314 原住民の戦士 サラサ
ボク達は矢を撃ってきた地元の住民らしき人に睨まれた。
「お前達、ここ余所者来るとこでない、早く帰れ、さもなければコロス!」
いきなり殺す宣言されてしまった。
他の人はともかく、ボクはようやくB級の冒険者のレベルになったところだ。
今目の前にいる相手はギルドに登録していないがレベル30近くはありそうだ。
「ここ危険。余所者、弱い。キマイラエサされる」
どうやらこの人はボク達を嫌って追い払おうというわけではなさそうだ。
キマイラが危険だから早く帰れと言っているらしい。
「ボク、キマイラ倒しました」
「ウソつけ。あのバケモノ、集落の者多く死んだ。アレ、森の悪魔」
「本当ですわ、ユカ様は一人だけであのキマイラを倒したのですわ」
「なら証拠見せろ」
しかし、キマイラは燃えてしまい、証拠はもう何も残っていない。
「キマイラは全部燃えてしまったから、証拠はありません」
「証拠も無しにキマイラ倒した言う。お前ウソツキ。やはりコロス!」
原住民の戦士は弓から矢を撃ってきた。
「うわぁっ!」
「ユカ様、危ないですわっ」
ボクは思わず地面に触れた。
「ボクの足元を低くして!」
ボクはスキルの床貼りで自分の足元を低くし、矢の直撃を避けた。
「お前、不思議な力使う。本当にキマイラ倒したか?」
「本当です。ボクは一人でキマイラを倒しました」
原住民の戦士は一旦弓を引いてくれた。
「話、聞かせてもらおう」
「……」
助かった。
原住民の戦士はどうにか話を聞いてくれる気になった。
「お前、名前何と言う?」
「ボクは……『ユカ・カーサ』です」
「そうか、我の名『サラサ・バーバ』だ」
そう言って原住民の戦士は覆面を取った。
覆面の下は男とも女ともどちらとも取れるような、美しいサラサラの髪の毛の獣人だった。
「バーバ。お前はフワフワ族の者か」
「何者だ、キサマ」
「俺は『モジャ・モジャ・モッサール・ダ・フロア』モッサールの最後の生き残りだ」
その名前を聞いたサラサは手に持っていたナイフをフロアに突きつけた。
「キサマ、何しにここに来た!?」
「ま。待ってくれ、なぜいきなり俺に攻撃的な態度を?」
「モッサールの者に話す事は無い」
どうやらモッサール族とフワフワ族は過去に何かあったらしい。
でもボクはそれに関係ないのか、サラサさんはボクに話しかけてきた。
「答えろ。森の悪魔キマイラを倒した者よ」
「は、はい」
「あの恐るべき炎、どうやって潜り抜けた?」
「それは、ボクのこのベルトのおかげかと」
サラサさんはボクのベルトに着けられた宝石を見てビックリしていた。
「こ。これは神の石。それも全部の色揃ってる! お前……いや、アナタは我々の救い主。これは失礼した」
ボクのベルトを見たサラサさんがボクに深く頭を下げた。
「ほう、おぬしら……コレが何か知っておる様じゃのう」
「誰だ? ……ま、まさかアナタ……狂いし竜王と同じ……竜?」
アンさんを見たサラサさんが怯えた表情を見せた。
「狂いし竜王じゃと……? その者はひょっとして黒い竜の事かのう?」
「は、ははぁっ。竜の神様。ユカ様、あなたの御使い。黒い竜……我らの住む集落に言い伝え語り継がれている災厄をもたらす悪神」
サラサさんの話を聞いたアンさんは眉をひそめた。
「あのクソたわけ。こんな所におったんじゃのう。よかろう、ワシが一肌脱いでやろうではないか」
「ありがとう。竜の神様。私達の村、案内する」
そしてボク達はサラサさんに連れられて、山奥の集落に案内された。
そこは髪の毛と尻尾がふわふわの獣人族がたくさん住んでいる場所だった。
「竜の神様。族長、待ってる」
「ふむ、では話をしてみようかのう」
ボク達は集落の奥の大きな族長の家に案内された。
「竜の神とその御使いよ、よくぞ来た。歓迎する」