228 努力の勝利!
◆◆◆
僕とルームの修行はそれから数日続いた。
勝てそうで勝てない、そんな状態が何日も続いている。
だが、クリスタルを破壊するまでは出来るようになった。
レベルアップ痛にも慣れ、僕達のレベルは40台後半になっていた。
「うおおお!」
クリスタルドラゴンのブレスの攻撃パターンも、読めるようになってきた。
コイツらはブレスを吐く前に首を震わせる。
その時は守備力が低下するのだ。
ブレスを吐かれる前のタイミングで首を破壊する。
するとその間、首を再生するまではコイツらの行動は攻撃から守備に転ずる。
そのタイミングを狙って、クリスタルの場所を移動させるのだ。
「でりゃああー」
クリスタルを固定している見えない糸は、断ち切れるようになった。
後はどう移動させて一気に破壊するかだ。
クリスタルドラゴンの攻撃を誘導し、三体同じ場所にまとめる。
これが難しくて何度も負け続けていた。
だが、今日は違った。
僕は破壊したクリスタルドラゴンの首の上に乗り、他の二体のクリスタルドラゴンをおびき寄せた。
部屋の隅におびき寄せられたクリスタルドラゴンは、三体が重なるように並んでいる。
そして、クリスタルドラゴンを形成している三つのクリスタルを三つ、つまり九個のクリスタルを同じ場所にまとめる事が出来た。
このチャンスを逃せばコイツを倒すのはまたかなり先になってしまう。
今が最大のチャンスだ!
◆◆◆
私はエアリアルバーストを使い、二人の剣士の攻撃を避けながら攻撃を続けた。
こういう素早い相手には、無詠唱の連続で使える魔法を連発する方が効く。
つまり、ファイヤーウォールやイラプシオンコルムナよりも、ファイヤーボール連打で削る方が効果があるわけだ。
「ファイヤーボール!」「ファイヤーボール!」「サンダーボルト!」
連続魔法で敵の行動を少しずつ阻害しつつ、こちらのフィールドを形成する。
「レジストファイアー」
この魔法は火属性の攻撃を一定時間ダメージ無効化が出来る。
「ファイヤーウォール!!」
私はファイヤーウォールを固定で出す事で、剣士たちの行動を孤立化させる事に成功した。
こうなれば各個撃破も可能だ。
私は今まで使えなかった究極魔法に挑戦してみた。
「食らいなさい、炎の究極魔法! ボルガニック……フレアァー!!」
極大の炎の塊が二人の剣士を襲った。
二人共、なすすべもなく炎の塊に飲み込まれた。
「やり……ました……わ」
「へェ……やるじゃないねェ。合格」
炎の塊が姿を消した時、二人の剣士は沈黙して立ったままだった。
その直後、二人の剣士はその場に崩れ落ちた。
「勝った……勝ちましたわ!」
私は全魔法力を使い果たし、その場に倒れ込んでしまった。
◆◆◆
九個のクリスタルを一気に砕くには、究極奥義を使わなくては勝てない。
今までの修行の成果が出ているなら、僕にも使えるはずだ。
僕は魂の救済者を強く握り、構えを取った。
クリスタルドラゴン達はトリプルブレスの構えだ。
このトリプルブレスを喰らうと、確実に負ける。
勝負はこの一瞬で決まる!
「レジデンス流、究極奥義……縦横無尽斬!!」
これは心を無にし、眼前の気配のみを頼りに目標に八方向から切り付ける究極奥義。
父上もこれを取得するのには相当時間がかかったようだ。
「へェ、こっちもやるわねェ。ゴーティ坊やの時はもっとかかったのに」
僕の剣による攻撃はクリスタルを確実に捉えた。
手ごたえはあり。
そして、クリスタルドラゴン達はブレスを出す寸前に沈黙。
九個のクリスタルはヒビを立てて激しい共鳴を起こし、その場に砕け散った。
クリスタルの消滅と同時に、クリスタルドラゴンも砕け散り、消滅した。
「二人共よくやったわねェ。合格」
お師匠様がニッコリとした顔で僕達を褒めてくれた。