275 三色の光
マデンが魔族と初めて知った国民達は驚いていた。
その後、マデンを倒した英雄が誰なのかと群衆がざわざわしてきた。
「その英雄とは、ここにおられる英雄バシラ様の子孫『ユカ・カーサ』様とそのお仲間です」
え、いきなりの名指し?
とりあえず、流れ的にはここは立った方が良いだろう。
私は席から立ちあがった。
すると、辺りからは割れんばかりの拍手が巻き起こった。
この拍手は全て私達を讃えるものなのだろう。
私は少しむず痒い気分がした。
「あの方が伝説の英雄バシラ様の子孫!」
「この国の救世主様だ!!」
「ありがたや、ありがたや……長生きした甲斐があったわい」
私は盛大な拍手に応えるため、群衆に向かって大きく手を振った。
その直後、先程よりも盛大な拍手が巻き起こった。
私達は今、この国の誰よりも目立っているのだろう。
「僕達はユカ様達と共にマデンを倒しました。そのきっかけを教えてくれたのがユカ様だったのです。ユカ様は亡き父上に、私達は一本の矢だと言いました。一本では折れてしまう矢でも、三本合わせると決して折れず、その強さはどんな敵をも穿つほどになります。僕達はユカ様のおかげで一本ずつの矢を番え、魔将軍だったマデンを打ち倒しました!」
その時、天空からリョウドさん、リョウクウさん、リョウカイさんに向かい、三本の光が降り注ぎました。
リョウカイさんには青い光が
リョウクウさんには赤い光が
リョウドさんには緑の光が
これは……光の三原色!
この世界でこんな事を知っていてこれだけの魔法の使える人物は……一人しかいない!
「えんとらめ、小憎らしい演出をしおってからに、どうせどこかで見ておるんじゃろう」
イオリ様は群衆が三色の光に目を奪われている間に姿を隠した。
三色の光はどんどん大きな光となり、その三つが重なった時、辺りは白い大きな光に包まれた。
その時、光の後ろに紫の巨大な龍が姿を現した。
龍神の姿になったイオリ様だ。
「ワシはこの国の守護神、龍神イオリじゃ。ホンド王の子供達よ、三人で力を合わせ、共に歩んでゆくがよい。ワシはこの国の守護神として……其方達の事を見守ろうぞ。ミクニに幸あれ、永久の繁栄と栄光を!」
イオリ様はそう言うと天龍殿に舞い降り、リョウクウさん達三兄妹をその背中に乗せた。
「どれ、ワシがこの国の新たな後継者を祝福し、披露してやろうぞ!!」
イオリ様は天高く舞い上がり、三兄妹を乗せたまま神速で国中を駆け巡った。
その姿は天雷となり、国中のどこからも見えるほどだった。
そして、天龍殿に戻ってきたイオリ様は三兄妹を降ろすと、再び群衆に見つからないように元の席に戻ってきた。
「どうじゃ、ワシの演出もなかなかの物じゃろう!」
私は苦笑いをするしかできなかった。
確かにエンターテイメントとしてはこれはかなりインパクトがあっただろう……。
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だが、この後この龍神に乗った三兄妹はミクニの全土で語り継がれる事になる。
遥かなる昔、国乱れ、魔の者が国を奪わんと画策した時、海の彼方より救世主達来たり。
その者、不思議な力をもちて伝説の龍神の呪いを解き、力とならん。
救世主の助言により三本の矢を番えし王の三兄妹、三本の矢をもちて魔の者を打ち砕かん。
三人の兄妹、王の遺志を受け継ぎし時、赤青緑の三色の光の柱は三人の兄弟を祝福せん。
祝福されし三兄弟、龍神の背に乗り国駆け巡りその後は天雷となり。
三人の王、それすなわち。
武に優れし王、武王ミクニ・リョウカイ
義に厚き女王 義王ミクニ・リョウクウ
智に長けし王 賢王ミクニ・リョウド
三兄妹治めしミクニの地は、三王亡き後も末永く繫栄したという。
ミクニ国史書簡 天ノ章より抜粋。