238 氷と炎と大打撃
◆◆◆
私の魔法反射壁は、ドラゴンのブレスを完全に跳ね返した。
自らのブレスを受けたドラゴンは少し怯んだようだったが、打撃を受けたようには見えなかった。
「なんという硬さですの……あのブレスでも無傷だなんて」
私は杖に力を集めた。
何か攻撃する方法を考えなくては……。
しかし、あのドラゴンの鱗を砕くほどの魔力。
一体どうすれば。
このままでは空中に体を保つことも厳しくなってくる。
そんな時……頭に声が聞こえてきた。
「……聞こえますかっ? 私の声が、聞こえますかっ??」
「誰……ですの?」
「聞こえたのですね。私はこの杖を通して貴女に語りかけていますっ……」
「その声……お母様?」
杖から聞こえてきたのは、懐かしい声だった。
その声は、お母様そっくりだった。
「いいえっ、私はテラス……貴女の遠い先祖です」
「テラス……様? 魔法王テラス様!?」
声の主は伝説の魔法王、テラス様だった。
「私の遠い子孫よ。今こそ貴女に私の絶対究極の魔法を授けます」
「絶対究極の魔法、それは……お師匠様の魔法では」
「いいえっ。私の魔法は彼女の物とは違います。貴女は心を無にしてください」
「……」
私は目を閉じ、テラス様の指示に従った。
ドラゴンが猛攻を仕掛けてくる。
しかし私はそれを気配だけを感じ、全てかわし続けた。
「凄い! 見ていないのにドラゴンの攻撃を全て避けれましたわっ!」
「雑念を捨てなさいっ。そのままでは死にますよっ!」
私は命じられるまま、心を無にして集中した。
体に魔力が流れ込んでくるのがわかる。
杖を通し、私に絶対の究極魔法が伝わってきた。
氷と炎。
そして圧倒的な打撃。
「極意……習得しましたわ! これが我が偉大なる始祖、魔法王テラスの絶対究極魔法!」
私は目を見開いた。
ドラゴンは再び私をブレスで吹き飛ばそうとしている。
だが私は、もう攻撃を避けようとはしない。
「これぞ絶対究極魔法っ!」
私の周りに圧倒的な吹雪が吹き荒れた。
「アブソリュート・ゼロ・テンパルチャァー!!」
猛吹雪は絶対零度の氷結となりドラゴンを氷漬けにした。
そしてその直後、私は再び杖を掲げた。
灼熱の炎が吹き荒れる。
「プロミネンス・ノヴァ!」
絶対零度で氷漬けになったドラゴンを灼熱の轟炎が包み込んだ。
そして私は更に杖を振りかぶった。
「トライ・ディザスタァー!!!」
凍気と轟炎で脆くなったドラゴンの鱗にトールハンマー級の雷が大打撃となり降り注いだ。
これが……魔法王テラスの絶対究極魔法。
絶対究極魔法トライ・ディザスターを喰らったドラゴンは、完全に戦意を失い、地面に落下した。
そして下にいた錬金術師もその下敷きになってしまった。
◇
「へェ。テラスちゃんの魔法……習得できたんだねェ」
お師匠様がこちらを一瞬見てにこりと笑った。
「さて、妾も本気を出そうかねェ!」
お師匠様が目を見開いた。
「さあ、この魔法対決、妾がもらったねェ!!」
お師匠様の周りに七色の空気が漂っている。
お師匠様はエナジードレインだけではなく、大気中の魔素すらも自らの物にしていたのだ。
「!? なんですと。これは想定以上ですね!!」
大悪魔が触手を伸ばしてお師匠様を攻撃してきた。
しかしそれを救ったのはホームだった。
「お師匠様に手出しはさせませんっ!!」
「素晴らしい師弟愛ですね。流石ですよ」
大悪魔はニヤリと笑っていた。
「しかし私の部下をそのままにしておくわけにもいきませんからね」
大悪魔は失神したドラゴンを触手で捉えると自らの元に取り返そうとした。
しかし、ホームの剣はその触手を斬り裂き、ドラゴンの尻尾をも斬り裂いた。
一方、お師匠様は魔素とバンパイアロードの魔力を全て体に取り込み、メガドレインの魔法を発動していた。
「魔力勝負は妾の勝ちだねェ!」
お師匠様の魔力はSS級モンスターのバンパイアロードの魔力を全て奪いつくした。
そして、バンパイアロードは全ての魔力を失い、ミイラ化して地面に落下した。
「ご馳走様。貴女の魔力、とても美味しかったわねェ」
これが世界最強の魔女の力である。