184 クリスタルドラゴン来襲!
◆◇◆
私達はゴーティ伯爵の城を出て北の山岳地帯を目指した。
その途中にあるふもとの村に寄って登山の準備を進める事も必要だ。
どうやら大魔女エントラはその山岳地帯の城にいるらしい。
しかし何故ゴーティ伯爵は、誰も知らない魔女の事を知っていたのだろうか?
「ユカ様、もうすぐ村に着きますよ」
「そうだね、村に着いたら代官さんに会って話をしよう」
私達はふもとの村に到着した。
村から北の山岳地帯が見える、しかし山の上の方は雲に隠れて全く見えなかった。
「これはこれは、ホーム様、ルーム様とその御一行様、ようこそおいで下さいました。わたしはこの村の代官、グラムと申します」
代官は私達を歓迎してくれた。
そして甘いスープをご馳走してくれた。
「いかがですか? この村の名物、甘い大根のスープです。これは大根そのものから甘い汁が出ているので他には何も入れておりません」
「甘い……でも美味しい!」
私以外のみんなもこのスープは気に入っていたようだ。
少し肌寒いくらいにこの暖かい甘い味はホッとできた。
「この村ではこの大根を使った砂糖が取れましてな、その砂糖を目当てにたまに岩山の魔女様が降りて来る事もあるんですわ」
どうやら魔女は甘い物が好きなようだ。
だからと向こうから来るのを待っていては時間がかかりすぎる。
「グラムさん、ゴーティ伯爵から手紙って届いていませんか?」
「ああ、来ておりますよ、皆さんの登山用の道具は一式そろえております」
「ありがとうございます!」
「しかし懐かしいですな、わたしは昔伯爵様と一緒にモンスター退治をしたもんですわ」
グラムさんは昔話をしてくれた。
その中で聞いた話はとても興味のある話で、伯爵様とグラムさんは他の子供達と一緒に森の奥に入り、襲われた魔獣カトブレパスから大魔女エントラ様に助けられたという話だった。
「凄いですわ! グラビティーフィールドにボルガニックフレアにエナジードレイン! そんな究極魔法が本当に存在したなんて!」
「父上からはそんな話聞いた事ありませんでした、父上にもそんな頃があったんですね」
まあこの話を聞いたら家宝の剣を折っても怒られないわけだ、本人が昔勝手に持ち出した過去があるわけだから。
「魔獣カトブレパス!? まさか本当に存在したとは……モッサールの伝説だけの存在だと思っていた」
みんながみんな昔話に対する反応が違う、そんな中でマイルさんはクスクスと笑っていた。
「なんだぁ、ゴーティ兄ちゃんも悪ガキだったんじゃないのぉ」
みんなは昔話を楽しみながら甘いスープをおかわりして盛り上がってた。
だが、そんな空気を一変させる大事件が起きた!
「グラム様―! 大変だーっ!!」
「何用ですか? 今は大事なお客様の対応中ですよ」
「そそそそそそれが、、、ドドドドドラゴゴゴンンががっ!!!」
「ドラゴンですって!? この村にそんな物が?」
ドラゴンが現れたと聞いて私達は急いで外に飛び出した。
すると上空には水晶で出来たような透き通る真っ白な巨大なドラゴンが飛んでいた。
「まさか……本当にドラゴンだ!!」
「村人は全員家に避難するんだ!!」
そして私達は戦闘に備え、ドラゴンの行動を見ていた。
「グオオオオオオオオオン!!」
上空から水晶のドラゴンが村の広場に舞い降りた。
そしてドラゴンは高く吠えた。
ドラゴンが高く吠えると、周りには三つの巨大な水晶が出現し、私達はドラゴンのいる結界の内側に閉じ込められた。
「ユカ様! 私達閉じ込められてしまいましたわ」
「そうだね、どうやらアイツを倒さないとここから出られないようだ」
水晶で出来たドラゴン、クリスタルドラゴンというべきか。
クリスタルドラゴンは私達を睨みつけ、凄まじい雄たけびと共に空気を震わせるような激しいブレスを吐いてきた。