223 ホームとルームの修行
ここからしばらくの間、ユカ達と別れたホームとルームの双子による大魔女エントラから受ける修行の話になります。
◆◆◆
僕とルームは大魔女エントラ様の城に残り、修行をする事になった。
「そうねェ。最初は……お菓子を食べましょうねェ!」
僕とルームはずっこけた。
「エントラ様、ふざけないで下さいっ!!」
「アハハハハ、冗談よ、冗談だってねェ」
「エントラ様、私達には時間がありませんですの、早くお願い致しますわ」
「ルームちゃん、こっちへ来なさいねェ」
ルームが大魔女エントラ様の前に行った。
その時、エントラ様がルームの手を軽く握っただけで、ルームはその場に崩れ落ちてしまった。
「だから言ったのよねェ。そんな魔力も尽きたボロボロの状態で修業しても体を壊して死んじゃうだけだからねェ」
悔しいが正論だ。
僕達はこの城に来るまでにかなり体力を使い果たした上で、クリスタルドラゴンと戦い、まだ体力は完全に回復しているとは言えない。
「だから今日は美味しい物を食べてゆっくり休む事にしようねェ」
「分かりました」
「承知致しました……わ」
大魔女エントラ様は従者に用意させたホットケーキと紅茶を僕達に食べさせてくれた。
「やはり甘い物が無いと生きているとは言えないわねェ。これがあるから長生きしたいと思うのよねェ」
大魔女エントラ様はご先祖様と同じ時代を生きていた。
いったいこの人はいくつなのだろうか?
「ダーメーよ、女性の年齢を考えるってのは良くない事よねェ」
! 大魔女エントラ様は僕の心を読んだというのか?
「これ。美味しいですわ」
「ルームちゃん、おかわりはいくらでもあるからねェ。この城にいる限り食事の事は気にしなくていいからねェ」
大魔女エントラ様は優しい事を言っているようで、実はそうではない。
これはつまり、修行と休憩以外の時間は無駄なので全てその時間に使えという意味だろう。
「二人共、今日はゆっくり休むんだねェ。明日から修行開始するからねェ」
「はい、分かりました。エントラ様」
「承知致しましたわ、エントラ様」
大魔女エントラ様が不機嫌な顔になった。
「ダーメ、そんな他人行儀な言い方は許せないのよねェ。妾の事は師匠と呼ぶのねェ」
「はい、分かりました。お師匠様」
「承知致しましたわ、お師匠様」
「よくできました」
エントラ様がニッコリと笑った。
◇
次の日、僕とルームは城の広間に案内された。
「さて、二人共、今日から修行を開始するからねェ」
「はい、お師匠様。お願い致します!」
「お願い致しますわ、お師匠様」
「よろしい。では……ホームくんはこれをやってもらいましょうねェ!」
そう言うとお師匠様は杖を掲げて巨大なクリスタルドラゴンを召喚した。
「コレを一人で三体倒すんだねェ。ゴーティ坊やは一体だったけど、ホームくんはこれを三体倒せるようにならないとねェ」
父上の修行よりも厳しくないと今の僕達ではユカ様についていけない。
「お師匠様、お兄様……あんな化け物と戦うのですか?」
「ルームちゃん、貴女の敵はこちらだからねェ!」
そういうとお師匠様は空中に謎の門を作った。
「さて、異界からの戦士を呼ぶからねェ。ルームちゃんはこの連中を倒せるようにならないとねェ」
お師匠様が開いた門からは、仮面を着けた女性の剣士と、男性とも女性ともとれるような姿の剣士が現れた。
「コレは異界の強者の姿を召喚した者、コレくらいは倒せるようにならないとねェ」
ルームにはあえて剣士との近接戦闘の修行をするようだ。
「今のホームくんとルームちゃんの強さはS級冒険者10人分くらいだねェ。でもこの修行で二人には……S級冒険者1万人分くらいの強さを身に着けてもらおうかねェ」
「お師匠様。ですが私にはもう武器が……」
「コレを貸してあげようかねェ。妾の使っていた杖だからねェ」
お師匠様はそう言うと、ルームに一本の立派な杖を渡した。