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210 握り飯の味

 私達はそろそろ疲れてきていた。

 360度どこを見ても、ずっと海しか見えないのだ。

 自衛隊では金曜日にカレーを食べるというが、その理由は曜日感覚が無くならないようにするためだと聞く。


 しかしこの世界にはカレーが無い、というか米らしきものが見当たらない。

 なので食事で曜日をわかるようにするというのが、出来ないのだ。


「ユカ、どうしたー? もうへたばったかー?」


 カイリは元気だ。

 流石は海の男というべきか。

 

「い、いえ……大丈夫です。でも、いつになったらミクニに着くんですか?」

「ユカ殿、ミクニはあと一夜越すくらいで国が見えますぞ」


 リョウカイさんが教えてくれた。

 ようやくこの海の上から、上陸できるのだ。


「あーしももうダメ……。海なんて嫌いだぁー!」


 マイルさんもへたばっているし、シートとシーツはもうグロッキーで寝転がっている。

 こうして見てみると、狼というより大きなわんこにしか見えない。

 だが、この二匹はあの真っ赤な大海獣の頭を噛み砕いたのだ。


「なんだ、マイル。だらしねーなー」

「なんだってぇー、あーしはまだまだまだぁ……大丈夫なんらぁか……」


 マイルさんがふらついたのをカイリが後ろから支えた。


「ほらー、いわんこっちゃない」

「って、アンタどこ触ってんのよォー!」


 カイリがソロバンで頭を叩かれた。


「いてー! 何すんだー」

「アンタが悪いんでしょー!」


 言い争っていた二人だったが、カイリがマイルの頭を撫でた。


「ひゃんっ!! はうううぅぅぅそこはだめぇー」


 カイリはマイルの猫耳の裏を優しくなでていた。


「ちったー落ち着け、まったくよー」

「もー、なにすんのよぉ!」


 このじゃれ合い、兄妹の掛け合いらしく、見ていて微笑ましかった。


「ユカ、何ニヤニヤしてんだよー!」

「い、いやね。二人ともいいコンビだなーって。恋人同士のようにも見えるかもね」

「なななな何言ってるのよぉ! そそそんなわけないでしょしょしょぉ」


 マイルさんが顔を真っ赤にしていた。


「そうだそうだ、なんで俺がこんなヤツをー」

「こんなヤツで悪かったわねぇ!」


 もうこの二人、ほっとこう……。


「カイリ殿、遠くに島が見えましたぞ!」

「何だってー! マジかー!!」


 私も遠くの方を見ると、遠くには小さな島が見えた。


 そして、私達は小さな島に船を停泊させた。

 島には少ない島民が住んでいて、私達が到着すると島長(しまおさ)が迎えてくれた。


「これはこれは、リョウカイ様。よくぞこのような何もない島へお越しくださいました」

「うむ、皆も息災でなによりだ」

「ホンド様が若のお帰りを一日千秋の思いでお待ちしております」

「左様であるか。吾輩も父上にご報告する事が有る故、明日にはミクニに着く予定である」


 やはりリョウカイは、ミクニの中でもかなり上の立場の人物だった。


「して、国はどうなっておる?」

「ワシらはこの島しか知りません、若自らが確かめてくださいませ」

「承知致した」


 そしてその日、私達は島長(しまおさ)の歓迎で宴会に招かれた。

 魚や肉、その中で私はついにこの世界に転生して初めての、待望の食べ物に巡り合う事が出来た。


 白くきらめく日本人なら誰もが食べたくなるそれが、そこにはあった。


 真っ白なおにぎり。

 それは塩だけで味をつけた物で、他の目立つ宴の食べ物の中にひっそりと佇んでいる。


 私はおもむろに、そこにあるおにぎりを手当たり次第に食べた。

 美味い、美味い。

 やはり私の魂は日本人なんだな。


「おや、お客人。そんなものよりももっと良い物がありますのに、遠慮召されるな」

「いいえ、ボクはこれが食べたいんです」


 私はおかわりに作ってもらったおにぎりをほおばり、異世界で思う存分日本の味を堪能した。


 ミクニには米がある。

 それは私の期待を大きくさせた。

 米があるなら、今度こそカツ丼を食べる事が出来る!!


 私はミクニ=カツ丼という気持ちが、しばらく頭から離れなくなった。

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