270 お風呂で深まる親交
カツ丼を食べる晩餐会が終わった後、私達はまたゆっくりする為に部屋に戻った。
「湯浴みの準備が出来ております。皆様、どうぞごゆるりと」
私達は男湯と女湯に分かれて浴場へと向かった。
とりあえず、シートとシーツは一応オスとメスなのでそれぞれ別に入る事になった。
「ふー、生き返るなー」
「オイオイ、ユカ。お前死んでたのかー?」
「違いますよ! そういう比喩ってやつですって、生き返るくらいスッキリできるって事ですよ」
カイリはどうやらこういう比喩表現とかは、あまり知らないらしい。
「まああれだけの死闘の後だ、身体をゆっくり休めるのも良いかもな」
「!!? っていうかあなた誰ですか!?」
「何を言っている? 俺はフロアだが」
信じられない、お湯に浸かったフロアさんの髪がサラサラのストレートで、彼が長髪のとんでもない美形になっている。
「信じられない……」
「失礼だな、これが乾くと元のモッサールの一族の伝統的な髪型に戻るのだが」
モッサール族の遺伝子恐るべし。
シートはお湯の中で、嬉しそうに犬かきをしていた。
こう見ると銀色の大きな犬にしか見えない。
まあみんながあれだけの死闘の後で、ゆったりできていた。
これが平和だと言えるのだろうな。
「失礼するぞ」
「え? リョウカイさんに……リョウドさん?」
「はい、僕達も湯浴みに来ました。やはり親交を深めるにはお湯の中が良いと父上が言っておりましたので。湯の中には刃物はご法度。戦場だったとしても、湯浴みの時は敵味方関係なく体を休めてから戦うのが習わしだと聞きました」
ホンド王は風呂が好きだったのだろう。
「吾輩も何度と父上の戦のお供をしましたが、風呂場では敵味方は関係ありませんでしたぞ。魔族とはそういった事はありませんでしたがな。人同士の戦いでは破ってはいけない掟が存在したのですぞ」
私達は風呂の中でリョウドさん、リョウカイさん達とゆっくりと親交を深めた。
◆◆◆
私はお湯の中でゆったり休んでいた。
みんなはあれだけの死闘を繰り広げた後で、かなり疲れていた。
私のレザレクションのスキルで体の傷は癒せたみたいだったが、疲れやだるさは別のものだったみたいで中々抜けない様だった。
「エーリアちゃん!」
「ひゃあっ!!」
私の後ろからいきなりマイルさんが胸を掴んできた。
「アハハハハ、ビックリしたぁ?」
「も~、何をするんですか!」
私はマイルさんに文句を言った。
「フフフ、楽しそうだね」
「リョウクウさん?」
「ああ、小生もここで湯浴みさせてもらおうと思ってね。女同士で話をしたいというのもあったからね」
「いいじゃないのぉ。みんなで楽しみましょ!」
マイルさん達は女同士で風呂の中で話をはじめた。
「いいなぁ。兄妹っていうのはさぁ」
「マイル殿? いったいどうした?」
「あーし、お兄ちゃんいるんだけどぉ。本人には言えなくてねぇ。だから気兼ねなく話の出来るアンタ達が羨ましいと思ってねぇ」
「マイル殿には、兄上がおられるのですか?」
マイルさんがお湯の中で大きく伸びをした。
大きな胸がお湯の中で揺れていた。
「あのカイリってのが、どうやら昔生き別れたあーしのお兄ちゃんみたいなんだよねぇ。でも本人はあーしが知ってるってのは、まだ気づいてないからねぇ」
「そうでござったか、でもいずれは知る事かと。その為に心構えはしておくべきかと思います」
「なんじゃなんじゃ、何か面白そうな話でもしておったかのう?」
「イ……イオリ様!? どうしてこちらに??」
少女の姿のイオリ様がお湯の中に沈んでいた。
「失敬なやつらじゃのう。ワシだけ除け者にするつもりかえ?」
「そういうわけじゃありませんが……」
イオリ様も含めた女の子達だけのお風呂の中での話は、その後もしばらく続いた。




