258 松の廊下の死闘
私達は城を突き抜けた。
操られた城の武士や家来達は出来るだけ傷つけないように峰打ちや呪縛、マップチェンジのトリモチ等で動けなくして先に進んでいる。
「もうすぐだ、もうすぐ松の廊下に出る!」
並み居る武士団をねじ伏せ、切り抜けながら私達は松の廊下に到着した。
松の廊下は文字通りに立派な松の絵の描かれた広い廊下だった。
しかしここに敵はいなかった。
私達は松の廊下を駆け抜けようとした。
そこには、一人の人物の姿が見えた。
「ひいいいいー! 助けてくれぇー!!」
追いかけられていたのは白髪の老人だった。
その老人は、立派な服を着ていた。
「マデン! 貴様、どこに行く!?」
「ひいいいー、助けてくれぇー!!」
なんという事だ。
どうやら松の廊下を背中を切られながら逃げているのがマデンらしい。
しかし、魔将軍とも呼ばれるようなマデンがなぜ、逃げているのか?
それに、この追いかけられている人物からは魔物の雰囲気を感じなかった。
「マデン! どこへ行く!」
「わ、わしは何も知らん!? マデンとは誰じゃー」
どうも話が見えない。
だが、状況は良くない事だけは確かだ。
そして、マデンを切り殺そうとしていたのは……黒い剣を握ったリョウドだった。
「リョウド! 何をしている!!」
「クッハハハハハハ! 遅かったな。余は、そこの者を殺し、完全な力を手に入れるのだ!」
リョウドの目にどす黒い闇が宿っていた。
まさか、マデンの正体とは!
「エリア、その老人を助けてやってくれ。その人はマデンではない!!」
「ユカ……? 分かった」
エリアはレザレクションのスキルを目の前の傷ついた老人に使った。
すると何故か、リョウドが苦しみだした。
「やはりそうじゃったか……マデン、キサマの正体、見破ったぞ!」
「龍神イオリ! 何故ここにいる!? 呪いの影響が無いとでもいうのか!?」
私もマデンの正体が何者かがわかった。
このパターンはゲームでも何度か見かけたボスのパターンだ。
“ドラゴンズ・スターⅦ”にはキャラに乗り移るタイプのボスがいた。
そのボスは仲間に乗り移り、仲間割れを起こさせるタイプのやつだ。
マデンの正体はあの黒い剣。
あの黒い剣の持ち主がマデンの身体にされてしまうのだろう。
「貴様ら……我の正体を……見破ったというのか!?」
「みんな、あの黒い剣を狙うんだ!」
「ほう、ユカ坊はマデンの実体が何かわかったようじゃのう!」
リョウドがうろたえている。
「何故……何故だ、何故我の正体を……」
「魔将軍マデン! お前の正体は、その黒い剣だ! その黒い剣を持つ者の主を変え、その体を乗っ取っるのがお前だ!」
私は黒い剣を指さした。
「クッハハハハハハ、気が付いてしまったようだな。そこの老人はタダの貧乏貴族。我がその体を使ってやったにすぎぬわ。我はリョウドを魔道に染め、その体でこの国だけでなく、世界を支配するのだ!」
黒い剣を持ったリョウドが高らかに笑っていた。
「さて、我が正体を知った者は全て葬る。そして、この国は我の物になるのだ!!」
「リョウド……」
「リョウクウ嬢よ、今は手を出すではないぞ」
リョウクウさんが泣き出しそうな顔になっている。
「クッハハハハハハ、嘆く事はないぞ。そちは特別に生かしてやろう。魔道に染まり、大好きな弟の身体と交わり、我の子を孕む魔妃として永久に生きるがよい」
「この腐れ外道が!!!」
リョウカイさんが激昂しながらリョウドの持つ魔剣に切りかかった。
「ほう、銘刀海神か。だが、その程度の鈍では我に傷一つつける事は出来ぬわ!!」
リョウドは圧倒的な力でリョウカイさんの刀を弾き飛ばした。
「貴様は生かしておく必要がないのでな、その首はねてやろう。その屍は死将軍として使ってやるがな!」
リョウドがリョウカイさんに黒い剣を振るった。
「天雷よ! ここに在れ!!」
イオリ様が黒い剣に雷を落とした。
「グガアアア!!」
黒い剣を持ったまま、リョウドは雷の直撃を受けていた。