17 地道なレベルアップこそ近道なり!
――忘れられた遺跡、自宅から徒歩0分――
こんなふざけたありえない設定をゲームで使ったら『馬鹿野郎!金返せ!!』とか『製作者出てこい!』とか『RPG〇クールでの素人MAD動画かよ!?』とかツッコミの雨あられが来そうなものである。
しかし、私にはそれをできる能力があるのだ。
あるなら使わなければ損だろう。
……しかし、それよりも考えるべき事があるのに、私は気が付いてしまった。
“このワープ床で家に帰れるのだろうか??”
もし帰れなければ……家に二日かけて帰る事になる。
それよりも危険なのが留守の間に鍵を閉めているとはいえ私の部屋に誰かが入ってしまう事だ。
それでこの遺跡に飛ばされたりしたら……恐ろしい結果になる。
母さんならまだ元冒険者なのでどうにか家に帰れるだろうが、妹のルーフがこんな所に飛ばされたら確実に命はない。
そうなると私は一生家族に恨まれても仕方がないのだ。
そうならない為にも、このワープ床が家につながっている事を祈るしかない!
私は願うように床に足を踏み入れた。
ワープ床が一瞬光り、私は……無事自分の部屋に戻れた。
そして今後、短絡的な行動は控えようと心から反省したのだ。
「ユカ、ごはんよっ。早く来なさい。……来ないと魔法で鍵を開けるわよっっ!」
「わかった! わかったよ!! 母さん!」
間一髪である。
このワープ床の事はまだバレずに済んだ。
そして私は食事を済ませ、自分の部屋に戻るとマップメイクのスキルでワープ床を元の床にチェンジした。
MP 5/80
やはりこのmp消費量はかなりネックである。
私は遺跡探索の為に必要な事を考えた。
……まずは、遺跡には自宅から行ける、その際にはmpが75は必要だ。
そして遺跡から帰ってきたら証拠隠滅で部屋の床は元に戻さないといけない。
そこでまたmpは75必要。合計150はmpを使えないと遺跡探索ができない。
そして本来の床のチェンジはコンクリートや毒沼といった普通の床でmp10だという事で想定すると、mpは200は無いと遺跡探索ができないという事だ。
部屋に誰も入れない方法は、勉強をするという形で鍵を閉めて引き籠るのが一番確実かと考えた。
幸い、古代語の本をハンイバルさんから借りているのでそれは信ぴょう性のある話で鍵を閉めれるだろう。
問題は、レベルを上げる為にしばらく戦わないといけないってわけだ。
◇
「母さん、ボク冒険者ギルドで仕事してくるよ!」
「わかってるわよっ、部屋で変な事さえしてなければ、別に何やっても大丈夫よっ」
母さんは引退しているとはいえ、凄腕の魔法使いだ。
魔力やマナの動きで何があるのかわかっていて黙ってくれているのかもしれない。
……奥様は魔女だったのです。とでも言うべきか。
そして私は、隣町のギルドでしばらくの間レベルアップの為に仕事をする事に決めた。
「オーガースレイヤーのユカじゃねーか!」
「お前、凄腕のレンジャーなんだってな、どんな罠や地形でも使いこなし出来るんだろ」
「オレも話に乗るぜ、ハンイバルさんが認めた男だ、一人前になるまで育ててやるよ!」
村でそっぽを向いた子供と違い、大人の冒険者はオーガーを倒した私を凄腕のレンジャーと見ているのだ。
それならそのイメージでやらせてもらおうと考えた。
「わかりました、お願いします!」
B級とはいえ一人前の冒険者達である。
その中で私は見えない場所でマップメイクスキルで罠や地形を作りモンスターを退治した。
ゴブリンやオークリーダーくらいならもう問題なく倒せるようになっていた上、ハンイバルさんから借りている遺跡の剣はそこら辺のミスリルソードよりもよほど強く、オークリーダーの毛皮も容易に切り裂ける程の切れ味だったのだ。
『レベルが上がりました』
ステータスのアップをMPに全振りし、そして半月もすると私はレベル8になっていた。
MP 200/200
これで私は目標に達成した。
これで今度こそ遺跡探索をスタートできるのだ!




