159 核(コア)を砕け!
思い出せ、ゲームのボス戦。
“ドラゴンズ・スターⅢ”の大魔王は毎ターン回復能力を持っていた。
コイツを倒すのは回復するよりも一気に大ダメージを蓄積させて倒す方法だった。
だが、あの巨大骨人形相手に戦える私達の戦力は聖属性のホームの魂の救済者だけだ、無属性の遺跡の剣では再生を上回るダメージを与える事は出来ない。
“ドラゴンズ・スターⅣ”の月裏の渓谷に出てきたルナティックドラゴン、骨で出来た竜のコイツは再生能力持ちで通常攻撃に耐性があったが聖属性の剣と回復魔法で大ダメージを与えられた、この巨大骨人形にも効果がありそうな方法だ。
“ドラゴンズ・スターⅥ”の異界の破壊神、コイツは倒しても再生する。まさかの左腕が完全復活魔法を使う難敵だった。
だが、巨大骨人形は再生魔法で復活しているようでは無さそうなのでこの方法も没だ。
“クロノ・クロニクル”のラデス、コイツはラデス本体とラデスコアと呼ばれる核があり、ラデスを倒してもラデスコアがある限り何度でも復活するボスだった……これだ!
「エリア、ボクの傍に来てくれ!」
「ユカ……わかった」
「ホーム、コイツを倒す方法が見つかった、協力してくれ!」
「了解です!」
騎士団とマイルさん、フロアさんは領民に被害が出ない様に巨大骨人形を別の場所に引き付けてくれていた。
だがこのままではいずれ犠牲者が出てしまう、早くコイツを倒さないと!
「エリア、レザレクションはまだ使えるの?」
「うん、まだ……大丈夫」
エリアもレベルが上がっているのだろう。
盗賊の住処で戦った時よりもエリアの魔力は確実に上がっている。
「では頼むよ」
「うん……この地に満ちる聖なる力よ、我に力を。目の前の邪悪なる意志に操られた者達に安らぎを与えたまえ……レザレクション!」
エリアのレザレクションは巨大骨人形の足元で発動した。
エリアを中心に広がった白く温かい光は巨大骨人形のあばら骨の辺りの骨を浄化し、骨人形の中心には空洞が出来た。
私がその空洞をじっくりと眺めると、浄化された部分から再生を始める様子が見えた。
よく観察した事で私はその再生には特徴があるのが分かった。
あばら骨の中心、胸骨体の中心で黒く光る物が見えた。
あれは、ヘクタールの持っていた死者の指輪だ!
あの死者の指輪がこの巨大骨人形を構成している核だと私は確信した。
「エリア、ホーム、アイツを倒す方法が見つかった!」
「本当ですか!」
「ああ、エリア、ボクが君を守る。だからあのあばら骨の下に入り込んでレザレクションを使ってくれ」
「わかった……」
「ホーム、君はボクの言う場所に立っていてくれ、ワケは後で話す!」
「大丈夫です、僕はユカ様を信じてます!」
「二人共、いくよっ」
私達はこの巨大骨人形を倒す最後の作戦を開始した。
骨人形の攻撃をかいくぐりながら私はあばら骨の下に潜り込んだ。
「聖なる力よ、邪悪なる者を退ける力を我に与えたまえ、レザレクション!」
あばら骨がどんどん浄化される、そしてエリアはレザレクションの力を限界まで高めた。
骨人形がどんどん砕けていく、それでもエリアはレザレクションを使い続けた。
そして、砕けたあばら骨の胸骨体の中心部の下に死者の指輪が見えた!
「ホームの足元の地面の高さを骨人形の核の高さまでチェンジ!!」
私のマップチェンジでルームの足元の地面が盛り上がり、骨人形の胸の高さになった。
「これで、最後だ!」
ホームは魂の救済者を構え、死者の指輪を一刀で真っ二つにぶった斬った。
死者の指輪は音を立て、真っ二つに割れ、その邪悪な力は潰えた。
残った骨人形がどんどん崩れ落ちていく、エリアはそれでもレザレクションを使い続けた。
「エリア、ボクの魔力を使ってくれ!」
私はエリアと指を絡め、自分の魔力を彼女に託した。
そして私の魔力を受け取った事でエリアのレザレクションの効果は更に高まり、辺り一面に数キロ四方にわたり白い光が満ち溢れた。
骨人形だった骸骨は全てが光の粒になり、犠牲者の魂が空に昇って行った。
次々と天に上っていく魂、最後に見えたのはメイド姿の女の子の姿の様に見えた。