204 ミクニへの航海
「よーし!野郎ども、出航だー!!」
「アイアイサー!!」
私達はミクニの国を目指して船を出航させた。
ミクニはイメージ的には戦国時代か室町時代の日本のような国だ。
転生前に日本人だった私としては気になる国ではある。
「ねぇ、ミクニってどんなとこぉ?」
「マイル殿、ミクニは吾輩の故郷、美しい自然に恵まれた緑多き島国ですぞ」
やはりミクニは私のイメージ通りの国のようだ。
和風な国、私もかつて”ドラゴンズ・スター”や”ラスティング・サーガ”ではイーストセイバーやサムライマスターといったキャラをゲーム中に出した事がある。
海外マーケティングを考えると、オリエントなイメージの戦士や服装は間違いなくニーズがあるのだ。
その為、マップ構成やシナリオ作成の取材の為に、私は取材旅行として古い城や史跡を調べた。
映画のセットや実際の建造物などを基にしてマップチップやシナリオを作る。
そうやって和風な国、和風なイメージのキャラクターを作った。
「よー、マイルちゃん、ミクニはいいとこだぜー。メシは美味いし酒も美味い、ねーちゃんも綺麗で最高だったぜー!」
「誰もアンタには聞いていませんっ!!」
マイルさんが声を荒げていた。
なんだかカイリとは、馬が合わないのかもしれない。
◆◆◆
あーしは何故かイライラしていた。
あのカイリってのを見てるとなんだか放っておけない気がするのよね。
他人のはずなのに、なぜかだらしないお兄さんを見ているような気がした。
このパーティーにはいい男がいるといえばいる。
ユカは見た目かわいらしいし、フロアは変な髪形だけど顔は悪くない。
まああのホーム君はとても可愛くて好みなんだけど、あの子に手を出すと狂暴な子猫ちゃんに魔法を食らいそうなのでパス。
リョウカイは男らしいカッコよさがある、でも何故かあのカイリだけはどうしても腑に落ちないのよね。
アイツは他人の為に泣けるような良い性格で見た目も悪くないのに……。
◆◇◆
「ユカ、どうしたんだー?」
「い、いやね。ミクニって行ったことないから、どんな場所なのかなって思ってたんです」
「ミクニはきれいなねーちゃんが」
ガスッ!
マイルさんがカイリさんの頭を後ろからそろばんで叩いた。
「いってーなー!! てめーなにすんだよー!!」
「まだ純粋な子供を悪い道に誘うアンタが悪いんでしょぉ!」
……まさか、この中身が本来アンタたちよりも年上の、中年クリエイターだとはとても言えない。
「まあまあ二人とも落ち着いてください」
「なんだとー!」
「アンタこそやる気なのぉ!!」
ダメだ、この二人……でもなんだか、この二人性格とか似ているような気がする。
「まあまあ、お二方とも、矛を収められよ」
二人を止めてくれたのはリョウカイさんだった。
「ここはリョウカイに免じて許してやるよー」
「ふーん、そう」
船はそのまま西のほうに向かっていた。
船の横にはホセフィーナとハーマンの白鯨の親子が付き添って泳いでいる。
「そういえば……沈んだ船を助けたのはこの辺りだったんだよなー。あの時、この辺は大荒れでとんでもない怪物が出てきたんだわー」
「カイリさん、とんでもない怪物って?」
「おっかねえバケモノだったぜ……あのバケモノ、大きな船をぶっ壊しやがってな。オレはその壊れた船に乗っていた夫婦を助けてやったのよー」
それを聞いたマイルさんの顔色が大きく変わった。
「!!! カイリ、それっていつの話!?」
「かなり前の事さ、あれは品のいい金持ちと獣人の奥さんだったな」
「……間違いない。それ、お父様とお母様……カイリ、その話を詳しく聞かせてぇ!!」
マイルさんの顔が涙目になっていた。
「ああ、わかった。少し長くなるかもしれないけど、良いな」
「お願い……」
カイリは私達を集めて海の怪物の事を話し出した。
それは……途方もなく巨大な赤い怪物の話だった。