がり、その見た目が巨大な炎の壁のようになっていた。
巨大な炎の壁に焼き尽くされたドラゴンゾンビは骨だけの姿になった。
「なんと……この姿でもまだ動けるというのか……どうやらこやつは別に操っておる者がいるようじゃな」
アンさんは骨だけのドラゴンゾンビの全身に激しい打撃を加え、その全身の骨を次々に砕いた。
しかし、骨は砕かれても砕かれても何度も元の姿に戻っていた。
「むうう、キリが無いわい」
「イオリ様! 僕がとどめを刺します。こういう相手は聖なる力で倒さないと倒せません」
「そうか、ホーム坊、では頼むぞ」
ホームさんが手に光り輝く剣を握り、骨のドラゴンゾンビを見据えた。
「このモンスターのコアは……アレだ!」
「GYAAAAGAEAAA!!」
ホームさんは襲いかかってきたドラゴンゾンビの攻撃を躱すと、そのあばら骨の下に潜りこんだ。
「コレがドラゴンゾンビのコアだぁあ!!」
ホームさんの持つ光り輝く剣がドラゴンゾンビのあばら骨の中にあった黒い塊を真っ二つにした。
コアを斬り砕かれたドラゴンゾンビはそのまま動かなくなり、その場にバラバラの骨になって砕け散った。
「やるではないか、えんとらの弟子」
「イオリ様が弱らせてくれたからです、ありがとうございます」
「勿体ないのう……エントラの弟子なぞやめてワシの弟子にならぬか?」
「イオリ様、それは遠慮させていただきます」
「そうか……まあ、仕方ないのう」
この人達はS級モンスターすら倒せるほどの強さなのか……。
ボクは自身の力不足を感じていた。
「ユカ様! あれを見てくださいませ!!」
「な、何だあれは!?」
ボクが祭壇の上の方を見ると、そこにはマントの内側に上半身だけが存在する魔導士の骸骨が魔法を唱えようとしていた。
「あのモンスターは……マスターリッチ!!」
ボクが見たモンスターはA級モンスターリッチの上位種、S級モンスターのマスターリッチだった。