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207 カイリ・メルビルという男

◆◆◆


 オレは『カイリ・メルビル』

 海の男、鯨のエイハブと呼ばれた『エイハブ・メルビル』の息子だ。

 だが、オレのオヤジは本当の親ではなかった。

 オレもそれは知っていた。

 

 オレがまだ赤ん坊の海辺で拾われた時、唯一持っていたのが∞の形のリングだった。

 それがまさか、大商人といわれたポート・ディスタンスの物だったとは。


「オヤジィ……」


 オレの育てのオヤジ、エイハブは白い怪物と戦い相打ちになった。

 その時、オレは見習い船乗りみたいなモノで、白い怪物には手も足も出なかった。

 オレの持つ豪槍ポチョムキンはオヤジの形見だ。


 エイハブのオヤジには色々と教えてもらった。

 海の男として生きる事、オヤジは時に怖く、時に優しかった。


 だが、オレの本当のオヤジは、今目の前にいるこのポートだった。

 隣にいるのはオレのオフクロなんだろう。

 どうやらオレは、獣人族の息子らしい。

 確かにオレの耳は人とは少し違っていて尻尾があったが、オヤジと手下達はまったく気にしていなかった。


「お頭……」

「テメーら、しんみりした顔するんじゃねーよ、船にあるありったけの花を持って来てくれ!」


 オレの手下達は、船にあった花を持って来てくれた。

 それでも足りないと思った手下が、紙や布で器用に花を作ってくれた。

 船大工は船の補修用の資材で、二人が一緒に入れる棺を作ってくれた。


「オヤジ、オフクロ、陸に埋めてやるのはできねーけど、せめて海に抱かれて眠ってくれ」


 オレは手下が作ってくれた棺に二人を棺に入れてやると、その棺を一人で抱えて海に沈めてやった


 そしてオレはずっと海を眺め続けた。

 今振り返ると、手下にみっともない顔を見せてしまう事になるからだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 これはオレがユカ達に話した赤い悪魔の話だった。

 だが、オレがオヤジの息子だという事は伝えなかった。


 それを言ってしまうと、マイルがオレの事を気にしてしまう。

 オレはマイルに憎まれ口を叩かれているくらいがちょうどいい。

 まあこれが妹を見守る兄ってとこなのかもなー……。


◆◇◆


 赤い悪魔! そいつは何匹もいる海竜のモンスターに違いない!


「カイリさん。話はよく分かりました、ありがとうございます」

「ユカ、あの赤い悪魔に出くわしたらオレに言え。オレのスキルならアイツから逃げる事も出来る。あんなヤツに勝てるなんてー神くらいのもんだー!」


 あれだけ海に強い大海賊のカイリですら勝てない赤い怪物、私達はそれに出くわさない事を祈るしかない。


「カイリ……悪かったねぇ。アンタが父さまと母さまを見取ってくれたんだねぇ」

「なーに、気にすんな。オレはその分きちんと報酬をもらっただけだー」


 カイリはそう言うと∞の形のリングをマイルさんに見せていた。


「これは……父さまのリング。父さまに昔これと同じ物を、もう一つ持っていたと聞いた事が」

「それで、それはどこにあるってんだー?」

「あーしが生まれる前に船を海賊に襲われた時、生き別れたお兄さまがいたと聞きます。父さまはお兄さまを船に乗せて逃がしたと」

「そうか……生きていると、良いなー」


 私はこの二人の会話の不自然さに、何かがあると感じた。

 だが今はそれを言う必要は無さそうだ。

 時が来ればわかるだろう、間違いなくこの二人は兄妹だ。


 それよりも早くミクニに行かなくては。

 大魔女エントラが言うに、魔将軍マデンはミクニの国を乗っ取ろうとしている。


 リョウカイさんもそれが気になっているのだろう。

 冷静に刀の手入れをしているようだが、心ここにあらずといった感じだ。


「お頭ー! きききき霧がー!」

「何だってー!? まさか赤い霧か!」


 なんと、辺りを見渡すと知らないうちに、赤い霧が船の全体を覆いこんでいた。

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