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192 大魔女の本気

◆◇◆


 大魔女エントラは父さん達を後退させた。

 だが後ろには落ちた橋だけでまさに背水の陣だ。

 今は彼女を信じる以外に父さんたちを助ける方法は無い。


「アンタの父親、中々の戦士だねェ、流石はバシラの子孫というべきかねェ」


 私は大魔女エントラの言っている事がよく分からなかった、彼女は私の先祖とも縁があるのか?


「さて、では久々に本気を出すとしようかねェ!」


 ニコニコと目を細めて笑っていた大魔女エントラが目を大きく見開いた。

 その目はあまりにも鋭く、全てを射抜くような目だ。


「この術は(わらわ)の身体にも負担をかけるんで、あまり長時間は使いたくないのよねェ。本気を出すのは……あのヘックスとの大喧嘩以来だねェ」


 大魔女エントラの周りの空気の色が次々に変わった。

 彼女は空気中のエネルギーを集めているようだ。

 無詠唱で魔獣カトブレパスを一瞬で倒す程の彼女ですら負担をかける魔法。

 それは一体どれ程のものなのか!?


「まずは、アンタの父親達を守ってあげないとねェ、これのとばっちりを受けたら確実に死ぬどころか欠片すら残らないよ!」


 流石にそれはやめてほしい、父さんや兄さんが消し炭になるのを映像で見るなんて趣味は私にはない。


「まずは……アブソリュートレインボゥフィールド!」


 父さんたちの周りに虹色の光の膜が七層作られた。


「これは物理、魔法、精神、呪い、属性、次元、空間、全ての攻撃から身を守る絶対障壁の魔法だからねェ。この中にいる限りは絶対に攻撃は通用しないからねェ!」


 ケタ違いだ、大魔女エントラはプロテクトドームやバリアフィールドでも使い手は限られるのにそれを完全に上回る究極のバリアを作った。


「では……次は攻撃だねェ! チリ一つ残さないからねェ」


 エントラの究極魔法が杖から発動した、それは天空高くに幾層もの光となって山のはるか上に伸びていった。


「絶対究極魔法……メテオ・フォール!!」


 !!!! 最悪の名前だ! この名前はエンジニアやクリエイターなら絶対に聞きなくない名前の魔法が発動した。

 大魔女エントラは天空高くエネルギーを飛ばし、重力を操って隕石群を落とそうというのだ。


「す……凄すぎますわ……(わたくし)、生きててこんな魔法を間近に見られるとは思っていませんでした……わ」


 大魔女エントラの呼んだ隕石群は最初小さい流星が降り注ぎ、ゴブリンやスケルトン、コボルトにオークリーダーといった数千の先発隊を一瞬で消し炭にした。


 そして次の隕石群はさらに大きくなり、降り注いだ火の玉はオーガー、ケンタウロスナイト、マンティコア、食屍鬼(グール)、アイアンゴーレムといった数百のB級モンスターすら灰燼にした。


 そしてさらに巨大な隕石は数10メートルクラスになり、レッサーデーモン、ワイバーン、サイクロプス、ヘカトンケイル、オークジェネラル、リッチといった数十のA級モンスターすら葬った。


 トドメに落ちてきたのは数100メートルに値する巨大隕石、これはドラゴン、ギガンテス、グレートデーモン、ドラゴンゾンビ、デスナイト、ロストレックスといったボスクラスのS級モンスターを全て消し去り、魔軍のいた大地は全てが焦土と化した。


 その場に残っている生き物は、エントラの防護魔法で守られた帝国守備隊だけだった。


「はぁ……ハァ……流石にこの魔法は久々に使うと体にキツイねェ……」


 そう言うと大魔女エントラは椅子に再び座り、ワインを一気飲みした。

 これが大魔女エントラの本気、誰かが言っていた本気を出せば一国を一瞬で滅ぼせるというのは誇張でも何でもなかった。


「エントラ様、ありがとうございます!」

「なあに、あれくらいなら大したことはないからねェ。でもアレは時間稼ぎだからねェ。しばらくは大丈夫だけど、魔将軍が出てきたら少し厳しいかもねェ」

「魔将軍、一体それは?」

「教えてもいいけど、その前に(わらわ)の話を聞いてほしいねェ」


 魔将軍、一体何者なのだ?

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