315 汚された一族の誇り
「竜の神、そしてその御使い。よくここ来た。歓迎する」
「我らの族長。『ウルツヤ』様だ」
「救い主達、儂フワフワ族の族長『ウルツヤ・バーバ』」
「はじめまして」
族長さんはボク達に飲み物を持って来てくれた。
「それ飲むよい。儂らの気持ち」
フワフワ族の人が渡してくれた飲み物は強いにおいがしていた。
「これ、お酒ですわ」
「そうみたいだね。でもどうやらこれを飲まないといけない雰囲気だよ」
ホームさんとルームさんもこの中身がお酒だとわかって飲むかどうするか考えているみたいだ。
「では一杯いただこう」
フロアさんが飲み物を一気に飲み干した。
「ぷはー、いい酒だな。これは美味い」
「モッサールの者よ。そなたは招かれざる客。それわかってるか」
何故フワフワ族はモッサール族をそこまで敵視ししているのだろうか?
「俺は正直その辺がよく分からねえ。俺がモッサール族の事で知っているのは、夜親父が寝床の前に現れて教えてくれたくらいだ」
「そうか、では知らぬも当然」
族長ウルツヤ様は大きな器に酌まれた酒を一気に飲み干した。
「モッサールの者。なぜ儂らお前達忌み嫌うか教える」
そう言うと族長ウルツヤ様は何かを箱から持ってきた。
箱の中には子供の物と思われるオモチャやアクセサリーなどが色々入っていた。
「これ儂の家代々伝わるもの」
何なのだろうか? こんなオモチャやガラクタをなぜそんなに大事に取っているのだろう。
「コレ、この村捨てた者たち置き忘れ」
「この村を……捨てた?」
そう言うとウルツヤ様は昔話を始めた。
「昔この村優れた戦士住んでた。その名『ボンバヘ・モッサール』、彼一人で狂暴な魔獣狩る勇敢な戦士」
「『ボンバヘ』だって? それはモッサール族の最初の族長の名だ」
「そしてフワフワ族族長美しい娘いた。その名『フンワリ・バーバ』、とても美しく動物の声聞く事の出来た巫女」
「『フンワリ』だって? それは……俺のひい婆ちゃんの名前だ」
つまり、モッサール族はこのフワフワ族の村に昔住んでいたということなのか。
「二人幼馴染仲が良く、将来誰も祝福するはずだった。だが、そんなある時、集落恐るべき魔物現れた。魔物全身真っ黒、巨大な翼持ったトカゲのような姿」
「間違いない、ヘックスのクソたわけじゃ!」
そう言うとアンさんは一気に酒の入った器を飲み干した。
「それで、その後どうなったのじゃ?」
「黒い魔物我らの言葉話せた。そしてこう言ったという。我に生贄を差し出せ。さもなくばこの村を地獄の炎で燃やし尽くしてやろう。だが生贄を差し出せば我がこの村の守り神となり敵から守ってやろう」
この話を聞いていたアンさんが怒りを露わにした。
「何という下衆じゃ! 許せんわ!」
「そして生贄相談の上、最も美しく不思議な力を持っていたフンワリ決まった」
「それを、俺の祖先のボンバヘ様が助けたわけか」
それを聞いた族長ウルツヤ様は不快な態度を示した。
「ボンバヘこともあろうに生贄にされるはずだったフンワリ様連れ出し、村捨てた。怒り狂った黒い魔物、集落焼き、多くの者死んだ」
「そんなわけない! 誇り高き我が族長が怪物相手に尻尾を巻いて逃げたなんて!」
「残念だが事実。ボンバヘこの集落で愚か者、腰抜けの意味」
先祖の知りたくない一面を知ってしまったフロアさんは、黙ったままだった。
しかし少し考えたフロアさんが族長ウルツヤ様に叫んだ。
「その場所を教えてくれ、俺が一族の誇りをかけて邪神を倒す!」
「やめておけ、死にに行くようなもの」
「だが、このままでは俺の誇りが汚されたままだ!!」
フロアさんは自分で一族の誇りを取り戻そうとしている。
ボク達はそんなフロアさんをじっと見ているだけしかできなかった。
「俺が……誇りを取り戻す!」