248 大魔女エントラと龍神イオリ
前の話に誤字報告がありましたので修正しました。
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お師匠様は大鏡を見て笑っていた。
「プ……ハハハハ。イオリはこっちの事に気付いていないようだねェ」
お師匠様の見ている大鏡には、頭に小石の落ちてきて怒っていた少女が映っていた。
しかし、こんな小さな女の子が龍神って……。
龍神とは異国のドラゴンの事だ。
クリスタルドラゴンや伝説の竜王ヘックスとは違った姿で、どうやらドラゴンというよりは手足の生えた蛇みたいなイメージに近いと聞いた事がある。
しかし、どう見ても大鏡に写っているのは、ただの民族衣装を着た少女だ。
これがそんなSSモンスターよりも強いなんて思えるわけがない。
「お師匠様、本当にその少女が龍神イオリ様なんですか」
「そうだねェ。どうやら今は龍の姿になれないみたいだけどねェ」
大鏡を見ていた僕達は、その中の異変に気が付いた。
「お師匠様、何か様子が変です!」
「どうやらそうみたいだねェ」
「お師匠様、お師匠様でしたら助ける事は出来るのではございませんの?」
僕達が大鏡を見ている間に、中には巨大な怪物が現れた。
「どうやらあれはマデンの手下のようだねェ」
「お師匠様、どうにかできないんですか!」
「まあ黙ってみているんだねェ」
大鏡が激しく光った。そしてその光がおさまった時、様子が激変した。
「どうやらイオリは呪いで姿を戻せなかったみたいだねェ。ほら、これが本当のイオリの姿だからねェ」
「!!??」
「何……ですの。怖いのに……美しい……ですわ」
大鏡の中に写ったのは、紫色の見た事も無いような巨大な不思議なドラゴンだった。
「あれが龍神イオリの本当の姿だからねェ。妾と大喧嘩した時はあの姿だったねェ」
その姿は、この前戦ったクリスタルドラゴンや異界の大悪魔の手下の最強ドラゴンを遥かに上回る、SSS級のモンスターだった。
いや、モンスターというよりは神の姿だった。
「凄まじい雷の魔法ですわ……」
「まあねェ。イオリの魔力は妾とほぼ同じだからねェ」
お師匠様が飴を舐めながら龍神イオリ様の暴れる様子を楽しそうに見ていた。
「ほら。もう終わったねェ。まあイオリならあの程度のザコ魔神一瞬だろうねェ」
魔神、それはS級モンスターの事である。
下手すれば中くらいの街くらいなら、一体で滅ぼす事の出来る魔族。
お師匠様はその魔神をザコ扱いしているのだ。
そして、魔神を倒した龍神イオリ様とユカ様達の会話が聞こえてきた。
「マデンめ……ワシのおらんうちに無茶苦茶をしておるな。よかろう……ワシが力を貸してやろう、マデンには大きな貸しもあるでのう」
「イオリ様、マデンとは……魔将軍マデンの事なのでしょうか」
「ほう、ユカ坊。その話えんとらから聞いたと言っておったな。えんとらとは性格が悪そうで乳だけがデカいアヤツの事か?」
お師匠様が飴をバキッと噛み砕いた。
「人が聞いていないと思って好き放題言ってるねェ。あのお子様」
お師匠様はニコニコと笑いながら、杖を高く掲げた。
すると、少女の姿に戻った龍神イオリ様の頭にいくつかの小石がコツンコツンと落下した。
「痛い痛い痛い、コラー、えんとら! どうせ貴様の事だ、盗み聞きしておったな!!」
お師匠様はクスクス笑っている。
この人やっぱり少し性格が悪いかもしれない。
「人の悪口をいう時は本当に相手に聞こえていないかきちんと確かめてから言うんだねェ」
しかしその直後、お師匠様が真面目な顔に戻った。
「どうやらユカくんたちはイオリと一緒になれたみたいだねェ。これならミクニの事はもう安心だねェ」
「お師匠様、もう安心とは?」
「あのイオリ、あれで最強だからねェ。彼女が力を貸すならマデンごときに負けるわけがないからねェ。さて、そろそろ出かける準備をするよ」
お師匠様は大鏡の映像を切った。
「お師匠様、僕達はどちらに?」
「そうねェ。自由都市リバテアに行こうかねェ」
「わかりました!」
そして修行を終わらせた僕とルームは、お師匠様にクリスタルドラゴンに乗せてもらい自由都市リバテアに向かう事になった。
今回で双子の修行が一旦完了です。
次回からは再びミクニの内乱の話に戻ります。