220 マデンの刺客
1話と5話と7話と8話で誤字報告がありました。
ありがとうございます。
龍哭山の頂上に着いた。
「ユカ坊、ご苦労じゃったの。ワ……イオリ様がもてなしてくれよう」
「そう……なんですね」
流石にこの山道は辛かった。
マップチェンジで道を作ろうにも、アンがどんどん先に行くのでそんな暇もなかった。
「そうじゃ、茶の一杯くらい淹れてやろう」
そう言って頂上の家に向かったアンが見たのは、見事に瓦礫にされた家の残骸だった。
「なんじゃこれわ!!」
アンが動揺していた。
そりゃあこんなもんいきなり見たらビックリもする。
そこには、大きな斧を構えた巨大な化け物が立っていた。
「ガアアア、いないと思ったらどこかに行っておったか! マデン様の命によりキサマを葬りに来た! 龍神イオリよ!!」
「貴様、何を言っておるかわかっておるのか!?」
アンが目の前の化け物に憤慨していた。
「ガハハハハハ、キサマこそマデン様に力を封じられて龍の姿に戻れぬ童女のくせに、このマデン様の第一の僕、カイダン様がキサマをブチ砕いてくれるわっ!」
「ワシも舐められたもんじゃのう、よかろう。貴様のようなたわけ者、消し炭にしてくれるわ!!」
そういうとアンは天に巨大な雷雲を呼び寄せた。
「砕け轟雷!!」
ホームのサンダーブレークの数十倍ともいえる巨大な雷が、カイダンと名乗った化け物に降り注いだ。
「グオオオオオ!」
「どうじゃ、ワシの轟雷は!」
雷が轟いた後、沈黙の中にカイダンの姿があった。
「クックックック、ハーハッハッハ! これが轟雷だと? 少し肩のコリがとれたわ」
「何じゃと!?」
信じられない。
ホームのサンダーブレークを遥かに上回る大魔法を受けながら、カイダンは無傷だった。
「龍神イオリ、やはりマデン様の呪いは偉大なり。全盛期のキサマの力なら確かに少しは痛みを感じたかもしれんが、今のキサマは無力!」
「くっ、無念じゃ……」
「では今度はこちらの番だな! 爆ぜよ骸炎衝!」
カイダンの手から出た髑髏の形の真っ黒な炎が、アンを襲った。
「ぐああああああぁぁぁ!」
アンが黒い炎に包まれた。
「くっくっく、この炎は呪いの炎。相手を燃やし尽くすまで呪いは解ける事はない!」
「くっ……不覚じゃ……ぐああああぁぁあ!!」
このままではアンが殺されてしまう。
その時、エリアが飛び出した。
「エリア!」
エリアを守る形で、シートとシーツが前を守った。
「ザコ共が、龍神イオリですら歯も立たぬわしに……キサマらごときが相手になるか。死にたくなければ下がっておれ!!」
しかしエリアは一歩も引かなかった。
「大地に眠る正しき力よ……今こそ我がもとに集い、呪いを消し去る力となれ…」
「な……まさか! キサマは、解呪の……神の御業を使う巫女なのか!?」
余裕の態度だったカイダンが、血相を変えてエリアに矛先を向けた。
「そうはさせん、そうはさせんぞー!!」
「おっとー、女の子に手を出そうってのはーいただけねーなー!!」
カイリが大槍でカイダンの大斧を受け止めた。
そして私も遺跡の剣を抜いた。
「エリアの邪魔はさせないぞ!!」
「キサマら、わしの邪魔をしようというなら、全て肉塊になるまで叩き潰してくれるわ!」
今はカイダンを食い止める事だけを考えよう。
エリアのレザレクションがもう少しで使えるはずだ。
「今こそ……呪いを消し去る力を我に……レザレクション!!」
「なんだ、この力はぁぁあああああ!!」
エリアのレザレクションは辺り一面に真っ白な光となり、アンを包んでいた真っ黒な炎を消し去った。
「な、何という力じゃ……ワシの力が……戻った! マデンの呪いが解けたのじゃ!!」
アンの全身に今までとは比べ物にならない程の巨大な力がみなぎっているのを、私達は目の前にした。
「見せてやろう……龍の逆鱗に触れた愚か者の末路をな!」
怒りに燃える龍であるアンの目が、金色に光っていた。