243 魔将軍ゲート
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僕達はついに……異界最強の大悪魔を倒した。
「やった、僕達の勝ちだ!!」
「二人共。もう卒業だねェ」
お師匠様が嬉しそうながらも、なんだか少し残念そうな表情をしていた。
僕も嬉しいような悲しいような、複雑な心境だった。
多分ルームも同じ心境なのだろう。
「ウ……ウウゥ……」
倒れていた大悪魔が起き上がった。
僕はそれを見て、再び魂の救済者を強く握った。
「もうやりませんよ……私の完敗です」
大悪魔は嬉しそうな顔をしていた。
「残念ですよ、あなた方なら私のいい眷属になってくれると思ったんですがね。約束は守りましょう。これ以上戦うつもりはありませんよ」
「悪魔の言う事が、信じられるかっ!!」
「まあそういわれると思いましたよ。そうですね、お詫びにあなた方の望みを一つかなえて差し上げましょう」
大悪魔の言う事は嘘ではないようだ。
「望みねェ。ここに大量の砂糖を用意してってのでも良いのかねェ?」
「お師匠様、いくらなんでも冗談が過ぎますよ!」
「何ですか、その程度の事で良いのですか?」
大悪魔はお師匠様の冗談を真に受けて手を高く掲げた。
そして、辺り一面に砂糖が雪のように降り注ぎ、僕達は砂糖まみれになってしまった。
「うげぇ。っぺっぺっぺ、これ本当に砂糖だー!!」
大悪魔はニヤニヤしていた。
「なあに、特に代償はいりませんよ。これは私を倒したあなた方への敬意ですから」
お師匠様はこの大量の砂糖に目をシイタケのようにして喜んでいた。
「さて、貴方の望みは何ですか?」
「本当に、聞いてくれるのか」
「ええ。私は嘘はつきません」
僕は、強くなりたいと思った。
しかし僕にはこの魂の救済者がある。
これ以上の剣なんて望んでも、何を渡されるかわからない。
「強い……鎧が欲しい」
「いいでしょう、魔界最強の鎧を差し上げましょう」
大悪魔が手を挙げると、僕の目の前に真っ黒な鎧が姿を現した。
「この鎧は『渇望の鎧』そのものが望むものを糧とし、その姿を変える鎧です」
これは凄い名前の鎧だ。だが、これでユカ様の助けができるなら僕はこの鎧を使う!
鎧には魔獣の顔が刻まれていた。
その目が一瞬光ったと思ったら……僕の全身は鎧に包まれていた。
「おや、あの漆黒の鎧が真っ白になるとは……これは面白いですね」
これは凄い鎧だ、僕は目の前の大悪魔に剣を掲げて礼をした。
「貴女は何を望みますか……」
「私は……あの人の力になりたいですわ」
「いいでしょう……では、こちらを差し上げましょう」
大悪魔は再び手を挙げて、空間から指輪を取り出した。
「これは恋慕のリング。相手を思う気持ちが強ければ強いほど、力を発揮する指輪です」
「凄い……この力があれば……」
ルームの全身からすごい魔力が放出された。
その魔力はその場にいた全員の傷を癒し、魔力と生命力を回復させた。
「さて、私はそろそろ元の世界に戻りますよ。みんな、起きなさい」
大悪魔が指示を出すと、今までに戦ったSS級モンスターが全員起き上がりこちらを見ていた。
よく見ると全員が美しい女性ばかりだった。
あのドラゴンも女の人だったのか。
「では、私達は帰りますよ……またお会いできるのを楽しみにしていますからね」
いや。あんな最強の大悪魔、もう二度と会いたくない。
そして、大悪魔が元の世界に戻ろうとした時、異変が起きた。
「!!! 何!? 何なのさねェ、この強圧な、どす黒い魔力は」
「エントラ。久しぶりだな、やはりあのメテオフォールはお前の仕業だったのだな」
「その声……ゲートか!?」
お師匠様が声の主に反応していた。
そして、謎の声の主は空間に門を作り、結界の内側に姿を現した。
その姿は……お師匠様に似た顔の魔族の男だった。
「エントラ、お前程度の力で魔軍に立ち向かおうとは……相変わらず愚かな奴だ」
「魔将軍ゲート! 何故ここに!?」
魔将軍!
お師匠様の言っていた魔族最強の四天王、それが魔将軍だ。
どうやらこのゲートという男は、その魔将軍の一人らしい。
「……不愉快ですね。いきなり話に割り込んで入ってくる無礼な人は、私は大嫌いですよ」
「ほう……貴様、魔族らしいな。俺を知らない魔族がいるとはな」
大悪魔と魔将軍が、お互いを睨みあっていた。