291 引き裂かれた体と心
ユカに異変が!!
バグスの放った黒い塊は、私の身体を蝕んでいる。
「ぐああああああ!!」
「アッハハハハァ。今度こそさようならだよォ」
私の身体が黒い力で、意識と引き裂かれようとしている。
このまま気を抜いてしまうと、もう身体に戻れないような気がした。
「今まで散々煮え湯を飲ませてくれたキミは邪魔だからねェ。消えてもらうよォ」
「くッ! そうはさせないねェ!!」
大魔女エントラ様が私を助けようとしてくれている。
「うっとうしいなァ! 邪魔するんじゃねェよォ!!」
バグスは黒い塊を大魔女エントラ様に放とうとした。
「ディスペルフォース」
魔力無効化の魔法が黒い塊を消し去った。
「ユカ、今助けてあげるからねェ」
大魔女エントラ様が杖を掲げた。
だが、レッドオクトがその杖を絡め取ってしまった。
「くッ、まだ生き残ってたのねェ。しぶといヤツだねェ」
バグスが再び手を大きく上げた。
「そうだ、ゲートがキミのことをジャマだと言ってたよォ。そこの異分子と一緒にキミもこの世界から消えてもらうよォッ!!」
バグスは両手を広げて黒いエネルギーの塊を渦にした。
それはまるで……全てのものを吸いこむブラックホールみたいだった。
「ぐぁああ、心が……もっていかれるぅう」
ダメだ……意識が遠くなっていく……。
私は意識を失ってしまった。
「ハハハハァ、ついに……これで世界の破壊に取り掛かれるよォ! もう邪魔者はいない」
「アンタ! ユカに何をしたのかねェ!!」
「そうだァ。キミもこの世界から消えてもらおうかァ!」
黒い塊は大魔女エントラ様を包み込んだ。
「くッ……まさかこんな事になるとはねェ……」
「えんとら!!」
イオリ様が叫ぶも、大魔女エントラ様は黒い塊に吸い込まれてしまった。
「私が……二人を取り返すっ!」
エリアは持てる力の全てを放ち、二人を黒い闇の玉の中から救い出そうとした。
しかし黒い球はエリアすらも吸い込み、二人はその場から消えてしまった。
「ハハハハァ。それじゃあボクは帰るよォ。後は好きにしたらいい、ハハハハァ」
バグスは笑いながら闇の中に姿を消した。
◆◆◆
「う……、ここは?」
「ユカ様! 気が付きましたか?」
「え? 誰……キミ」
ボクはなぜこんな所にいるんだろう……?
村の教会で天啓を受けた後、ボクは夢を見ているのだろうか。
目の前には凄い光景が広がっている。
ボクの見た事も無いようなS級クラスの騎士や魔法使い、海賊といった人達が超巨大な怪物と戦っていた。
「ひ……ひぃいいい! 怖い、怖いよぉぉ!!」
「ユカ坊、一体どうしたというのじゃ!」
「ド……ドラゴン!?」
僕はわけが分からなかった。
みんなボクのことを知っている。
でも、ボクはこの人達の事が全く分からない。
「だ……誰なんだよキミたちはァー!!」
ボクはわけもわからず、大声で叫んだ。
すると、巨大な怪物と戦っていた人達が……全員ボクの方を見ていた。
「ユカ様……一体どうしたのですか?」
「ユカ、冗談はやめろよー」
「まさかぁ……あーし達の事、わからないのぉ!?」
ボクはその場に座り込んでしまった。
こんな所でボクに何が出来るというんだ。
何故かボクは凄い剣と鎧を身に着けている。
だが、こんな物、重くてとても動けそうにない。
「ユカ坊! このたわけが。ワシの背に乗っておれ!!」
「ひっ! ひいぃい!!」
ボクは何故か紫の変わったドラゴンの背中に乗せられた。
「皆の者、どうやらユカ坊は先程の魔物に精神攻撃を喰らったようじゃ。ワシがユカ坊を守るから、その大蛸はおぬし達で倒してくれ!」
「わかりました!」
「承知致しましたわ!」
「おう、オレに任せなー!!」
どうやらこの人達はあの超巨大モンスターを倒そうというらしい。
全員がモンスターを囲み総攻撃をしていた。
この人達は凄い高レベルの冒険者達だ。
一人一人がレベル40以上なのだろう。
彼らの攻撃で、モンスターは少しずつ弱っていた。