188 再戦! クリスタルドラゴン
やはりクリスタルドラゴンは大魔女エントラが召喚した物だった。
「頑張るんだよー、本気出さないと死んじゃうからねェ」
彼女はかなり楽観的に酒を飲みながら、城の最上階から私達を見ている。
かなりふざけた相手だが、世界最強の魔女と言うのも間違ってはいなそうだ。
「みんな、一気に倒すぞ!」
「了解です!」
シートとシーツの二匹も荷物を置いて身軽になり、新装したゾルマニウムクローをかかとの部分を叩いて引き出した。
もう二匹とも立派な姿だ、レベルは30以上あると言えよう。
だが、クリスタルドラゴンのレベルは間違いなく50以上、これは苦戦必須である。
コイツを倒すのに長期戦は不利だ、短期決戦で一気に片付けなくては。
「ぐあっ!」
「キャッ!」
ホームとルームの二人が弾き飛ばされた、だがクリスタルドラゴンはまだ私達に攻撃をしてきていない。
「あ、そうだ。言い忘れたけど、今回は本気を出すからねェ。敵はその子だけじゃないから」
「何だって!?」
大魔女エントラは本気である。
今回この結界内では私達に攻撃を仕掛けてくる敵が増えていた。
前回はクリスタルドラゴンだけだったが、今回は結界維持の大水晶まで私達に攻撃をしてくるのだ。
「くそ……実質敵は四体いるって事か!」
「これはちょっとやり方考えないとねぇ……このままじゃジリ貧だよぉ」
前回の戦いでクリスタルドラゴンの行動パターンは読めたが、今回はそれにさらに大水晶三つまで追加だ。
これはきっちりと倒さないと。
私は遺跡の剣を構え、目の前の大水晶をぶった切った。
手ごたえはあった、大水晶は音を立てて砕け散った。
「やった!」
「へえ、やるじゃないねェ。でも、ゴーティ坊やもそこまではすぐできたんだねェ。本番はこれからだよ」
「!?」
私が砕いたはずの大水晶は再びその場に現れた。
同じようにホームも魂の救済者で大水晶にヒビを入れ、砕く寸前だった。
「ガアアオオオオオオオンン!!」
その時、クリスタルドラゴンがブレスを吐いてきた。
「私の力で出来るかわからないですが、エナジーバリア!!」
ルームはエナジーバリアの魔法を使った、これはプロテクトドームの上位魔法でカトブレパスから子供だったゴーティ伯爵を守った魔法だ。
強固な光の膜が私達を包み込んだ事で、クリスタルドラゴンのブレスは無効化された。
「やった! 成功ですわ!!」
「よかった……」
ルームと手を繋いでいたエリアが微笑んだ。
どうやらルームがこの強力魔法を使えたのは、エリアが魔力を供給したからのようだ。
「とにかくこのドラゴンの動きを止めないとぉ、茨の呪縛!」
マイルさんが高山植物の蔓を伸ばし、クリスタルドラゴンの全身を蔓で縛った。
「レジデンス流剣技、縦横斬!」
ホームの剣技はかなりレベルアップしている。
魂の救済者はクリスタルドラゴンの全身を十文字に切り裂いた。
そして、クリスタルドラゴンが音を立てて砕け散った。
「ユカ様! やりました!!」
だが大魔女エントラは笑いながらこの光景を見ている。
「やるねェ。でもそれじゃまだ勝ったとはいえないのよねェ」
「!!?」
砕け散ったクリスタルドラゴンの破片は空中の一か所に固まり、強力な石つぶての弾丸の様になってルームのエナジーバリアに襲いかかった。
「あ、そうそう。エナジーバリアは魔法耐性には強いけど物理には弱いからねェ」
「何ですってぇ!?」
ルームのエナジーバリアは水晶の粒の猛攻を喰らい、砕け散った。
「アオオーン!!」
「キャオーン!」
エリアとルームを水晶の粒の猛攻から守ったのはシートとシーツの二匹だった。
しかし、二匹とも全身にダメージを受けてしまった。
「聖なる力よ……我が目前の者達を癒したまえ、レザレクション!」
エリアのレザレクションのおかげで全員の傷は癒えた。
「へえェ、やるねェ。レザレクションの使い手を見たのは長い間生きてて久々だよ」
大魔女エントラはエリアのスキルに興味津々だった。