表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/944

170 埠頭の侯爵夫人

 次の日の夕方、私達は埠頭の近くで様子を見る事にした。

 午後からの船の積み下ろしが終わり、船が国外を目指して出発する、これがこの自由都市の夕方の普段見られる光景らしい。

 だが、最後の船が出た途端、物々しい警備の連中が増えてきた。


「あの大型の荷馬車のマーク、あれはポディション商会のものだねぇ」

「マイルさん、わかるんですか?」

「ああ、あれはぁ間違いなくポディション商会のマークだよ」


 その荷馬車からは如何にも厳つい連中が降りてきた、どう見ても堅気でなさそうな風貌の連中ばかりだ。

 連中は如何にもといった感じで辺りを見回していた。


「どうやらアレは奴隷取引の用心棒といったところでしょうね」

「そうだね、今は様子見だね」


 その後ろから別の大型の荷馬車が何台も到着した。馬車は檻のように作られており、中には何十人といった奴隷が乗せられていた。

 奴隷はみんなボロボロの服装でやせ細っており、中には獣人もいた。

 荷馬車から降ろされた奴隷は手枷をつけられたまま鎖で繋がれて列に並ばされていた。


「……酷い」

「私許せませんわ!」

「ルーム、今はまだ落ち着いて……」


 ホームは冷静だったがその目には確実に燃え滾る怒りが映っていた。


日が落ちてあたりが暗くなった頃、埠頭には場違いな豪華な馬車が到着した。

馬車からは如何にもといった上流層の貴族の女が降りてきた。

その顔はゴーティ伯爵そっくりの女性、シャトー侯爵夫人だった。


「シャトー侯爵夫人、お待ちしておりました」

「誰か、この無能を処分おし」

「何故!? わたしが何をしたと言うのですか??」

「愚か者、ここでの私の名前はヴェッソー様と呼びなさいと言っておるだろうが、誰か、この愚か者を始末おし!」

「はっ!」


 男が剣で首を刎ね飛ばされた。

 男の首はコロコロと転がり、奴隷たちの所に転がった。


「ヒイイイイイイ!!」

「助けて、助けて―!!」


 泣き出した奴隷を屈強な髭面の男が鞭で打ち据えた。


「誰が泣いていいといった! お前らは奴隷なんだ、感情を捨てろ! ご主人様のいう事は絶対だ!!」


 男は笑いながら奴隷を叩いていた。

 だが、そんな男が今度は後ろから剣で刺し殺された。


「バカが、商品に無駄に傷をつける無能は死ね」


 ここでは命の重さは塩の袋よりも軽い。

 奴隷の価値はその程度だ、いや、コイツらにとっての人間の価値というべきか。


「ヴェッソー様、お見苦しい物をお見せ致して申し訳御座いません」

「フン、いつもの物は用意できておるのか?」

「ハイ、お眼鏡に適うかとは」


 奴隷の中から数人の男と子供が連れ出された。


「いかがでしょうか? 器量良しだけを選りすぐっておりますのでヴェッソー様のお気に入りになるかとは思われます」

「この間の奴隷、全然使えなかったわ。きちんと身体検査したの? すぐ壊れたので処分代として、バスラ伯爵に無駄に金を使う事になりましたわよ」

「ハイ、今度のは全員調教済みです、アレのサイズもきちんとお眼鏡に適うかと」

「フフフ、そうか。では顔を見せてもらおうか」


 シャトー侯爵夫人は、どうやらここではゴーティ伯爵の亡くなった妻、ヴェッソーの名前を使っているらしい。

 この事を知ったホームとルームがぶつけられない怒りをため込んで、普段見せない程厳しい顔をしていた。

 これ程心底怒っている二人を見たのは初めてだ。


「……」

「……」


 二人共、今はとても声をかけられる状態ではなさそうだ。


 そして黒塗りの窓のない国外の船が埠頭に到着した。

 船には城門を思わせるほど巨大な吊り式の扉があり、その扉が下に倒れてきて桟橋になった。


「みんな、ここで下手に戦ったら奴隷にされている人達に犠牲者が出る。一旦船に全員乗せるんだ」

「でもユカ、それだとぉ国外に逃げられたらもう何もできなくなるよ!」

「大丈夫、ボクを信じてくれ!」


 シャトー侯爵夫人に選ばれた以外の奴隷は、全員が船に乗せられる事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ