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324 古代の神殿

 サラサさんの料理は美味しかった。

 少しクセのあるスパイスや平たいパンは最初抵抗があったが、一緒に出してもらったひき肉を棒に塗って焼いたものと合わせるととてもいい具合に味がマッチした。

 でもやはり名前が覚えられないし、あまり覚えようという気も無い。


「フロア、夫婦(めおと)になったら我、毎日料理作る」

「あ、ああ。ありがとう」


 フロアさんは少し引いているようだ。

 いきなり結婚前提でこんな美人の女の人に毎日迫られたら、そりゃ気が落ち着ないと思う。


「救い主、我お前も好きだぞ。だが夫婦(めおと)にはなれぬ、すまんな」

「あ。は、はい」


 返答に困るよ!

 ボク今までそんなに女の人と話した事ないし。


「そうですわ、ユカ様にはまだ早いですわよ。私だってまだ心の準備できていないのに……」

「ルーム、ユカ様に何を言ってるんだよ!」

「でも……私だって、ユカ様に……」

「もしそうだとしても、エリアさんを助けてからの話だろう。卑怯な真似はよすんだ」


 ルームさんはどうやらボクの事を好きなようだ。

 でも彼女が好きなのは、前にボクの身体を使っていた人なのだろう。


「なんじゃなんじゃ、若人が恋の話に花を咲かせておるのか、初いやつらじゃのう」


 この中で一番の年長者はこんな見た目でもアンさんなのだ。

 彼女の正体は長年を生きた竜の神様らしい。


「みんな、もう話はやめにして明日のために寝るよ!」


 ボクはややこしい話を断ち切るためにみんなに寝るように指示した。

 そしてボク達は明日の神殿探索のために遺跡の入り口で寝ることにした。



 次の日、ボク達は古代の神殿に入った。

 神殿の中は複雑なダンジョンになっていて、入り込んだモンスターが次々に出てきた。


「うむ、どうやらここには魔素の塊があるようじゃな」

「魔素の塊ですわね、それがあると無尽蔵にモンスターが出てくるやつですわ」

「ではその魔素の塊を壊さないと、モンスターがいつまでも出てくるんですね」


 みんなは神殿内部にいるモンスターを次々と倒した。

 今はボクもレベル20くらいのモンスターなら倒せるくらいの強さにはなれた。

 手に持っている剣と鎧や銀狼王のマントのおかげで、ボクもいっぱしの冒険者の強さになる事が出来た。


「全くキリがないぜ」

「フロア、奥のモンスター我倒す!」


 サラサさんは弓から魔力を迸らせ、矢で数体のモンスターを一気に倒した。


「俺の声に応えてくれ、来い! 白い獣オソイ!」


 フロアさんが精神力を集中し、白い獣オソイを召喚した。


「主よ、眼前の者共を(ほふ)ればいいのだな。任せよ」


 白い獣オソイはその鋭い爪と牙でリザードマンやスケルトンファイターを次々とバラバラに斬り裂いた。


 辺りのモンスターを斬り裂くとオソイは再び姿が薄くなり、その場から消えた。

 ボク達は次々にモンスターを倒し、神殿の大広間に出た。


「ガァアアアアーーー!!」


 そこには巨大で真っ赤なワイバーンがいた。


「コレが、集落を襲った竜か?」

「違う、コレ、真っ赤。黒い邪竜とは別」


 ワイバーンはボク達に火炎の玉を吐いてきた。

 ボクは自分のスキルを使ってみんなを助けられないかと考えた。


「ボク達の目の前の床を壁に変えてくれ!」


 ボクの魔力が持って行かれる感じがした。

 やはりこのスキルは、かなりの魔力を消費するようだ。


 ボク達の目の前には土の壁が出来、ワイバーンの吐いた火炎の玉はその壁に塞がれた。


「ユカ様、後は私にお任せ下さいませ! バリアフィールド!」


 ルームさんが張った光の膜はボク達を覆った。


「さて、あの羽根付きトカゲを退治しますわよ!」


 ルームさんが杖を構えた。

 ワイバーンはルームさんに向かって咆えている。

 しかし彼女は不敵に笑いながら魔力を集めた。


「さあ、覚悟あそばせ!」


 そしてルームさんの杖からワイバーンに向かって魔法が放たれた。

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