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320 誇りある者

◆◆◆


 仰向けに倒れたオソイの身体からは、血と魔素が抜け出している。

 そして黒く染まっていたオソイは、血と魔素を失った事により、真っ白な姿に戻っていった。


「勇気ある者よ……よくぞわたしを倒した……」

「オソイ……」

「これも自然の定め、お前は強かった、わたしはそれに敗れたのだ……恨みも後悔も何もない……とても清々しい気分だ」


 誇り高き洞窟の主は私にある方向を指さした。


「それを持って行くがよい。わたしが(ほふ)った魔族の残したモノだ」

「オソイ……なぜそれを俺に」


 オソイは笑っていた。


「シャハハハ……なぜだろうな。お前が強かったからか。この洞窟はわたしの住処。幾多の者がここに入ってきたが、誰一人としてわたしの満足のいく者はおらんかった、ただ一人を除いてな」

「ただ一人……それは誰だ?」

「シャハハハ……その者は、ボンバヘ。まだ若きわたしと戦い、互角だった。わたしとボンバヘの戦いは三日に渡って続いた。最後はお互いが力尽き、引き分けに終わった。あれほど楽しかった戦いは初めてだった」

「ボンバヘ! それは俺の先祖だ」

「……そうだったか。お前はボンバヘの(ゆかり)の者か。わたしの最後の敵がお前で良かった。これで心置きなく死ねるわ……」


 オソイはもう息も絶え絶えだった。


「チュウチュウ……」

「小さき者よ、お前達もよく戦った。わたしと戦えたことを誇りに思うがいい……」


 オソイはこの洞窟の主。タダの暴君、殺戮者ではなかった。

 弱き者には苛烈だったが、強き相手には敬意を称する生まれついての戦士だったのだろう。


「さらばだ。わたしは死ぬ……誇りある者達と戦えたことをわたしは決して忘れぬ……」


 それがオソイの最後の言葉だった。

 そして白い悪魔オソイは、永遠の眠りについた。


「さらばだ、誇り高き白い悪魔」


 俺がその場を立ち去ろうとした時、何故かオソイの声が聞こえた。


「オソイ!? 死んだはずではなかったのか」

「そうだ。わたしは肉体を失った。今のわたしは魂だけの存在だ……」


 なぜ俺にオソイの声が聞こえるのか。

 どうやらネズミ達はオソイのことがわからないようだ。


「お前には不思議な力がある。それはお前の持つ不思議な血の力だろう。お前ならわたしの力を使いこなせるやもしれぬ」


 俺の不思議な力、それは巫女だったひい婆さんのフンワリ様の力なのかもしれない。

 

「肉体を捨て、わたしは精霊となった。精霊使いの者よ、わたしはお前の力となろう。わたしの力が必要な時は虹の石に触れ、わたしの名を呼ぶがよい」


 オソイの言葉を聞いた俺は、大きな虹の石に触れながらオソイを呼んだ。


「誇り高き洞窟の王。オソイよ、わたしが呼びかけに応えよ」



 俺がオソイの名を呼ぶと、目の前に光の柱が現れた。

 その光の柱が消えた時、その場には真っ白に光輝くオソイの姿が現れた。


「わが主よ、わたしはオソイ。白き獣……」

「俺の名は『モジャ・モジャ・モッサール・ダ・フロア』だ。オソイよ、わたしが力として戦ってくれ」

「フロア。わが主よ、わたしはお前の力としてこの牙と爪で敵を打ち砕こう」


 洞窟の主だったオソイは、俺の精霊としてその魂を契約した。

 この洞窟で為すべき事をやり遂げた俺は、虹色に光る大きな石を持ち、洞窟の入り口に向かった。


◆◇◆


 フロアさんが洞窟に向かい、一日が過ぎた。

 しかし彼は全く戻ってくる様子が無い。


「フロアさん、大丈夫かな」

「あの男、彼なら虹の石持ってくるはず」


 サラサさんはフロアさんが強いと認めているようだ。

 ボク達も彼を信じて待とう。


 そして、ボク達が待ち続けていると、洞窟の奥から大きな虹の石を持ったフロアさんが戻ってきた。


「戻ってきたぞ。虹の石とはこれでいいのか?」

「誇り高き戦士。よく戻ってきた」


 サラサさんが虹の石を見てニッコリと笑っていた。

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