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307 鯨肉の揚げ物

◆◆◆


 鯨の揚げ物は茹でて柔らかくした後に脂で揚げたので、周りの金色と一緒にナイフで簡単に切れる柔らかさになっていた。


「あの硬い鯨肉がこんなに」

「まあ食べてみようよぉ」


 私はマクフライ夫婦と一緒に試作の鯨肉の揚げ物を食べてみた。


「美味しい、しかも柔らかくてジューシー」

「こんな料理があったとは知りませんでした」

「これならミクニの料理人にも負けない味だよぉ」


 三人ともが鯨肉の揚げ物は美味しいと確信した。

 だが、マクフライさんはやはりがっかりした顔だった。


「でもダメです……これじゃあ売り物になりません」

「マクフライさん、それはなぜ? コレだけ美味しければ」

「店が無いんです……食べるとこが」


 そういえばそうだ。

 マクフライさんのレストランはポディション商会に奪われ、今は持ち帰りの屋台で細々と商売しているだけだ。


「仕方ないねぇ。それなら鉄の串に刺して揚げてみようかぁ」

「わかりました、やってみます」

「あなた、それならもっと小さく切って食べやすくした方がよくないかしら?」

「そうだな、そうしてみよう」


 私達は先程の鯨の揚げ物を一口サイズにして、鉄の串に刺して作ってみた。


「完成です、でも……やはりコレもダメです」

「なぜ? とても美味しそうじゃない」

「コストがかかりすぎます。鉄の串を持ち帰りでってのもですし、それに串が熱くて冷めてからでないと食べれません。確かに冷めても美味しいですが、どうせなら温かい出来立てを食べて欲しいのです」


 マクフライさんは妥協を許さない料理人だ。

 冷めたものを出すよりも温かい出来立てほやほやを食べて欲しいみたいだ。


「鉄が使えないとなると……」


 私は屋台の横にかまどの焚きつけ用の薪の切れ端があるのが見えた。


「そこの木は?」

「焚きつけ用に置いている木ですが、それが何か?」

「コレを使おうよぉ。この木なら細い串を作れば持ち帰りもできる!」


 マクフライさんは鯨の揚げ物用の肉を小さく切り、細い串に何個か刺して揚げてみた。


「完成です、これなら持ち帰りもできてコストもかかりません!」

「よーし、それじゃあこれで勝負だよぉ」


 マクフライさんは頑張って鯨の揚げ物を作った。

 クズ野菜は全部を一つのポテトサラダに合わせて小さな丸にして串に刺して揚げた。


「いらっしゃいいらっしゃい、ミクニの料理法で作った美味しい鯨肉の揚げ物だよぉ」

「揚げもの? それって食べれるの?」

「どうぞどうぞ、試食してから買ってみてよぉ」


 私は最初に試しに食べさせてみる、試食という方法を取ってみた。

 最初に撒き餌のように少しだけ食べさせて、美味しいと思わせてから一気に売る方法だ。


「これ、美味しい!」

「どうぞ、いくらでもあるから買ってねぇ」

「三本、いや……五本ください!」

「毎度ありがとうございます」


 最初のお客さんが鯨肉の揚げものを買ってから、それを見たお客さんがどんどん増えた。


「ミクニの揚げものください!」

「こっちは食べ盛りが多いので十本ください」

「おらコレを今日の昼にするだ、六本くれ」


 鯨の串揚げはあっという間に長蛇の列が出来ていた。


「なんじゃなんじゃ、あの長蛇の列は」


 私は長蛇の列の中に見覚えのある顔がいるのに気が付いた。

 でも今は揚げ物を作るのに精いっぱいでそちらを見ている暇はない。


「ワシにもコレをくれなのじゃ。コレだけあれば足りるかの?」

「ありがとうございます。何本いりますか?」

「そうじゃの……六本くれなのじゃ」

「毎度ありがとうございます」


 そして一時間半もすると、鯨の串揚げもポテトサラダの揚げものも全部完売した。


「マイル様、本当にありがとうございます」

「まだだよぉ。あーしにはこの後どうなるか想定がついている。勝負はこれからだよぉ」


 私にはこの後、ポディション商会が何をしてくるかの想像がついていた。

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