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250 妖(あやかし)の兄弟

◆◆◆


 死んだはずのゴグが言葉を発している。


「クックック、貴様は一番良い選択をしたと思っているようだが、それが最悪の選択だったのだ」

「ゴグ、なぜ生きている!?」


 ゴグが起き上がった。


「クックック、ワシらがあの程度で死ぬと思っておるのか、このバカめ!」

「ゴグ、何だその声は!」


 ゴグの声が明らかに先程と違った。

 とてもおぞましいしゃがれた声で、まるで老人のしゃべり方だ。


「ゴグ! 貴様は一体何者だ!?」

「カッカッカ、若様。世の中には知らない方が良い事もございましたのに……哀れですな」


 マゴグが後ろで下卑た笑いをしていた。


「な……何だというのだ!」

「クックック、哀れ大将軍は……野伏に殺められる事になり、逆賊リョウクウは斬首。リョウドはマデン様の傀儡の暗君として、この国に塗炭の苦しみを与える」


 ゴグの身体が膨れ上がり、その姿は一つ目の大鬼の姿に変わった。


「リョウカイ殿、貴様の選んだ選択の未来がこれじゃ。貴様はここで哀れな死を迎える事になる」

「貴様ら! (あやかし)か!」

「左様、我らマデン様の忠実なる(しもべ)。兄のゴグと弟のマゴグじゃ」


 マゴグの姿が禍々(まがまが)しい巨大な骸骨の鎧をまとった鬼武者になった。


「ワシらのこの姿を見て生きておった者はおらん。さあ、覚悟を決めよ」

「くっ! 武士団よ! (あやかし)を討て!!」


 しかし、誰一人としてそれに応える者はいなかった。


「無駄じゃ。既にこの辺りは呪いの邪香が焚かれておる。貴様の部下はもうワシらの言いなりじゃ」


 武士達は何故か吾輩に刀を向けてきた。


「さあ、部下を斬ってでも生き残って魔道に堕ちるか、それとも誇り高く死を迎えるか。好きに選ぶがよい」


 無念だ。

 大将軍ともてはやされた挙句、こうなるとは。

 吾輩は銘刀海神(ワダツミ)を投げ捨てた。


「クックック、リョウカイ大将軍は死を選んだ様じゃな。何、安心しろ。貴様の父も妹もすぐ送ってやるから寂しくはあるまい……まあ、弟には暗君として魔道を歩ませるがな」


 この国がこんな形で最期を迎えるとは……吾輩は地面を叩いた。

 やるせない何処にもぶつけられない怒りがこみ上げてくる。


「ではワシの大斧でそっ首はねてしんぜよう!」


 マゴグが丸太のような腕で大斧を持ち上げた。


 リョウクウ、先に逝く兄を許せ!

 だがお前を殺めずに済んでよかった。

 惜しむらくは、民草の笑顔がもう見れぬ事か。


 辞世の句すら詠めず散るのが無念だ。


 ズガッッ!!!


「!」


 激しい音の後、しばらく沈黙があった。

 だが、吾輩の首はまだ落ちてはいない。


「ガ……アアァ」


 吾輩が目を開くと、目の前には槍にくし刺しになったマゴグの姿があった。


「兄上!!」


 この声は……リョウクウか。


「この痴れ者共が……! 汚らわしき(あやかし)共よ、冥府に消えるがよい!!」


 地の底から響くような、威厳のある声が聞こえてきた。

 だが、恐怖は感じない。

 むしろとても力強く、頼もしい声だった。


「キ……キサマは!?」

「キサマら如き凡骨に名乗る名は持ち合わせておらぬわ!!」


 上空を見上げた吾輩は、自らの目を疑った。


「あれは……龍神様」

「ようー、リョウカイー。無事かー?」


 龍神様の背にはユカ殿とカイリ殿達が乗っていた。


「兄上! ここは我らにお任せ下さい!」

「リョウクウ……いったいこれは?」

「話をしている暇は有りません!」


 吾輩は地面から銘刀海神(ワダツミ)を拾った。


 ゴグは上空の龍神様を見て怖気づいていた。


「な……何故だ、何故龍神イオリがここにいる。カイダン殿はどうしたというのだ……」

「あの愚か者ならワシが(ほふ)ったわ!」

「な、何だと!? ワシらに続くマデン様の(しもべ)のカイダン殿を……」


 上空にいる龍神様が、ミクニの守護神イオリ様なのか!


「マデンの手下の愚か者共よ、死ぬがよい。貴様らに降伏の余地は無いわ!」


 そう言うと龍神イオリ様は地面に沿う形で飛び、ゴグとマゴグの手下をなぎ払った。

 なぎ払われた兵達はバラバラに砕け、その(あやかし)の擬態が解けていた。


「よう、助けに来たぜー」

「リョウカイさん、大丈夫ですか!!」


 その後、地面に降りた龍神イオリ様の背中から、ユカ殿やカイリ殿達が降りてきた。

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