215 マデンの影
大掃除とかいろいろしてたらアップする時間がこの時間になってしまいました
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「謀反人を捕えろー! リョウド様をお救いするのだ!」
「くッ! 飛べっ! ランザン!!」
「クオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
◆
小生は弟を連れ、城を抜け出した。
城の中にいるのは敵だ!
奴は、兄上がミクニの国にいない間に、後継者を弟にする事で自らの傀儡にしようとしていた。
「姉上……予はどうすればよいのじゃ?」
「リョウド……小生が必ず助けてやる、だから信じておれ」
「姉上……」
ここは龍哭山。
古き昔より、龍の聖地と呼ばれている場所だ。
「イオリ殿にお会いできれば、知恵を貸してもらえよう」
「リョウクウ様。我ら空龍武士団、いつ……いかなる時もリョウクウ様の御身を守る盾となり、矛となりましょう」
「貴公らに感謝する、小生の無茶に付き合わせて申し訳ない」
小生は『ミクニ・リョウクウ』女だてら空龍武士団の元帥を務めている。
今、小生が抱えているのは弟の『ミクニ・リョウド』奸臣によって傀儡にされる寸前だったところを助け出し、ここに連れて逃げてきた。
「リョウクウ様。何故マデン殿が怪しいと?」
「カンだよ。でもそれだけではない。奴は優しすぎるのだ」
「優しい? それは良い事ではないのでしょうか?」
「それは場合による。奴はあまりにも野心が無さ過ぎるのだ。民はマデンの事を名君を支える立派な大臣だと見ている。だが、それを完全に信じ、父上がもし亡くなった場合どうなる?」
「どうなると申されますと?」
「この国はマデン無しには成り立たなくなる。そこで奴が今まで隠していた牙をむきだした場合、どうなると思う?」
これには正直根拠はない。
何故ならマデンは、小生が小さき頃に世話になったじいやみたいなものでもある。
本当なら疑いたくはない。
幼き日に小生に義の大切さ、人を守る事の意味を教えてくれのは彼なのだ。
「まさか……そんな恐ろしい事を!」
「そうだ、もし奴の優しさや忠義が偽りのモノであった場合、このミクニの国は地獄になる!」
「姉上!?」
リョウドが怯えた顔をしている。
小生はリョウドを胸で抱きしめた。
「大丈夫だ、必ず……姉ちゃんが守ってやるからな」
「姉上……姉上、母者のような匂いがする」
「そうか、今は甘えても良いんだぞ」
「リョウクウ様、我らは辺りの様子を見てまいります!」
兵士たちは気を利かせてくれたのだろう。
小生はリョウドの頭を優しく撫で、胸で顔を受け止めた。
「姉上……姉上……」
リョウドが泣いている。
小生と兄上はまだ母上の面影を知っているが、リョウドは幼い頃に母を失っている。
だからリョウドにとって小生は母替わりのような存在なのだろう。
「大丈夫だ、必ず……守ってやる!」
その場に一陣の風が舞い降りた。
「来てくれたか、ランザン!」
「クオオオオオオオオオオン!!」
ランザンは小生の相棒の飛龍だ。
辺りの様子をうかがってきてくれたらしい。
「ランザン、それで……辺りの様子は?」
「クウウルルルルウ!」
そうか、ついに手がかりが見つかったか!!
「クオオオオオオオオオンン!」
ランザンが背に乗れと、小生に伝えた。
「リョウド、しっかり掴まっていろ! 飛べ! ランザン」
ランザンが小生を乗せ、高く舞い上がった。
それに次ぐ形で空龍武士団が追従する。
「ランザンが見つけてくれた! 隠者イオリ殿はこの山にいる!!」
小生はマデンの正体を知っているであろう古き隠者、イオリを訪ねてこの龍哭山に来たのだ。
イオリ殿は、かつて父上と共に戦った龍を知っているらしい。
つまり、イオリ殿はこの国の生き字引ともいえる存在なのだ。
イオリ殿なら、マデンとも古き付き合い故、本当の所を知っているはず。
「イオリ殿、必ず見つける!」
小生は奸臣マデンの正体を知るため、龍哭山を飛龍と共に馳せた。
だが、それは既にマデンの手の者に感づかれていた事には、その時には小生はおろか、誰も気づいてはいなかった。