321 時見の珠
フロアさんは大きな虹色の石を持って戻ってきた。
悪魔のノドから帰ってきたフロアさんは右腕が血まみれだった。
「誇り高き者、その傷癒さん」
サラサさんは回復の魔法でフロアさんの腕を治療した。
「ありがとう、サラサ」
「さあ、族長待つ、早く戻る」
ボク達は族長ウルツヤ様の待つ集落に戻った。
◇
「戻ったか、ずいぶん時間かかった」
族長ウルツヤ様はフロアさんの帰りが遅かったことで、あまり機嫌が良くなかった。
成人の儀式は本来こんなに時間のかかるものではなかったのだろう。
「それで、虹の石持ってきたか」
「ああ、これがその虹色の石だ」
フロアさんが取り出した虹の石はとても大きく、それを見た族長ウルツヤ様は腰を抜かした。
「何と大きな虹の石……コレ、どこにあった?」
「コレは洞窟の主、オソイから受け取ったものだ。俺は悪魔のノドの一番奥まで入ってコレを手に入れた」
族長ウルツヤ様が大きく頭を下げた。
「誇り高き者、無礼を許せ。お前は誰よりも勇敢なる者。もしや……お前なら分かるかもしれん」
「一体何のことだ?」
族長ウルツヤ様は部屋の奥から大きな虹色の石を持ってきた。
「コレ儂の家昔からあるもの。ボンバヘこれ手に入れた。ボンバヘ本当に臆病者なのか、時見の珠あればわかる」
「時見の珠?」
族長ウルツヤ様が座って煙草をふかした。
「時見の珠、それ古代の神殿有る。黒い邪竜、それ持つ」
「つまりじゃ、古代の神殿にいる黒い邪竜とやらを倒せば時見の珠が手に入るというわけじゃな」
「そう、黒き邪竜」
「ウルツヤ様、それ、一族襲った黒き邪竜か」
「そう、黒き邪竜、とても強い。だがモッサールの者、お前本当に勇敢なら倒せる」
族長ウルツヤ様の話だと、黒き邪竜とは昔この集落を襲ったやつでとても強い竜だということだ。
そして、その黒き邪竜のいるのが古代の神殿で、そいつを倒せば時見の珠が手に入るというわけだ。
「わかりました、ボク達も古代の神殿に行きます」
「わかった。だがしばし待て。歓迎の宴、開く」
「ウルツヤ様、本当ですか」
「モッサールの者、大きな虹の石持ってきた。勇敢な者、儂ら歓迎する」
族長ウルツヤ様は、フロアが約束通り大きな虹色の石を持ってきたことを認めてくれた。
そしてボク達は救い主と竜の神、それに勇敢なる者達として、フワフワ族の人達の宴でもてなしてもらった。
「ほう、この串に刺した肉、なかなかのものじゃのう」
「美味しいですわ、でも少しはしたないかも……」
「ルーム、その土地の風習ならそれに従うのもルールだよ」
ボク達はフワフワ族の人達と料理を楽しみ、一族の舞や音楽を披露してもらった。
そこにとてもキレイな女の人が、美しい衣装で現れた。
「フロア。我と踊れ」
「お前は……サラサ!? 女だったのか」
「そうだ。強き者よ、我はお前が好きになった。ぜひ、我が一族となってほしい」
「そう言われても、俺はお前のことを何も知らないんだぞ」
なんとキレイな衣装の女の人は戦士のサラサさんだった。
フロアさんはぎこちなく、サラサさんと踊り出した。
族長ウルツヤ様はそんな二人をじっと見ている。
「サラサ、お前……この者達共に行け」
「ウルツヤ様……」
フロアさんのそばに居たサラサさんは、族長ウルツヤ様の言葉を聞いた。
「行け、行って邪竜倒し、真実見て来るがよい。ボンバヘ、臆病者でなければ、お前とその者の婚姻を許そう」
「フロア様、我……連れて行ってくれるか」
「ああ、俺もボンバヘ様が本当に村を捨てたのか見極めたい」
「では、行くがよい」
その夜の宴はいつまでも続き、そして次の日の朝、ボク達は古代の神殿に向かう準備を始めた。