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157 決戦! ヘクタール

 帝国騎士団は倒しても倒しても復活してくるゾンビと食屍鬼(グール)を相手に善戦を繰り広げた。


「いいか! 火を絶やすな、炎の壁で奴らから領民を守るんだ」


 炎の火薬庫の別名を持つ騎士団長ラガハース、彼の指示で騎士団はアンデッド達を炎の壁で囲む事で、周辺への被害を食い止めていた。

 その為にヘクタールの従者達も協力していた。

 そこにはもう敵も味方も無かった、生き延びる為にはゾンビに襲われてはいけないからだ。

 戦えない者達はバケツリレーで、燃える物を次々に騎士団に渡して火を絶やさないようにしていた。


 火の壁がある限りアンデッドはそれより先に進めない、だがそれは根本解決にならない。

 何故ならアンデッドは文字通り、倒しても倒しても何度でも肉塊や白骨になりながら迫ってくるのだ。


「団長! このままでは犠牲者が出てしまいます!」

「ヘクタールめ……あんな物を持っていたとは……!」


 騎士団がアンデッドを数時間にわたり食い止めてくれた。

 そこに私達は馬を走らせ、どうにか到着した。


「遅くなりました! 人質は全員無事です」

「ユカ殿! お待ちしておりましたぞ」


 ホームが魂の救済者(ソウルセイバー)を鞘から抜き、アンデッドの群れを一閃した。

 すると何度でも甦ってくるはずのアンデッドはホームの一撃で二度と起き上がってこなかった。


 そうか! コイツらは聖なる力に弱いのだ。


「みんな、ホームを守って彼中心に戦うんだ、あのモンスター達はホームの剣以外では倒せない」

「承知しました! 皆、ホーム様をお守りするんだ」


 騎士団たちは密集体型になりながらホームがアンデッドを斬る形で少しずつモンスターの数は減っていた。

 だが全部ホームに任せるのも彼の負担が大きすぎる、どうにかしなくては……。

 そんな私の袖をエリアが引っ張った。


「ユカ……私に任せて!」


 エリアが私に強い意志で語り掛けてきた。

 そうか、エリアのレザレクションならアンデッドを浄化できる!


「みんな、エリアを守ってくれ。魔法力のある者はエリアの傍に来てくれ!!」

「ユカ殿……わかった! 魔法騎士隊前へ!」


 魔法騎士隊がエリアを中心に直列繋ぎで手を繋いだ。

 私達はエリアを守る為に密集体型で彼女が精神を集中できるように戦った。


「凄い……皆さんの魔力が私に力を与えてくれます」


 エリアの魔力は最高潮を超え、限界オーバーフロー寸前まで高まった。


「聖なる力よ、我に力を、この場にいる邪悪なる者全ての闇の因果を解き放つ力を我に与えたまえ……レザレクション!!」

「「「!!!!」」」


 エリアのレザレクションは最高に高まった魔力で辺り一面に広がった。

 白い暖かな光は数キロメートル四方にまで広がり、邪悪な魔素を全て浄化した。

 それはまさに……神の力と言える程のものだった。


「GYAAAAAAAAA!」


 ゾンビや食屍鬼(グール)が次々と苦しみだし、その場に崩れ落ちた。

 そしてその屍は光の粒子になり、天高く昇って行った。


「ガアアアー苦シイー! 何ダ、コノ光ハ……!? オレの……体が」


 エリアのレザレクションはなんと、ヘクタールすらも元の人間に戻してしまった。

 彼女の本当の力は一体どれ程のものなのだ!?


「オ……オレは、血が……赤い、何故だ、何故オレの血が赤いのだー!?」


 エリアの浄化の力で人間に戻ったヘクタールは、自身の血が赤い事に動揺していた。


「カッツェーエ・ピノアルマセン・ヘクタール! 貴様を人身売買及び麻薬密売の容疑で逮捕する。ヘクタール領は改易の上、廃嫡、貴様は鉱山で一生奴隷として働くのだ!」


 ラガハース騎士団長を筆頭に騎士団が人間に戻ったヘクタールを取り囲んだ。

 死者の指輪に精神力と体力を奪われたヘクタールは、もう抗うだけの気力も体力も残ってはいなかった。


 これでようやく問題は解決か、と思った時、ヘクタールのいる辺りから地面が地割れを起こした。

 どうやら流星の魔女の魔法で、地面がボコボコになっていた所に重い鎧の騎士団が一斉に集まった事により地面が陥没してしまったらしい。


 ヘクタールと私達は陥没した巨大な穴に落下してしまった。

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