表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/944

203 おれたちの船出

「よがっだじゃでぇえがーーー!」

「いい年した大人が泣くなよぉ、みっともないなぁ……」

「ぞんなごどいっだっでよおぉぉおおー、ようやぐがあちゃんにあえだんだぜー」


 カイリはさっきから泣きっぱなしだ。

 それを眺めているマイルさんが苦笑いしつつも嬉しそうだった。


 私は良い仲間達に恵まれたのかもしれない。

 他人の為に共に笑い、他人の為に共に泣ける、そんな人達は素晴らしい。

 カイリもマイルさんもフロアさんもエリアも今ここにいないホームやルーム、そしてシートとシーツの二匹(ふたり)、全員が他者の為に笑い、そして泣ける良い仲間だ。


「吾輩……こういうのに弱いのですぞ。御母堂に巡り合えて、本当に良かった! 良かった!!」


 ここにも他者の為に泣ける人がいた。

 そういう私も目頭が熱くなっていた。


「お頭ー、これでようやく船が出せますね!」

「うるぜーぞ、でめぇら、空気読めごのやろー!」


 カイリの泣きはまだ当分続きそうだ、でも親子が再会できたってのはやはり良いものだ。


「ピイイイピイピイ」

「クルルルルゥゥゥウ」


 ホセフィーナとハーマンの親子が、嬉しそうにグルグルと連れなって泳いでいた。

 楽しそうなのは分かるがこちらに波が押し寄せている。


「ハーマン、嬉しいのは分かるけどよー、せめて波くらいは立てず大人しくしてくれー」


 カイリは大槍を突き立て、潮流自在(オーシャンマスター)のスキルで大波を静かに変えた。


「ククウウウウウウウー」

「ふんふん、そうか、そうなんだな」


 フロアさんが何かを聞き取ったようだ。


「みんな、どうやらこのホセフィーナはお礼を言いたいようだ、坊やに再び会わせてくれてありがとうございます。だとさ」

「そうなんだね、ホセフィーナもハーマンに会えて良かったね」

「クオオオン、オオオオオオオン」

「ハーマン、坊やに立派な名前を付けてくれてありがとうございます、このお礼は必ずさせていただきます。だとさ」


 ホセフィーナとハーマンは仲良さそうに横に並んで私達の船の前に止まっていた。


「さて、それじゃーミクニに向けて出発しますかー……と言いたいところなんだがー、準備が全くできていない!」


 海賊と船乗りたちが盛大にずっこけた。


「お頭―! くだらない冗談言ってたら、簀巻きにして海に叩き込みますよ!」

「冗談、冗談だってー、でもモービーディックとの闘いが今回のメインだったわけだろー、出てきたのが近海なので……そんなミクニまでの遠距離航海の準備するわけねーだろ」


 まあそれもそうである、そういうわけで私達は一度港に戻った。


「船の準備もしなくてはいけないがー、折れたマストも修理しないとなー」


 船大工たちがどうにかマストを直そうと足場を組みだした。


「足場はいりませんよ、僕に任せてください!」

「ユカさん、でも、どうやってマストの木と鉄を直すつもりなんだ?」

「船の両端の地面をなだらかな坂にチェンジ!」

「これは! 凄い能力だ」


 私がマップチェンジしたのは造船ドックの横の船を左右から囲んでいる突堤の部分だった。


「さあ、後はこの坂の所に大きな鉄板を用意できれば、橋げたになります」

「凄いぜ、これなら足場必要ないから、今日中にでもマスト修理が出来るぞ!」


 船大工達はやる気を見せて、折れたマストを一日で完全に修理してくれた。


 そして次の日。

 食料や航海の準備を進めた私達は、ミクニの国に向かい出発する事にした。


「よーし、野郎どもー! 海の男の力、見せてやれー!」

「「「「オーーー!!!」」」」


 海賊や船乗り達はやる気十分である。

 そして完全に準備の整ったアトランティス号は大きな帆を広げ、海原へと出港した。


「ピイイイイイイ!!」


 そんなアトランティス号に追従する白い大きな影と小さな影があった。

 ホセフィーナとハーマンの親子である。


「なんだ、おめーらも付き合ってくれるのか!」

「「ピイイイイーー!!」」


 親子はうなずくように同時に鳴いた


「よおおおーーーし! 野郎どもー! おれたちの船出だーーー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ