218 イオリとホンド王
あけましておめでとうございます。
今年も転生クリエイターのマップメイカーをどうぞよろしくお願い致します。
◆◇◆
アンに案内された私達は、龍哭山を登っていた。
「なんじゃ、もうへたばったのか。だらしのない奴等じゃのう」
「ちょっと……ペース……早すぎませんか?」
アンの歩くスピードは常人の走る速さ並みだった。
その上ここは高山だ、すぐに息が切れてもおかしくはない。
「仕方がないのう、ではこの辺で食事にするかのう」
私達は山道の少し広くなった場所で休憩をする事にした。
「ほう、白飯か。これを食うのは久方ぶりじゃのう」
「そうなんですね、以前はどちらで?」
アンはおにぎりをかぶりながら質問に答えてくれた。
「そうじゃのう、ホンド坊と一緒におった時はワシにこれをよく食わせてくれたのう、ワシは梅干しと赤い魚卵の塩漬けが好物じゃったわい」
アンの話し方はまるで、ホンド王と長い間一緒にいたような話し方だった。
「アンさんは、ホンド王とはお知り合いなのですか?」
「そうじゃのう……アレは……! 違うぞ! ワシはあくまでもイオリ様の……弟子として一緒におっただけじゃ!!」
なんだかアンさんの態度が不自然だった。
これは何かあるのかもしれないが、今はそういう話ではない。
「アンさん。それで、龍の賢者イオリ様とはどのような方なのですか?」
「そうじゃなー、ワ……! イ、イオリ様は飛龍族の長、この国に古くからいる龍なのじゃ。その力は天をも割り、稲妻を呼び万の大軍すらも打ち砕くお方なのじゃ」
イオリ様とは凄い龍だという事は分かった。
しかしやはりこの話し方、何か違和感を感じる。
「では、アンさんはいつからイオリ様の弟子になられたのですか?」
「! ……それはのう、ワシは捨て子じゃったんじゃよ。ずっと昔、ワシは生まれてすぐこの山に捨てられておって、それを助けてくれたのがイオリ様じゃった」
どうやら、アンさんは捨て子だったらしい。
「ワシがどこで生まれたのかも知らん、しかしイオリ様はその真っ赤な龍の身体でワシを我が子の様に育ててくれたのじゃ」
? イオリ様って紫の巨龍ではなかったのか?
「真っ赤な龍ですか? イオリ様は紫色の巨龍と聞きましたが」
「!!!? そ……それはじゃなぁ、赤と青は紫の元の色じゃろう、イオリ様は赤い体と青い体を持つ龍なのじゃ!! そうなのじゃ!」
この不自然な誤魔化しで、私にはもうわかってしまった。
このアンという少女の姿をしているのが、本当はイオリ様なのだろう。
そして、そのイオリ様は別の赤い巨龍に育てられた話を、ついポロッと漏らしてしまったというわけだ。
「アンさん、ホンド王とはどれくらいの長い付き合いなんですか?」
「ホンド坊は、ワ……イオリ様が魔軍と戦い、傷ついていた時に呪いの剣を引き抜いてくれたのじゃ。……イオリ様はそれに恩義を感じ、ホンド坊の飛龍として天下統一の覇業を手伝ったのじゃ。」
なるほど、ホンド王がイオリ様の命の恩人だったので、その恩返しとして一緒に戦ったというわけだ。
「では……マデンとは一体、どのような人物なのですか?」
「マデンは、ワ……ウグウウウオオオオオ頭が、頭が痛い!!」
やはりイオリ様はマデンを知っていた。
「マデン……マデンとは魔将軍マデンの事ですか!」
「……すまぬ、その事には答えらぬわ……」
「大魔女エントラ様に聞きました、ミクニの国を乗っ取ろうとしている魔将軍がいると。その名前がマデンでした」
頭の痛みをエリアに癒してもらったアン……イオリ様は、脂汗を流しながら私達に話しかけた。
「はぁ……はぁ、急ぐぞい……もう時間が無い……」
「分かりました」
私達は山頂を目指し、山を登り続けた。