205 伝説の赤い悪魔
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「あれは……オレがこの辺りの海域を航海中の時の話だったー……オレは、そこであの忌々しい赤い悪魔に出会ってしまったんだ」
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オレはリョウカイに見送られ、ミクニからグランド帝国に向かう途中だった。
「野郎どもー、この辺りには怪物がいるってー話だ、気を抜くんじゃねーぞ!」
「へっ、怪物程度、この海の男にかかれば敵じゃあないぜ!」
「そうだそうだ、おれたちゃ泣く子も黙るカイリ海賊団だ!」
頼もしい仲間達だ、コイツらがいるからオレは安心して船を任せる事が出来る。
オレ達にとって海は、命であり、庭であり、家であり、最後の死に場所だ。
だが、その時の海は間違いなく、俺達の敵そのものだった。
「お頭! 前方に深い霧が、霧が赤いです!!」
「バカを言え、こんな海で青い霧ならまだしも赤い霧なんて……」
「何だアレはー!!」
オレ達は赤い霧が辺り一面に立ち込めているのを見てしまった。
「野郎どもー、取り舵いっぱいだー!! 向きを変えてここからさっさとずらかるぞー!」
だが、知らない間にオレ達のアトランティス号は真っ赤な霧に周り全てを囲まれていた!
「お頭、バケモノがいます! 首の大きなバケモノです!!」
「何だってー!!? 首の大きなバケモノ!?」
ディスタンス商会から昔買った双眼鏡を覗いたオレの目の前に見えたのは、赤い霧の中に浮かぶ長い首の怪物だった。
「マジかよ……あれが赤い怪物……」
「お頭、アレを知ってるんですか!?」
「メルビルのオヤジから聞いた事はある。海には決して出会ってはいけない怪物が二つ存在する、それは白い悪魔と赤い悪魔だとなー」
「それって物凄くヤバくないっすか!」
内心オレはビビっていた。
大抵の事には物怖じをしないオレが感じた恐怖、それはあの赤い悪魔だった。
赤い悪魔は首をもたげている。
だが、赤い悪魔は一体だけではなかった!!
「お頭、船が狙われています!」
「なんだってー!」
赤い悪魔は船の正面だけでなく、側面にもその姿を現した。
コイツらは双子なのか!?
長い首がしなりながらマストを巻き込み、へし折った。
「みんな、落下に気をつけろー!!」
オレは豪槍ポチョムキンでマストに巻き付いた赤い悪魔の首を断ち切った。
「でりゃあああーーー!!」
確かな手ごたえ、オレは赤い悪魔の首を海に叩き切った。
だが悪夢は続いた。
「お頭ぁー! 後ろにも赤い悪魔が!」
赤い悪魔は長い首を海から出し、船の側面を頭部で叩いてきた!
船に凄まじい衝撃が走った。
「てめーら、魔法砲弾をぶっ放せ―!!」
アトランティス号の側部の四門の魔法砲弾が火を噴いた。
だが、それでも赤い悪魔の首は怯むだけで吹き飛びはしなかった。
そして、赤い悪魔の首はさらに増え、6匹もの頭部がオレ達の船を取り囲んでいた。
「くそっ! 逃げるしかねーか、てめーら、何かを掴んでいろ、絶対に手を離すなー!」
オレはこのどう考えても逃げられない赤い悪魔から逃げる為、潮流自在のスキルを最大で使った。
「荒れ狂う波よ、出ろー!!」
これは賭けだった、赤い怪物に船を潰されるか、オレのスキルで船が壊れそうなほどの荒波を一方方向に出す事であの悪魔から逃げられるか。
オレの賭けは勝った、
オレは大波を使って赤い悪魔から逃げる事が出来た。
◇
「ふー、野郎ども、全員無事かー!?」
「はい、お頭。全員生きてます!!」
「まー、テメ―らは殺しても死なないだろうなー」
どうにか赤い悪魔から逃げたオレ達だった。
だが、その後また別の事が俺たちを待っていた。
「お頭! 前方に船体がパラバラになった船の残骸がありますぜ!」
「何だってー!? 船だとー」
オレはそこで、あの大金持ちの商人と獣人の奥さんの二人に出会った。