158 激闘! 屍肉ゴーレム
隕石によってボコボコになった地面がひび割れ、巨大な穴が周りにいた者全てを飲み込んだ。
その穴はヘクタールの屋敷から続いていた地下洞窟の大空洞の真上に通じていた。
ここは凄まじい臭いがする。
盗賊の住処にも死体置き場はあったがここに比べれば量はまだ半分以下だった。
ここにあるのは数十年、下手すれば数百年に渡る死体の山。
ヘクタールの屋敷のゴミ捨て場はここにつながっていたのだ。
「うっ……なんて臭いだ」
「わ……私、とても耐えれそうにありませんわ」
「酷いねぇ、これは」
まさに地獄ともいえるような場所だ、だが皮肉な事に腐肉がクッションになったので私達は落ちた先で大けがをしないで済んだ。
どうやら騎士団やヘクタールもここに落下したようだ。
◆
「……ここは……」
「やあァ、キミにはまだやってもらう事があるんだよォ」
「誰だ……」
薄闇色のフードの男がまた現れた。
奴は一体何を企んでいるのだろうか?
「ヘクタール、キミには生贄になってもらうよォ」
「生贄だと!? なんだそれは」
「さあねェ。でも足元の彼女はキミに会いたかったようだよォ」
ヘクタールはボロボロのメイド服のまとわりついた肉塊に絡みつかれていた。
「ユルサナイ……オマエダケハ……ユルサナイ」
「オマエモジゴクヘオチロ」
「ヨクモ……オレヲクッテクレタナ、オマエモクラッテヤル」
「やめろぉ……やめてくれぇえええ!」
ヘクタールは肉塊や骸骨に次々に覆いかぶさられ、その肉体の全てをバラバラに引き裂かれ次々に肉塊に食われた。
だが事態はそれだけでは済まず、腐肉と肉塊と骸骨は全てが一か所に集まり超巨大な塊になった。
そして塊からは腕と思しき物、足と思しき物が生え、その姿は骸骨と肉塊の合わさった超巨大なゴーレムの姿になった。
「「「「ニクイ……ニクイ、クルシイ、イタイ、ノロッテヤル。クラッテヤル」」」」
ゴーレムは何十人何百人もの呻き、怨嗟、呪いを言葉にし、私達に襲いかかってきた。
その場にあった数十年数百年分の死体が合わさり全てが一つの巨大なゴーレムになった、その巨大さはまるで怪獣映画に出てきそうな程だ。
私は遺跡の剣で屍肉ゴーレムを切り裂いた。
切り裂いた肉塊は崩れ落ち、そしてまた屍肉ゴーレムにくっついていた。
コイツは自己再生能力持ちなのか!!
とにかくここは臭いが凄まじい、こんな所ではみんなとても戦える状態ではない。
「この辺り一面の床の高さを地上までにチェンジ!!」
私は穴のサイズ一杯に床の高さを元の地上まで戻した。
「ユカ様、ありがとうございます!!」
「帝国騎士団、ありったけの魔法と火矢と魔道砲を用意し、眼前の巨大モンスターに一斉掃射せよ!!」
ラガハース騎士団長の命令で騎士団は地上に置いていたありったけの火炎系武器を屍肉ゴーレムにぶっ放した。
屍肉ゴーレムは怨念と魔力で作られているとはいえ魔法耐性は持っていない。
炎に包まれた個所から屍肉ゴーレムは焼け落ちていた。
だが焼け落ちる度に新しい腕や足を作り、その姿は最初の人間型というよりはカニや蜘蛛を思わせるような異形の姿になっていた。
「食らいなさい、私の最大魔法、イラプシオォォン・コルム―ナァー!」
ルームの最強魔法、イラプシオンコルムナの火柱が屍肉ゴーレムを包み込んだ。
炎はどんどん威力を増し、周りを囲んでいた炎は屍肉ゴーレムの肉を全て焼き尽くした。
そこに残ったのは超巨大な骨人形だった。
「ギ……ギギギ……ガァアアアア」
骨のきしむような音、空気を圧縮して吐き出すような音が骨人形から聞こえる。
「魔道砲、撃てー!!」
騎士団の魔法隊が魔道砲を発射した。
骨がどんどん砕ける、しかしその骨はまた骨人形にくっついていた。
ダメだ、コイツの再生能力はキリがない、だが、こういうモンスターには何処か必ず弱点があるはずなのだ。
私は再生を繰り返すモンスターの対処法を過去のゲーム作成から思い出そうとした。