214 リョウクウの謀反
後継者の選択。
下手にこれを誤ると、数万数十万人の命が失われてしまう。
とても重要な選択だ。
これを下手に「関係ない、よくわからない」とごまかしたり時間稼ぎをすると一つの国が滅びてしまう。
何故私がこの事態を知っているか、それはかつて私が『トライア』で“ラスティング・サーガ2”における、後継者争いのある国に関与するシナリオを作ったからだ。
平和な国『エンダーランド』に招かれた主人公は、国王に後継者の事で相談をされる。
武勇に優れた長兄、知的で才女の長女、民衆に慕われる次男。
この選択を間違えると奸臣に国を奪われてしまい、滅亡するというシナリオだった。
この選択は絶対に間違えてはいけない!
普通に考えると武勇に優れた長兄が継ぐべきだが、武だけでは国は治められない。
だからと正しい事を突き進もうとする長女。
正論だけで片付くほど世の中は甘くはない。
そして民衆に慕われる次男。
国の王の器としては素晴らしいが、武力が無ければ簡単に理想論は覆される。
この事を踏まえると、答えは一つだ。
次男を王とし、長兄は大将軍として国を守る。
長女は二人を支え、三人で国を一つにしていく事。
毛利元就の三本の矢の故事に従えばいい。
「ホンド王、ボクの意見を言わせていただきます」
「おお、決まったか」
「はい、武力無くして国は成り立ちません」
「ではやはり長兄のリョウカイが継ぐべきか」
「いいえ、ですが武力だけでは正しい心が無いとただの暴力、圧力になってしまいます」
「では義の心を持った長女のリョウクウが継ぐべきなのか」
「いいえ、それも違います。暴走した正義はいつしか反発を招きます、そうなると正義は意味を失います」
「そうか、では民に愛されたリョウドが継ぐのが良いのか。儂はリョウドに国を託したいと考えておった、だがあの子はまだ幼すぎる」
ホンド王の中では、リョウドに国を継がせたいという意思があったようだ。
しかしこの選択では、間違いなく国は乱れる。
「ですので、ボクの考えを聞いて下さい。お願いしますが矢を四本いただけますでしょうか?」
「矢を? おい、そこの者。矢を四本持ってまいれ」
私の前に四本の矢が用意された。
「ホンド王、この矢を一本折ってみてください」
病弱の老人でも、この矢を一本折るくらいなら容易くできる。
私がやってもいいのだが、四本くらい問題なく折れてしまうので説明の説得力に欠けるのだ。
「老いた病弱の身とはいえ、矢を折ることくらいは容易いわ」
ホンド王は少し力を入れて矢をへし折った。
「それがご子息たちの一人一人の力です、一本では簡単に折れてしまいます」
「そうか、そういう事か」
「ですが、この矢を三つ持って折ってみてください」
「よかろう、老いたとはいえ儂も武勇で鳴らした身、これくらいなら……ぬ!? ぬおおおおお」
ホンド王は何度力を入れても三本の矢を折る事が出来なかった。
「流石だ、ユカ殿。其方の言いたい事はよくわかった」
「そうです、三人が力を合わせる事でこの国は安泰なのです!」
「ユカ殿、感謝する。後日、儂の名で後継者を発表しよう。下がってよいぞ」
そして、私はホンド王の部屋から退室した。
部屋の外にはみんなが待機していた。
「ユカ殿、父上はなんとおっしゃっておった?」
「それは、後でゆっくり話すよ」
その時、急いだ様子で駆けつけてきた兵士が部屋に現れた。
「リョウカイ様! 一大事でございます!!」
「何事だ! 騒々しい、父上の部屋の前であるぞっ!」
兵士は、それでも話を続けた。
「無礼承知しております、しかし、これはお伝えしなくては……謀反です! リョウクウ様がリョウド様を人質に取って謀反を起こしました!!」
恐れていた事態が起こってしまった!
ホンド王が後継者を発表する前に、クーデターが起きてしまったのだ!




