196 砂糖四袋分の取引
エリアがどこに行ったのか? という指摘が感想にありましたのでエリアのセリフと居たシーンを追加しました。
ルームは大魔女エントラの修行を受ける為に城に残る事になった。
「ユカ様、私、必ず……必ず強くなって駆けつけますわ!」
「ルーム、頑張って! 帰ってくるのを待ってるからね」
ルームは半分涙目になりながらも笑顔で私の両手を握った。
大魔女エントラはそれをニコニコしながら見守っていた。
その様子を見ていたホームが思いつめた顔をしていた。
「エントラ……様、お願いです!」
ホームがエントラにひざまずいた。
「僕を、僕を強くしてください! エントラ様は父上に修行をしたと聞きました。僕もまだまだ未熟です、貴女様の元で修業をさせてください!!」
ホームもここに残るというのか、もしそうだとこれはかなりの戦力ダウンになる。
だからと彼の意志を却下してしまうとわだかまりが残る、それは今後の旅においては戦力ダウン以上のマイナスだ。
ここは大魔女エントラの判断に任せよう。
「ユカ、アンタがふもとの村から持ってきた砂糖の袋は四袋だったねェ」
「はい、そうです」
「そうねェ、四つ分、一つはモービーディックをどうにかする方法を教える、二つ目、南方の魔軍の群れから国境警備隊を守る、三つ目、ルームちゃんの修行をしてあげる」
エントラがこちらを流し見るような目つきでニヤリと笑った。
「で、四つ目がホーム君の修行、これで良いかねェ?」
伝説の流星の魔女、大魔女エントラが力を貸してくれる、これはハッキリ言って普通ではありえない程の事だ。
それを砂糖の袋四つで聞いてくれるなら安い物だとも考えられる。
「はい、二人とも修行をお願いします!」
大魔女エントラがニッコリ笑った。
「はい、砂糖四袋分のご注文、毎度ありがとうねェ」
軽い返事だったが彼女はホームとルームの二人を強くしてくれるのだろう、私は彼女を信じる事にした。
「ホーム、君も頑張ってね! 応援してるよっ」
「ユカ様、僕は必ず強くなって一時も早く駆けつけます!」
「待ってるよ、また会おう!」
「どうか……お気をつけて下さい」
大魔女エントラが杖を地面にコンコンとついていた。
「もう別れの挨拶はできたかねェ。もうさっそく今日から修行始めるからねェ」
「エントラ様! お願いします」
「今度の敵はクリスタルドラゴンより強いからねェ。覚悟するんだねェ」
「もう覚悟は出来ています! お願いしますっ」
ホームは魂の救済者を構えた。
そして大魔女エントラはホームとルームの二人を奥の部屋に行くように指示をした。
「ユカ、モービーディックを大人しくできるのは旧バレーナ村の村長の持っていた笛だからねェ」
「わかりました! ありがとうございます!」
「その後はミクニの国に行くと良いんだねェ、そこで新たな事が待ってるからねェ」
「新たな事?」
「行けば分かるからねェ、あ……そうそう、こちらも一つお願いがあったんだねェ」
大魔女エントラのお願い? ひょっとしてまた甘いモノを持ってこいと言うのだろうか?
「ミクニには黒くて甘い豆で作ったお菓子があるらしいねェ。それを持って来てくれないかねェ?」
黒くて甘い豆? ひょっとしてあんこがこの世界にもあるというのか?
「分かりました、持ってこれるように頑張ります」
「期待してるからねェー」
私はその後大魔女エントラに許可をもらい、城の空き部屋にワープ床をつくらせてもらった。
これが使えれば一瞬で冒険者ギルドにも自由都市にも戻れる。
「ユカ……アンタのそのスキル……いや、今度会った時に話すかねェ」
大魔女エントラは私のスキルの事を詳しく知っているようだ。
今度戻ってきた時に教えてもらおう。
「みんな、自由都市に戻るよ!」
私の呼びかけにエリア、マイルさん、フロアさんと、シートとシーツの二匹もうなずいた。
そして私達はホーム、ルームの二人と別れ、自由都市に戻る事にした。
早くカイリにバレーナ村の村長の笛の事を伝えなくては!