251 天空からの救援
◆◇◆
私は竜神イオリ様の背中に乗せてもらい、龍哭山を下った。
「ユカ坊、しばし急ぐ故、振り落とされんようにな!」
イオリ様がスピードを速めた。
その速さは風よりも早く、私達はあっという間に龍哭山のふもとの村に到着した。
しかし、その場所にはあるはずの村が無かった。
村のあったと思わしき場所には、あちこちに煙が上がっていた。
「ユカ坊、これはちと困ったことになったかもしれんな」
「イオリ様、困った事とはどういった事でしょうか?」
「ワシの髭に邪悪な妖気がビリビリと伝わってきておるのじゃ。これは間違いなく魔の者」
「それは、マデンの手下が来ているという事でしょうか?」
「おそらくな。そして女子供の嘆く声が聞こえてきて……かなわんわい」
イオリ様が苦悩していた。
「ではすぐにでも助け出さないと!」
「じゃがここはもうすでにもぬけの殻じゃ。残るのは骸と朽ち果てた家だけじゃ……」
私達が助けてあげれなかった人達がいる。
イオリ様もそれを嘆いていた。
「じゃがな、これ以上マデンの好きにさせぬためにも、ワシらは行かねばならぬ!」
「はい、わかりました!」
「ユカ坊、妖のいる方に飛ぶぞい!」
イオリ様は向きを変え、魔の者の臭いの強い方角に飛んだ。
◆
「ここは!?」
「ここも村だったようじゃな。しかし焼かれてまだ真新しい。妖の者はこの付近におる!」
私達はイオリ様の背から辺りを見渡した。
「あ、あそこにいるのは……兄上!!」
「リョウクウさん!」
リョウクウさんがランザンに乗ったまま、軍の本陣に向かった。
リョウカイさんの前に、巨大な黒と黄金の一つ目鬼が立ちはだかっている。
その横側には大きな斧を構えた巨大な骸骨の鎧を着た鬼武者がいた、
「兄上!!」
リョウクウさんが飛龍ランザンの背中から槍を骸骨の鬼武者に投げつけた。
槍は見事に鬼武者を貫き、リョウクウさんは地面に着地した。
その様子を見ていたイオリ様が空気を震わせ、辺りに声を響かせた
「この痴れ者共が……! 汚らわしき妖共よ、冥府に消えるがよい!!」
上空を見上げた一つ目鬼が叫んだ。
「キ……キサマは!?」
イオリ様が一つ目鬼に叫んだ。
「貴様ら如き凡骨に名乗る名は持ち合わせておらぬわ!!」
上空を見上げたリョウカイさんは私達に気が付いたようだった。
「あれは……龍神様」
「ようー、リョウカイー。無事かー?」
カイリが大声でリョウカイさんに呼びかけた。
そして、地面に着地したリョウクウさんは槍を鬼武者から引き抜いた。
「兄上! ここは我らにお任せ下さい!」
「リョウクウ……いったいこれは?」
「話をしている暇は有りません!」
一つ目の大鬼が動揺していた。
「な……何故だ、何故龍神イオリがここにいる。カイダン殿はどうしたというのだ……」
「あの愚か者ならワシが屠ったわ!」
「な、何だと!? ワシらに続くマデン様の僕のカイダン殿を……」
イオリ様が咆哮をあげた。
「マデンの手下の愚か者共よ、死ぬがよい。貴様らに降伏の余地は無いわ!」
そう言うとイオリ様は地面に沿う形で飛び、一つ目鬼と鬼武者の手下をなぎ払った。
なぎ払われた敵兵達はバラバラに砕け、そのモンスターの擬態が解けていた。
「よう、助けに来たぜー」
「リョウカイさん、大丈夫ですか!!」
イオリ様の背から降りた私達はリョウカイさんのそばに駆け寄った。
「兄上、武士達は何故加勢しないのですか!?」
「残念だが、武士団は呪いの邪香で敵の傀儡になっている」
武士団が私達の周りを取り囲んだ。
「クックっク、そいつらはただの人間。呪いの邪香で操られているにすぎぬわ。罪なき者を斬って魔道に堕ちるがよい」
「そうは……させません!!」
エリアが凛とした声を響かせた。
「聖なる力よ……邪悪なるものに蝕まれた、かの者達を助ける力を我に……レザレクション!!」
「な、何だこの力はぁーーー!!」
辺り一面にエリアのレザレクションの光が満ちていった。