161 【第二章完結】 若き日の剣聖と死者の王
ついに第二章完結です!
思った以上に長くなりました。
今晩、第二章の登場人物紹介をアップします。
砕けた死者の指輪の傍にボロボロのメイド服だった物が落ちていた。
どうやらこれはヘクタールを取り込んだ核になった死者の指輪のバリアで守られ、ルームのイラプシオンコルムナの火炎から無事だったようだ。
「マーシャ……」
元メイド達は亡き親友の事を思い出していた。
エリアがそんな三人の一人に肩の上に手をのせてささやいた。
「大丈夫、彼女は天に還ったわ……。彼女はもう貴女達を怨んではいません」
それを聞いた三人は亡くなった彼女のメイド服だった物を握りしめ、いつまでも泣き続けた。
◇
「ここで良いかな?」
「ハイ。私達、またマーシャのお墓参りに来ます」
「これから、どうするの?」
「あたし達、冒険者ギルドでお世話になります。ここには辛い思い出が多すぎるので……」
彼女達は冒険者ギルドで働く事になった。
今度はワープ床を使わなくても安心してレジデンス領との行き来が出来る。
「さて、終わったね」
「そうですね、僕……領主代行として、したい事があるんです。協力してくれますか?」
ホームの顔に強い決意が感じられた。
「そうだね、その前にシートとシーツを迎えに行かないと!」
「そうだな! 早く行こう。きっと待ちくたびれてるぞ」
フロアさんが馬に語り掛けてくれたので、私達は思ったよりも早く北西の村にたどり着き、シートとシーツを迎える事が出来た。
そして人質だったレジデンス領の人達を連れ、私達はヘクタール領の宿舎の所に集まった。
「ホーム、領主代行としてやりたい事って何?」
「収穫祭ですよ! 領民の皆さんも全員で楽しめる収穫祭をしましょう!」
周りから大歓声が巻き起こった。
「そうだね、周りの村の人も誘って盛大にやろう!」
「……残念だが、我々は魔軍討伐の為先を急ぐのでここまでだな。ホーム殿、代行としての責務、お願いする!」
「ラガハース子爵、お気をつけて!! ご武運をお祈りしております!!」
「さらばだ、行くぞ! 帝国騎士団出陣!!」
領民達とヘクタールの元従者達は、盛大な拍手で騎士団の出陣を見送った。
「さて、これから忙しくなるぞ!!」
「そうですね!」
「私も腕が鳴りますわ!」
そして、数日後。フランベルジュ領では盛大な収穫祭が行われ、誰もが皆笑って新たな日々の生活を盛大に祝った。
その様子を空から鳥が目を光らせて映していた。
◇◇◇
ここは何処かにある城。
そこでは流星の魔女と人々に呼ばれる人物がこの光景を面白そうに眺めていた。
「なかなか面白いモノだったわねェ。まあ妾が手助けしてやったのを気付いたのはどれくらいいたかしらねェ……はっはっは」
彼女はワインを飲みながら収穫祭に盛り上がる人達を眺めていた。
「さあ。あの子達、今度はどんな面白い事をしてくれるのかねェ」
流星の魔女は一気にワインを飲み干し、またワインを魔法で作った従者に注がせていた。
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ここはフランベルジュの街、かつては旧ヘクタール領と呼ばれた場所だ。
「お兄さん、この町は初めてかい?」
旅の人物は町の観光案内人らしい人物に声を掛けられていた。
「はい、まあここが有名だと聞いて」
「おおそうだったか、もうすぐ始まるよ。チケットは銀貨2枚だよ」
この街は昔から芝居の演目で有名なのだ。
その芝居とは『若き日の剣聖と死者の王』かつてこの土地で本当にあった話である。
若き日の剣聖とは『剣聖・ホーム・レジデンス大公』の事であり、死者の王とは『ヘクタール男爵』の事である。
遥かなる昔、この地に救世主、聖女と共に現れた若き日の剣聖は、悪逆非道の領主ヘクタール男爵を倒す為に戦った。
だがヘクタール男爵は、死者の指輪で邪悪なモンスターになってしまった。
しかし伝説の救世主と聖女、若き日の剣聖と、その仲間達が、力を合わせて死者の王を倒すという話だ。
この演目を見る際に食べられているのが、人気料理の『ヘクタール』である。
芝居を見ながら片手で食べる事が出来るので、昔から大人気の料理であるが、その本当の由来を知る者は、今や誰一人として……いない。
第二章. 悪徳貴族ヘクタール編 完
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