211 ミクニの国
私はおにぎりをお弁当に包んでもらって船に戻った。
おにぎりの具は、塩、シャケのような赤い魚、昆布のような海藻の煮物、おかかのような魚のそぼろの煎り焼きを入れてもらった。
「ユカ殿。よく我がミクニの料理法をご存じですな」
「いや、冒険者ギルドにミクニに行った事がある人がいたようなので、保存食として教えてもらったんです」
まさか日本からの転生者とはいえるわけがない。
「まあ吾輩も戦場で食う時はこれが欠かせなかったですからな!」
「そうなんですね」
まあおにぎりは保存食というよりは携帯食なのだが、私は話を合わせておくことにした。
「オレはこの実で作った酒が好きだけどなー、透明なのにガツンとキくんだわー」
まあ酒飲みのカイリなら米で出来た酒は好きなんだろう。
「まあミクニの本国には美味い食い物が色々あるからなー」
私はミクニに着いたらまずは丼が食べたいと思っている。
この転生後の世界で初めて米が食べれたのだ。
「うーん、このコメってのでてきた酒、貿易に使うと結構大儲けできそうねぇ」
マイルさんが商人の顔になっていた。
彼女はこの酒をグランド帝国に持っていこうと考えているのだ。
「そうだぁ、この製法を知る事ができれば帝国でもこの酒を造って売れるんじゃないかなぁ」
「マイル殿、ミクニの酒造法はご禁制の物。外に持ち出すのはご法度ですぞ」
リョウカイさんがマイルさんにくぎを刺した。
「ちぇっ……まぁ酒を売るだけでも結構儲けれるからいいかぁ」
転んでもただでは起きない、マイルさんは生粋の商人といえよう。
「お客人、もう出立されますかな?」
「はい、ボク達はミクニへ向かおうと思います」
そして荷物を積んだ私達は、ミクニ目指して船を進めた。
そして島を出て一昼夜、私達はついにミクニの港に着いた。
港には多くの兵士達が現れ、全員がリョウカイさんにひざまずいていた。
「リョウカイ様。ご帰還、お待ちしておりました」
「うむ、皆も息災で何よりだ」
「我らミクニの海上武士団、いつも心はリョウカイ様と共にあります!」
『海上武士団』ミクニの国での海軍の総称らしい。
という事はリョウカイは海軍提督か元帥に当てはまる地位の人物なのか!
「父上は元気か?」
「はい、ホンド様は今は床に臥せておりますが、命は問題ございません」
リョウカイが私達の方を振り返り笑った。
「黙っていて悪かった。吾輩の名は『ミクニ・リョウカイ』ミクニの国王『ミクニ・ホンド』の息子ですぞ」
どうやらリョウカイは想像以上の地位の人物だったらしい。
彼は現国王の息子、つまり王子だったのだ。
「オレは知ってたけどなー」
「まあアンタは前から付き合いがあるからってだけでしょーがぁ」
「はははは、面白い。吾輩は準備がある故、ここでいったん失礼する。さらばだ」
リョウカイは兵士を従え、準備があるからと私達と離れた。
「皆様、後程吾輩の屋敷に来ていただきたい」
「わかりました、後でお伺いさせてもらいます」
リョウカイの部下達は歓迎が終わると、通常の任務に戻った。
「しかしまさかリョウカイさんがミクニの王子だったなんて」
「そうだな、失礼のないようにしなくてはいかんな」
リョウカイさんと別れた後、私達は港町で色々な店を回った。
食べ物屋、小物屋、釣具屋に服屋等、港町には必要な物が一通りそろっていた。
「これぇ美味しそうじゃない、エリアちゃんも食べてみない?」
マイルさんが貝とタコの串焼きを買った。
「はい、エリアちゃん」
「……ありがとうございます」
フロアさんやカイリ、私達も同じ物を買った。
シートとシーツには塩味の少ない焼き魚の串を食べさせてやった。
「「オンッ」」
二匹ともかなりご機嫌だ。
あれだけ船の上でへたばっていた二匹が嬉しそうに走ろうとしていた。
でも勘弁してくれ、その巨体で走られたらこの市場がめちゃくちゃになってしまう。
「あー、わんわだ。おおきいわんわだー」
「わー、もふもふだー」
シートとシーツはミクニの子供達の注目を浴び、子供達の人気者になっていた。