213 三人の後継者
私達がふすまの中に入ると、そこには巨大な布団の上に寝ている人物がいた。
その人物は後ろを女性に支えられていた。
「よく参られた、異国の戦士たちよ。儂がミクニの国王、『ミクニ・ホンド』である」
彼は病気の老人であったが、鋭い眼光は健在だった。
「儂の息子、リョウカイが是非とも其方達を儂に会わせたいと聞き、儂も認めた。其方、名前はなんと申す」
「ボクは『ユカ・カーサ』です、ホンド王、お目にかかれて光栄でございます」
「カーサ……其方、英雄バシラ殿の身内の者か」
ホンド王は私の先祖、バシラの事を知っていた。
「ホンド王はボクのご先祖様をご存じなのですか?」
「うむ、この国でもバシラのような男になれとの故事もあるくらいだ。あれこそ益荒男の姿そのものと言えよう」
先祖はこの国で相当尊敬されているらしい。
「儂も若い頃はバシラのような武士になろうと戦いを繰り返したものだ。かつてこの国はヒモトと呼ばれておった。だが、ヒモトは乱世によって麻の様に乱れておったのだ」
聞くと日本の戦国時代みたいなものなのだろう。
「儂は小さな国だったミクニの王子としてこの国に生まれた。その国を泣く民を無くすため仁を持って統一せんと立ち上がったのが儂の父、『ミクニ・コクド』だった」
「そうなんですね」
コクド王はリョウカイの祖父という事になるのだろう。
「だが、父君は志半ばにして凶刃に倒れた、その遺志を引き継ぎ、国を一つにせんと儂は忠臣達と共に天下統一の戦いを繰り広げたのだ」
「はい、素晴らしいです」
話を聞くとまさに、大河ドラマのような話である。
「そして儂は長年の戦いを経てついにこの地に争いの無きミクニの国を築いたのだ」
「争いの無い国、とても良いです!」
コクド王は私が見ても立派な人物だと言える。
「リョウカイ、すまないがしばらく儂をユカ殿と二人だけにしてはくれぬか……」
「父上、承知致しました!」
リョウカイさんは他のみんなを連れてふすまの外に出た。
「ユカ殿、儂は長年の戦いで無茶をし過ぎた故、もう長くはない……病はもう治らぬとわかっておる。しかし一つだけ心残りがあるのだ、聞いてはくれぬか」
「ホンド王、ボクで良ければ」
「感謝する。……儂には三人の子供がおる、みんな素晴らしい儂の自慢の宝だ」
私は嫌な予感がしてきた、コレは間違いなくあの話だろう。
「一人目は其方らも知っておる長男のリョウカイ。リョウカイは海上武士団の元帥で国一番のサムライといえよう」
「はい、そうだと思います」
「二人目は長女のリョウクウ、少し向こう見ずだが間違った事を許せぬ正しき信念を持った儂の娘だ。リョウクウは空龍武士団の元帥を任せておる」
「空龍武士団とは?」
「龍に乗り、戦う武士団だ。儂もかつては空龍を駆り乱世を戦い抜いた」
まあドラゴンライダーの竜騎士団みたいなものだと思えばいいだろう。
「そして、儂の末っ子、次男のリョウド。彼は博識で思慮深く、聡明。民の心を最もよく理解しており、武力は劣るがその仁の心は人を引き付ける天性を持つ子だ」
リョウドは学者タイプの政治家みたいなものが似合う人物なのだろう。
「三人とも、それぞれが儂の若い頃の皆に慕われたいい部分を継いでくれた自慢の子供達だ。だが、三人ともまだ未熟。それ故に儂は心残りがあってまだ死ねぬのだ……」
やはり後継者問題の話だった。
これはあまり首を突っ込みたくないが、そういうわけにもいかないようだ。
「ユカ殿、恥を承知で頼み申す! 儂のこの子供達、誰が後継者になれば皆が納得すると思われるか、是非ともお答えいただきたい!!」
このホンド王に対する私の答えは……。