199 出現!白鯨(モービーディック)
私達はリョウカイ、カイリと共に港に向かった。
そこには白く塗られた立派な船が存在した。
「これが俺の自慢の船。アトランティス号だー!」
アトランティス号、カイリは自身の船をそう紹介した。
真っ白な巨体には大きなマストがあり、横には魔法で撃ち出す大砲も何門かあった。
「お頭! お待ちしておりました!!」
「おう、てめーら、待たせたなー。ついに海に出る時が来たぜー!」
「いよっしゃあー! 俺達の出番だ!」
カイリは本当に大海賊だった。
彼の部下は見るからに荒くれものといった風貌、だがその海賊や船乗りたちがカイリを慕ってついてきているのは間違いない。
「てめーら、ここにいるのが盗賊退治のユカ様御一行だ!」
「おお、この方たちが! 噂は聞き及んでいます!」
「すげー! 本物だぜ!!」
「聖女様がマジで美人だー!!」
私は何だか照れ臭かった。
エリアも褒められてなんだか少し顔を赤くしてはにかんでいた。
「この方々があのモービーディックをどうにかしてくれるってんでー、オレは船を出す! モービーディックが怖いってやつは素直に言って船を降りてもオレは怒らねー、命のいらない奴だけ残れー!」
だが、誰一人として船を降りようという海賊や船乗りはいなかった。
「てめーら全員命知らずの馬鹿野郎だー! だがオレはそんなてめーらが大好きだぜー!!」
「おうっ!! 俺たちゃ船乗り、海の男よ! 白鯨が怖くて船に乗れるかってんだ!!」
「待たせて悪かったなー、てめーら確実に生かしてやるためには準備が必要だったんだー」
カイリは部下思いの良い船長のようだ、彼は部下を使い捨ての道具にはしないだろう。
「カイリ殿、吾輩もお供いたしますぞ!」
「おう、リョウカイ、おめーも頼むぜー!」
「承知致しましたぞ!」
船乗りたちが準備を進めた、そして私達も全員船に乗りこんだ。
「みんな、今回の目的はモービーディックを倒す事じゃない、彼女を元に戻す事なんだ」
「ああ、ユカさん。俺もそのつもりだ」
「あーしもわかってるよぉ」
私達は、私、エリア、フロアさん、マイルさん、シートとシーツの二匹、大海賊カイリ、ミクニのサムライのリョウカイさん、そして海賊のスタッフ達を乗せ、アトランティス号で沖合に向かった。
「エリア、笛をお願い」
「うん……ユカ」
エリアはバレーナ村の村長さんに教えてもらった昔からの舟歌を笛で奏でた。
辺りに澄んだ音色が響き渡る。
そしてその笛を吹き終わった時、海に白い大きな影が出現した!
大きな影は大波を立ててきた、このままでは船が大きく揺れる。
「ここは俺に任せなー! 豪槍ポチョムキンの力見せてやるぜー!!」
カイリは大槍を海に向かって振るった。
「この荒れる潮の流れを止めろぉー!」
カイリのスキル、『潮流自在』が発動した!
先程の荒れ狂う海が嘘のように穏やかになった。
「これがオレのスキル、オレは水の流れを自在に操れるんさー!」
カイリは大槍を構えながらニヤリと笑った。
「テメ―を殺すつもりはねーがちょっとばっかりは痛い目を見てもらうぜー!!」
そして……海からモービーディックがその巨体を現した!
バトル開始だ!!
今は高レベルの騎士、ホームも魔法使いのルームもいない、だがその分は高レベルの海賊と侍がいるので戦力的には問題はないはずだ。
「いくぞ、モービーディックを大人しくさせるんだ!!」
「おうっ!」
私は遺跡の剣を構え、モービーデックのヒレ攻撃を弾き飛ばした。
凄い衝撃が船に響いたが誰も転落したものはいない。
「みんな、もし船から落ちたらあーしが拾ってあげるからねぇ!!」
マイルさんも武器を手に辺りをうかがっている。
シートとシーツの二匹はゾルマニウムクローを引き出した。
そして……私達とモービーディックとの総力戦が始まった。