233 必殺技対必殺技
◆◆◆
僕達は確実に強くなっている。
しかし敵はそれ以上に強い。
そして、敵はそれぞれが別々の能力を持ちながら、必殺技を使える。
僕達はユカ様やドラゴンを相手にするくらいの、強敵と戦う覚悟で戦わないといけない。
「お兄様、私明日こそ勝ちますわ!」
「ルーム、もう悔しくないの?」
「そりゃあ……悔しくないと言えば噓になりますが……悔しがるよりも勝って喜びたいですわ」
ルームもこの修行で精神的に強くなった。
父上が昔言っていた事がある。
「倒れたら立ち上がり、前よりも強くなれ!」
つまり負けるのは恥ではない。
負けて諦める事こそが恥ずかしい事なのだ。
以前の僕やルームは、負ける事を恥だと思っていた。
それだけ自身が努力しているので強いと思っていたからだ。
だが、実際僕達の戦った敵は、どれもそれを上回る強敵ばかりだった。
マンティコア、盗賊ボスのアジト、ヘクタールのゾンビ達と屍肉ゴーレム、クリスタルドラゴン、双子の異界の剣士。
どれもが一人では絶対倒せないような強敵ばかりだった。
それをみんなの力で倒してきた。
しかしこの修行で戦った三体のクリスタルドラゴンは、ほぼ僕一人だけで戦った。
ルームの戦った異界の双子の剣士もそうだ。
そして今戦っている敵も、ルームと力を合わせなければ勝てない強敵だ。
「ルーム、明日は二人で絶対に勝とうね!」
「ええ、お兄様。絶対に……」
そして僕達は眠りについた。
◇
「さて、今日も修行と行こうねェ」
お師匠様が異界の門を開き、仮面の戦士達を召喚した。
「行くぞぉ!」
「お兄様、私に任せてくださいませっ! プロテクトシールド」
僕達は二人で背中合わせに構えた。
異界の戦士達は猛攻を繰り広げてくる。
しかし、僕とルームは相手の攻撃を見ながら致命傷を避け、攻撃を受けながら少しずつ反撃をした。
二体のゴーレムは、ルームが攻撃を食い止めてくれている。
そして仮面の戦士が必殺技を出そうと分身を始めた。
「そうはさせない!」
僕は魂の救済者を構え、目を閉じた。
敵は七人に分裂しているが、その実態は一人のはず。
その一人の本物を見極める。
「お兄様危ない! エアリアルストーム!!」
ルームの風魔法はもう一人の戦士の投げた武器を空中に舞い上げた。
もしここでルームが助けてくれなければ、またあの影縛りに固定されていたところだった。
「レジデンス流……究極奥義! 縦横無尽斬ッッ!!」
僕が究極奥義を出した瞬間、仮面の戦士は七色のエネルギーを僕に放ってきた!
「バリアフィールドッ」
ルームが僕の周りに魔法防御の幕を張ってくれた。
これで必殺技対必殺技の対決は僕が圧し斬れる!
僕の斬撃の嵐は仮面の戦士の全身を捉えた。
その斬圧はもう一人の仮面の戦士も巻き込むほどだった。
「うおおおおおお!!!」
僕は一心不乱に剣を振り続けた。
心には何も雑念は無い。
一面の水面のような心境で目の前の敵にのみ反応をする。
そして、全ての縦横無尽の斬撃が止んだ時、僕の前に敵はいなかった。
「へェー。ここまで強くなると妾も嬉しいねェ」
お師匠様が僕を褒めてくれた。
僕は……あのとてつもない強敵に勝てたのだ。
「お兄様、私に考えがありますの。少し手伝ってくれますかしら!?」
「あ、うん。わかった!」
ルームはそう言うと杖を高く掲げた。
「レジスト……サンダー!」
僕の剣にルームの魔法が降り注いだ。
もう一つのエネルギーはルームの杖に落ちたようだ。
「さあ、今こそ私の魔法の真価が問われる時ですわ……」
「!? ルームちゃん……何をするつもりなんかねェ?」
「トォォォーーーール……ハンマァァァァアア!」
ルームの極大雷魔法が僕の剣に降り注いだ。
その雷はどこまでも大きく蓄積された巨大な玉のような形になっていった。
「これが……私の編み出した極大究極魔法ですわ!!」