224 異界の剣士達
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「お師匠様……この杖は?」
「コレは妾の使っている杖。あんな魔獣使いの杖ごとき二流品とは違い、どれ程の魔力を使おうとも決して砕ける事はないからねェ。この修行の間貸してあげるねェ」
魔獣使いの杖は世間ではS級武器と言われる程の武器だ。
しかし、お師匠様はそれを二流品と言っている。
「ありがとうございますわ、お師匠様!」
ルームはとてもうれしそうな顔をしていた。
「喜ぶのは後だからねェ。敵はもう攻撃してくるからねェ」
「!!」
仮面の女剣士が華麗な剣さばきの鋭い剣でルームに連続で突き攻撃を仕掛けてきた。
「くっ、油断しましたわ!」
攻撃を避けた瞬間、ルームにもう一人の剣士が切りかかってきた。
こちらは荒々しい獣のような剣技だ。
「二人もいるのですの!?」
「ルームちゃん、避けてばかりじゃ修行にならないからねェ」
お師匠様はキャンディーを食べながらルームを見ていた。
「グオオオオオン!」
「!?」
ルームを見ている場合ではなかった、こちらもクリスタルドラゴンを倒さなくては!
「二人共、一応この城にいる限り死ぬことはないからねェ。死ぬほど痛い目は見るけど、HPは決して1以下にはならないように妾が魔法をかけているから……命がけで戦うんだねェ」
これが父上の受けた修行なのだろう。
父上の常人とは離れた強さは、この修行の成果だったわけだ。
だが、僕はそれの三倍の修行をしなくてはいけない。
「レジデンス流剣技、縦横斬!」
僕は魂の救済者を振るい、一体のクリスタルドラゴンを形成しているクリスタルを破壊した。
「それじゃあ駄目ねェ。すぐ復活するからねェ」
お師匠様の言った通り、クリスタルドラゴンを形成しているクリスタルが復活した。
これはユカ様達と一緒に戦った時の様に、三つの点在するクリスタルを同時に砕く必殺技を使わなくてはならないのだ。
「ギャオオオオオオン」
クリスタルドラゴンが三体同時に僕に向かってブレスを吐いてきた。
どこにも避け場所がない、僕は三つのブレスを全て喰らってしまった。
「うわああああああっ!」
僕はブレスの痛みで立ち上がる事が出来なかった。
魂の救済者はクリスタルドラゴンに踏まれ、動けない僕は取り返す事が出来なかった。
「うう……」
そして、僕は動けないままその場でルームの修行を見ていた。
◆
ルームは全身を剣士に切り刻まれ、もう一人の剣士に逃げ道を防がれていた。
「キャアアアア!」
ルームは魔法を放つ暇すらなく、一方的に攻撃を喰らうだけだった。
「ファイヤー……」
魔法を出そうとした瞬間、ルームの身体を仮面の剣士の剣が貫いた。
「ルーム! ……」
「お兄……様……私、悔しい……で……す」
ルームは成すすべもなく、一方的に二人の剣士の攻撃を受けて倒れてしまった。
「二人ともダメねェ。最初から何もできずに負けてるわねェ」
僕は悔しくて涙が出てきた……。
ルームも顔は見えないが、やはり泣いているようだ……。
「今日の修行はここまでにしようかねェ。二人共、ちょっと待っててねェ」
そう言うとお師匠様はクリスタルドラゴンと二人の剣士を門の中に戻した。
「今動けるようにしてあげるからねェ。メガヒール」
お師匠様の魔法で私とルームは全くの無傷の状態に戻った。
「最初から強敵との戦いは厳しかった様ねェ。では明日はもう少し優しくしてあげようかねェ」
「嫌ですわ! 明日も……今日と同じ修行でお願いしますわ!」
ルームが大声で否定していた。
よほど今日の負けが悔しかったのだろう。
そういう僕も、あんなブザマな負け方はもう嫌だ。
「お願いします! 僕も明日同じ修行でやらせてください」
「フフフ、二人ともいい顔してるわねェ。わかったわ、まあ今日は美味しい物食べてゆっくり休もうねェ」
僕とルームはしっかり食事をして、明日の修行に備える事にした。