189 同時に砕け!
私達の傷はエリアのレザレクションで完治した、これで一旦戦闘は仕切り直しだ。
「レザレクション、まさか神の能力の持ち主をこの時代で見る事になるとはねェ。それに、あの魔法使い……よく見るとテラスそっくりだねェ」
大魔女エントラはワインを飲み終わり、二本目のワインを開けながらケーキを食べ始めた。
「これでどうだぁ!」
ホームの魂の救済者が大水晶を切り裂いた。
大水晶は粉々に砕けた。
「はぁ、はぁ、今度こそ」
しかし、砕かれた大水晶は再び元の姿に戻っていた。
「一体どうなっているんだ!?」
同じような現象は別の大水晶を攻撃していたフロアやマイル、シートとシーツも体験していた。
「この鞭と、マイルの武器、それに二匹の爪で倒してるのに……砕いても砕いても元に戻りやがる!!」
大魔女エントラは指に着いた砂糖を舐めながらつぶやいた。
「ダメだねェ、そのクリスタルは全部同時に破壊しないといつまでも再生するからねェ」
このままではジリ貧である、クリスタルドラゴンは水晶の粒の群れから再びドラゴンの姿に戻っていた。
今の所、中央の大水晶とクリスタルドラゴンを私が、右の大水晶をホームとルームが、左の大水晶をマイルさん達が砕こうとしている。
だが、何度砕いても大水晶は復活し、クリスタルドラゴンも砕かれては復活を繰り返している。
この敵は本当に不死身なのか!?
だが、今回は空を飛べる相手であり、底無し沼に落とす倒し方は出来ない。
それにあの大魔女エントラが作った最強の魔法生物がそんな倒し方で倒せるわけがない。
そうなると、考えられる事は一つだけだ。
復活させないうちに同時に砕く!
だが、全員のタイミングを合わせるのは至難の業だ。
ドラゴンの咆哮やクリスタルの共鳴、戦う音、これらの音のせいで指示を全員に伝えるのもほぼ不可能と言える。
考えるんだ、同時に敵を倒せる方法……全員が同じタイミングで攻撃できれば、これだ!
「みんな! ボクはあいつを倒す方法を思いついた!」
「ユカ様! 本当ですか」
「ああ。みんな、武器を構えて水晶にヒビを入れてくれ、砕かなくていい」
「わかった!」
「了解だ!」
そして再び私達は大水晶を攻撃した。
私の指示通り全員の攻撃で全部の大水晶にヒビが入り、少しずつ砕けそうになった。
「みんなの足元の地面の高さを五メートル程高くチェンジ!!」
「!!?? あの坊や達、何をするつもりかねェ?」
私達全員の立っている地面が三つの大水晶を見下ろす形に変わった。
「そしてこの地面を元の高さにチェンジ!!」
この再度のマップチェンジで全員が自由落下になった形でそれぞれの武器を構えた。
そして、私達全員が同じタイミングで大水晶を打ち砕いた!
「ギャアアアオオオオォォォォォォオンン!!」
大水晶は粉々に砕け、クリスタルドラゴンも光を放ちながら粉みじんに砕け散った。
「やった!!! 今度こそ倒した!」
「やりましたわ!」
「ふー、死ぬかと思ったぜ」
私達は全員がクリスタルドラゴンを倒せた事で安堵感を感じていた。
「やるじゃないねェ。面白いモノが見れたわ」
大魔女エントラは城の最上階から飛び下りると、私達の前に音も無く着地した。
「よく来たわねェ、歓迎するよ。さあ、城の中に入ってくれるかねェ」
彼女はニッコリ笑って私達を見ていた。
「大魔女エントラ様、ボクはユカ・カーサと申します、エントラ様にお願いがあってまいりました」
私が挨拶をした後、目をシイタケの様に光らせたルームが嬉しそうに挨拶をしていた。
「世界一の大魔女エントラ様! お初にお目にかかります。私は『ゴーティ・フォッシーナ・レジデンス』伯爵の娘、『ルーム、フォッシーナ・レジデンス』と申します」
「おや、アンタの魔法って、ペントハウス家の者だと思ってたけど、違ったかねェ?」
「! ペントハウス……それはお母様の家系ですわ!」
え!? それって私の母親の旧姓と同じなんだが!?